2008-04-01から1ヶ月間の記事一覧

「介護者であるより母でありたい」と言い続けていたAlison Thorpe

Ashleyに行われた成長抑制と子宮ならびに乳房芽の摘出が明らかになった去年の1月に 即座に英国で「ウチの子にもやって」と手を上げたAlison Thorpeは その後夏から秋にかけて実際に娘Katieの子宮摘出を求めて医師を説得し、 英メディアにも連日登場して自分…

「自閉症の息子ケア、もうこれ以上耐えられないと思った日」

去年イギリスで刊行された自閉症の少年と犬の交流のノンフィクション Friend Like Henry: The Remarkable True Story of an Autistic Boy and the Dog That Unlocked His Worldが ペーパーバックになったのを機に、 The guardianに、その一部抜粋が掲載され…

人造血液リスク知りながら臨床実験認めていたFDA

昨日明らかになった調査結果によると、FDAは 人造血液代替物には心臓発作の確立が3倍に跳ね上がり、 命を落とす確率も30%上がる大きなリスクがあることを 2000年には把握していながら公表せず、 その後も人造血液を使った臨床実験を承認し続けてきた…

「医者が介護の邪魔をする!」に思うこと

「医者が介護の邪魔をする!」(矢嶋嶺 講談社)というタイトルを見て「その通り!」と手を打つ一方で、 扇情的なタイトルの本はだいたい内容が薄いのが通り相場のようにも思えて、 あまり期待せずに読んでみたら、 書いてあることはタイトルのように威勢が…

小児の延命治療停止(日本)

国立生育医療センターで過去5年間に 間もなく心肺停止が予測された小児30人について 家族の同意をとった上で、人工呼吸器をはずすなど延命治療を停止。 その他にも50人で 投薬などの積極的な治療を差し控えた。 いずれも臨床的にみて死期が迫った段階で…

親にはしてやれないこと

重い障害のある子どもを持つと、 親は子どものためにできる限りのことをしてやろうと努めます。 親ならではこその細やかな配慮や繊細なケアをし、 不幸にも我が子が背負ってしまった障害の影響を なんとか最小限に食い止めてやろうと 親は必死の努力をするの…

Lasik反作用でFDAが調査へ

レーザーで角膜に手を加えて近視、遠視、乱視を回復させる、 タイガー・ウッズもやっているというLasik(レーシック)手術で ものが二重に見える、ぼやけて見える、ひどいドライ・アイになった……などの反作用が起こっており、 FDAが患者へのリスクの周知徹底…

Lancet誌とIHMEのコラボとは?

ワシントン大学の新しい研究機関IHMEがどういうものか、 とりあえず匂いくらいを嗅いでみたところで もう一度Lancet誌がIHMEとコラボするという話に戻って、 以下の文章を読んでみました。 The Lancet誌(2008;371:1139-1140)のコメント欄に掲載され…

世界の病気・障害「負担」数値化へ

「死亡率に障害も加えて医療データ見直す新基準DAILY」のエントリーで紹介した ワシントン大学の研究所IHMEで進んでいるプロジェクト Global Burden of Disease(GBD 病気の世界的負担)について。 たとえばGBDの目的はと言えば、 As a whole, the study sta…

去年5月16日のUWシンポ Webcast

去年5月、Ashleyの子宮摘出の違法性を病院が認めた翌週、 ワシントン大学がこの問題を巡ってシンポジウムを開き、 その模様がWebcastで世界中にリアルタイムで公開されました。 その後、シンポのWebcastはシアトル子ども病院のHPにアップされています。 リア…

医療職の無知が障害者を殺す?

カナダのコラムニスト Helen Henderson がまた良いものを書いてくれました。 障害者らが如何に病院を危険な場所だと感じているか、 一般病院の医師が如何に障害について無知であるか、という話。 「ケアを装う無知」。 Ignorance masquerades as care By Hel…

貧困地域で女性の寿命短くなっても自己責任論(米)

ワシントン大学の新しい研究所IHMEの所長に就任した Christopher J. Murrayのことを少しずつ調べてみようと思っていた矢先、 Washington Postの今日のニュースで Murrayが主導した調査報告が紹介されていました。 ただしワシントン大学のIHMEで行った研究で…

世界の保健医療に「黄金律」作るとIHME

ワシントン大学の(というかゲイツ財団の?)新しい研究所IHMEについては 前のエントリーで紹介したSeattle Post-Intelligencerの他に Seattle Timesも報道していますが、 こちらはタイトルからして、 その無神経さが非常に象徴的で 「シアトルの研究所、世界…

死亡率に障害も加えて医療データ見直す新基準DALY

シアトルのワシントン大学に新しくできた研究所IHME(医療数値基準評価研究所とでも?)と、 IHMEが新しい事務所の公開をかねて4月9日から2日間開催した科学研究カンファレンスについて、 Ashley事件で御馴染みの地元2紙がそれぞれ報道していますが、 この2…

新生児スクリーニング制度化(加・米)

カナダ、米国で 新生児スクリーニングの制度化が相次いでいます。 カナダOntario州で先週、新生児スクリーニング・プログラムが始まり、 British Columbia州と Saskatchewan州でも導入が検討されているとのこと。 以下の記事は特に話を嚢胞性線維症(CF)に…

「効率的な医療制度」ランク、日本は10位

このところ気になっているので、 ワシントン大学の(実はゲイツ財団の?)研究機関IHMEについてちょっと当たってみていたら、 たまたまWHOのこんなランキング(2000年)に出くわしました。 WHO’s Ranking of the Most Effective Health Systems UW Alumni Ma…

科学情報を操作するブッシュ政権

夕方、CNNjで”Broken Government(壊れた政府)”という特集番組を一部だけ見たのですが、 私が見た部分は科学情報にブッシュ政権の操作が行われているという指摘でした。 例えば、NASAの職員(たぶん広報関係)が語っていたのは以下の話。 NASAにはボスの希…

世界の医学研究を私物化するゲイツ財団

前のエントリーでAshley事件の観点から紹介したワシントン大学の研究機関IHME (The Institute for Health Metrics and Evaluation)については、 例えば理事会メンバーなどを見るだけでも、 この研究所の存在や意図に懸念を覚える方が多いのではないでしょ…

イリノイの上訴裁判所 知的障害女性の不妊術認めず

このままAshley事件が前例になって行くのは怖いなぁと思っていましたが、 歯止めとなりそうな判断がイリノイの上訴裁判所によって下されました。 よかった。 Court denies bid to sterilize mentally disabled woman Chicago Tribune, April 18, 2008 子ども…

英国から米の慈善資本主義批判

"Just Another Emperor: the Myths and Reality of Phlilanthrocapitalism" 「新たな帝政:慈善資本主義の神話と現実」という本(著者Michael Edwards)が刊行されたことに寄せて、 著者と同じチャリティ財団に所属し、 かつて英国首相の社会施策アドバイザ…

Bill Chill (ビルぶるい?)

前に紹介したことのあるGates Keepersというブログで 面白い新語を拾いました。 Bill Chill ゲイツ財団から支援金や助成金をもらった人々が そのお金の背後にいるBill Gates 氏の存在にブルってしまって、 財団やゲイツ氏自身から直接何かを要求されるまでも…

臨床試験の舞台裏についてArt Caplan

「移植臓器不足は誇張されていた」という3月のエントリーでちょっと書きましたが、 ペンシルバニア大学の倫理学者Arthur L. Caplanについては Ashley事件で初めてその発言に触れ、 その後も様々なニュース記事でコメントを読むにつれて ちょっと気になってき…

製薬会社とブッシュ政権が訴訟つぶしを画策中

……というタイトルどおりの動きを NY Times が指摘しているのですが、 そこで製薬会社と政府が盾にとっているpre-emptionという法理論というのは、 どうやら専門家の専門性に絶対的な免罪符を与えて司法判断より上位に置くといったもの。 これでは専門性を隠…

ダウン症児:産んだ夫婦・中絶した夫婦

CNNが4月6日に「ダウン症の決断」と題した特集を放送し、 おなかの子がダウン症だと分かって産むことを選択して 現在4歳になった娘Faithと息子と幸福に暮らしているMitchell夫妻と、 ダウン症だと分かって中絶することを選び、 その後、障害のない子どもを産…

新コレステロール薬、本当は効かないって

statins に代わるコレステロール低下薬として 強力な売込みが進んでいるVytorinとZetiaの2つの薬について、 先週明らかにされた臨床試験のデータでは 実は動脈硬化予防の効果はさほどなかったことが判明。 しかも製薬会社が副作用に関するデータを1年間も隠…

子どもに安定剤飲ませ過ぎ

この頃、薬関連のニュースがやたらと目に付くのですが、 それらが警告しているのは主に以下の2点のようです。 ① 安易な過剰処方 ② 製薬会社の法令遵守の問題(臨床試験の不十分または不透明) ここでは「子どもへの安定剤使用に不安」というBBCニュースを。 …

サプリ、実は命を縮めている?

ビタミンのサプリメントは、 実は寿命を延ばす効果がないばかりか 逆に命を縮めているかも…… という研究結果が出たんだそうで。 Vitamin supplements may increase risk of death The Guardian, April 16, 2008/04/16 Vitamins ‘may shorten your life’ BBC,…

周産期に障害・病気情報提供を保障 法案にW・ Smith賛同

4月1日のエントリーで紹介しましたが、 周産期に子どもの病気や障害が分かった場合に その病気や障害についての詳細な情報が母親に提供されるよう求める法案が 米国議会の関連委員会を通過しました。 それについて、保守系の論客Wesley Smith が賛意を表明し…

何をいまさら後期高齢者医療制度批判のメディア

さっき10時過ぎに何も考えずにテレビをつけたら いきなり小泉元首相が国会で演説している映像にぶつかって面食らった。 なんだ、なんだ? と思ったら、 「報道ステーション」が 後期高齢者医療制度ができた当時、政府がいかに説明もせず強引に決めてしまった…

未熟児はどうせ早死にするから助けるのをやめようって?

このニュースはタイトルを見た瞬間に、 「あ、やっぱり、こういう話が出てきたよ……」と嫌な匂いがした。 現在、どんどん小さな未熟児が助かるようになったのは 90年代に使われ始めた薬と治療法のお蔭なのだそうですが、 それをさらに遡る頃から数十年間、 ノ…