ダウン症児:産んだ夫婦・中絶した夫婦

CNNが4月6日に「ダウン症の決断」と題した特集を放送し、

おなかの子がダウン症だと分かって産むことを選択して
現在4歳になった娘Faithと息子と幸福に暮らしているMitchell夫妻と、

ダウン症だと分かって中絶することを選び、
その後、障害のない子どもを産んだという夫婦とに
それぞれインタビューしています。

Down Syndrome Decisions
CNN Video, April 6, 2008


後者の夫婦は姓を隠してインタビューに応じ、
中絶の決断を後悔していないし間違ったことをしたとも思わないが、
自分たちがしたことを軽蔑する人たちが世の中には沢山いることは感じている、と。

Mitchell夫妻は
ダウン症だと分かった時に医師からネガティブな情報ばかりが出てきた、
この子を産むと「お兄ちゃんの重荷になりますよ」とまで言われた、と。

医師らは最悪のシナリオだけを頭において話をしているが、
出産前の夫婦には偏った情報ではなく、
情報をすべて提供して欲しい、と。

上記リンクから、
バースデイ・ケーキのろうそくを吹き消し、
友達と遊んだり、シャボン玉を吹いている
Faithちゃんの可愛らしくほほえましい姿が見られます。

障害の種類も程度も様々なのに、
その具体的な障害像や現実を置き去りにしたまま、
「障害児は自立できず家族のお荷物になる」とか
「生まれてこないほうが本人のため」だと考える人は
彼女の姿を見て、一度自分に問うてみて欲しい。

この子の姿を前にしても
果たして同じことを同じ口調で言えるのかどうか。

       ――――――

障害の多様性も個別性も置き去りにしたまま、
“障害”という言葉で一括りにしてイメージだけで語ると
すべての障害に最悪のシナリオが思い描かれてしまう。

シアトル子ども病院の生命倫理カンファレンスで
障害新生児への「無益な治療」停止を提唱していたNorman Fostが引いた
「重い障害を持った新生児」の例が無脳症児であったように。


障害児・者を功利主義で切り捨てようとする人たちは
意図的に敢えて最重度のイメージを付加して語るのかもしれないから、

それだけ余計に、
両義的なところで迷いつつ悩みつつ
自分なりに真摯に考えてみようとして
“障害児”の選別的中絶や安楽死や「無益な治療」論による治療停止を論じる人は

自分が語っている“障害”とは
具体的にどういう障害が
どの程度にひどい場合を想定しているのかを

まず具体的にしっかり確認し、
その障害についてせめて基本的な知識を身につけた上で
初めてその問題を考える……というくらいの慎重さ・繊細さを持ってほしい。