2008-07-01から1ヶ月間の記事一覧

「基本は蘇生なし・患者には拒否権のみ」という”事前意思票”

前のエントリーで取り上げたKenneth Fisherという腎臓専門医のブログは Healthcare in America(アメリカの医療)というタイトルの通り、 アメリカの医療制度改革を考えるものなのですが、 ブログの副題に次のように書かれています。 Before we can hope to …

Truogの「無益な治療」批判への批判

去年テキサスで起こったEmilio Gonzalesの治療を巡る「無益な治療」論争について ラディカルな生命倫理の主張で知られるDr. Robert Truogが Emilioの治療を停止しようとした医師らを批判していることを 前回のエントリーで紹介しました。 このTruogの論文を…

TruogのGonzales事件批判

Harvard大学のDr. Robert Truogといえば、 以前臓器移植で「死亡提供者ルール」廃止せよとのエントリーで紹介したように、 臓器を摘出するのに脳死を待たずとも 本人の事前の意思表示さえあれば植物状態から摘出してもよいことにしようという あまりにもラデ…

「社会保障切り捨ての真の目的は連帯崩し」とチョムスキー

図書館の新刊コーナーで見かけた時に 「わ、懐かしい名前だ……」というだけで暇に任せて借りてきた本。 ノーム・チョムスキー「すばらしきアメリカ帝国」(集英社) 語学を齧った若い頃に名前だけはよく見かけたというだけで、 当時もその後も著作を読んだこ…

障害胎児・新生児の親に情報提供保障する法案つぶれる

当ブログでもこれまで2つのエントリーで触れた法案の続報。 (リンクは文末に) ダウン症だと分かった妊娠の9割が中絶されている米国で、 そうした傾向に歯止めをかけようと 障害胎児・新生児の親への正確で充分な情報提供と支援を謳う法案が 米国上院に提…

知的障害者の強制結婚、相手はビザ目的、親は介護保障で

去年、英国政府に報告された強制結婚ケースのうち、 5組に1組で知的障害者が被害者となっており、 報告に上がっているのは氷山の一角に過ぎないとして 警察、弁護士、ソーシャルワーカーが検討会を持った。 Disabled youngsters forced into marriage to p…

「チーム医療」の不思議

もう何年か前のことになりますが、仕事の関係で、 医療関連のいくつかの職種向けの専門誌をつまみ食いしてみた時期があって、 当時は(今もそうかもしれませんが) どの職種向けの雑誌でも「これからはチーム医療だ」ということが強調されていて、 そういう…

オンライン医療データ管理:MicrosoftはKaiserと組んでGoogleに先手?

まず、今年3月のWPに、ちょっと気になる記事がありました。 オンラインで個人の健康・医療に関するデータを管理して、 ネット上で医師に相談ができたり、その他情報を集めたり、 病院を選んで診療予約を取る、薬の管理も出来る、個人情報を医療職と共有でき…

ゲイツ財団の今度のターゲットは喫煙

小国のGDPにも匹敵する財産を持つBill Gates 氏とNY市長のMichael Bloombergの2人が手を組んで、 世界中の喫煙者対策に乗り出すのだとか。 先進国での喫煙者は減少している一方で 開発途上国ではむしろ喫煙者が増えており、 それが多くの人に健康被害をもた…

遺伝子診断でA事件と矛盾するDiekema発言

以前にお知らせしたように、 今年の第4回シアトル子ども病院生命倫理カンファレンスは 小児における遺伝子診断をテーマに7月25,26日の開催。 今頃かの地ではカンファまっただ中というところでしょう。 (上記リンクにリアルタイムのWebcastがあります…

A事件に「小児乳房切除の倫理」Dr. Sobsey再び

先日、カナダの教育心理学者Sobsey氏がAshley事件での乳房芽の切除について 実は乳房切除そのものであると指摘しましたが、 同じブログで今度は 小児の乳房切除についての文献を当たって 知的障害を理由にAshleyに行われた乳房切除は倫理的に正当化できない…

Delaware州でも第2のシャイボ事件

2006年8月にヘロインの過量摂取の後遺症から重症障害を負った女性 Lauren Richardson(24) の栄養と水分の供給を巡って、 その停止を裁判所に申し立てている法定後見人(legal guardian)である母親と それに反対する父親が激しく対立しているケース。 (2人…

女性の不妊手術に関する意見書(米国産婦人科学会)

米国産婦人科学会倫理委員会の「知的障害のある人を含む女性の不妊手術に関する意見書」。 2004年の第2版が2007年7月にアップデートされたもの。 Sterilization of Women, Including Those With Mental Disabilities ACOG Committee Opinion No. 371, July 2…

自閉症キレート療法論争にDiekema医師

こんなところにDiekema医師が登場していると、教えて下さる方があったので。 自閉症児へのキレート療法の臨床試験を巡って米国で先週から論争が起きており、 その件についてScience誌に掲載の論文。 Stalled Trial for Autism Highlights Dilemma of Alterna…

介護者差別巡るEU裁判で介護者に画期的勝利

今年1月に 介護者差別を巡るColeman裁判のエントリーで紹介したケースに ヨーロッパ法廷の判決が出ました。 障害のある息子がいる女性が職場でフレックスで働きたいと申し出たのに認められなかった、 障害のない子どもの親には認められているのに 子どもに…

医学生のAshley論文に漂う「医の文化」?

The Lancet 誌が“世界中の学生がグローバル・ヘルスに興味をもってくれるよう” 開設している投稿サイト the Lancet Student に、 イスラエルの医学生がAshley事件を論じる論文を寄せています。 タイトルは「医療の傲慢の極地」なのですが、 学生さんの書いた…

A事件「乳房芽切除」に疑義を呈するブログ記事

このところ久しぶりにAshley事件に関する論文が2つ続いています。 多くの人がもはや興味を失ったばかりか忘れ去ってしまったかのように思える今 なおこの事件に興味を持っている研究者の方もあるというのが嬉しい。 まず、そのうちの1つ。 カナダのAlberta…

治療法研究より老化防止で医療費削減を

元論文の情報がないのがちょっと不思議な記事なのですが、 University of Illinois at Chicago の Dr. Olshansky、 University of WashingtonのDr. George Martinをはじめ 米英の老年学などの研究者総勢12人が 先進国で医療費の高騰が社会問題となっている…

その人なりの分かり方・その人らしさの匂い

チキナさんはたぶん23歳くらいの、女性。 高校生くらいに見える。 重症重複障害があるけど自分で座ることはできる。 つかまるところがあれば膝立ちもできる。 支えてもらえば、不安定ながら、ほんのわずかなら立つこともできる。 だから お母さんがナナク…

Obama, McCain両氏が障害者施策についてフォーラム

The American Association for People with Disabilities(AAPD)は アメリカ障害者法(ADA)が出来て18年になるのを記念して 7月26日にOhio州 Columbus にて the National Forum on Disability Issuesを開催。 その際、大統領候補のObama、 McCain両氏を招い…

世論調査の危うさについて

キリスト教保守のニュースサイトDacota Voiceに Schiavo事件における世論調査の危うさを突いた興味深い記事が投稿されています。 世論調査というものが如何に結果を正確に予測できないか 今年の大統領選で露呈されているが、 Terri Schiavo事件ではそんな不…

豪でも“反応のない”患者の治療差し控えガイドライン

オーストラリア政府の医療倫理委員会が新たなガイドラインにおいて 昏睡後に反応がなかったり反応が非常に小さい患者では 経管栄養を含む治療を差し控える方向を提唱。 Families encouraged to let “unresponsive” loved ones die The Courier Mail, May 26,…

第2のテリー・シャイボ事件

フロリダ州で去年の暮れに脳卒中で寝たきりになった57歳の女性Karen Weberさんを巡り、 植物状態だから栄養と水分補給を停止してホスピスに移したいとする夫と 目と頭の動きで意思表示が出来る、本人は生きたがっていると主張する母親が対立、 第2のTerri S…

佐野洋子「シズコさん」

佐野洋子さんの「シズコさん」は 母親を嫌っていた佐野さんが認知症になった母親の介護を通じて かつての出来事を追体験し、母親の人生を振り返って “許し”を体験していく過程が描かれている本なのだけれど、 そこに 自分と母親との関係は異常で、自分だけが…

自閉症に関連する遺伝子見つかる?

最近やたらと自閉症関連の記事に引っかかっているなぁ……とは思いつつ、 大きなニュースみたいなので、ついでに。 各国で自閉症の多い家系を調べたところ、 自閉症に関連する遺伝子が分かり、治療に結びつくかも、と。 Autism gene search turns up hope for …

「8歳からコレステロール薬」にNYTimesが社説

社説。文意はだいたいこんな感じ。 米国小児科学会が出した8歳からスタチンを飲ませようとの勧告には唖然としたが、 何より驚くのは報告されている子どもたちの健康状態の悪さであって、 それはもちろんどうにかしなければならない。 短期的には安全だとも言…

障害者ケア事業者「トップが給料とり過ぎ」

近年、グループホームなど障害者サービスの質の悪さが社会問題となっているところに さらに事業者の撤退で多数の入所者に影響が出ているワシントンDCで、 撤退した事業者から市の援助が少なすぎて経営できないと批判が出たのを受け 今度は市議会が税務調査の…

今度は歯の詰め物の水銀犯人説か

なんでも先月、アメリカ政府は 歯の治療に使われる詰め物アマルガムに含まれる水銀には 妊婦や乳幼児への健康リスクの可能性ありと発表したそうで、 それを受けて火曜日に、 下院議会で治療に使われる水銀汚染について歯科医療の関係者からヒアリングが行わ…

Diekema医師がMD州ワクチン拒否事件で論文

前のエントリーで紹介したメリーランド州の親によるワクチン接種拒否事件について Journal of Public Health Management and Practice誌の最近号で Ashley事件の担当医であったDiekema医師が論文を発表しています。 この事件で起きた州権力行使への反発を機…

米国の親によるワクチン拒否、裁判所介入へ

去年の事件ですが、 Maryland州 Prince George 郡では子どもにワクチンを受けさせない親が増えて とうとう2300人もが登校禁止処分となり、 中高生を中心に1月以上も登校していない子どもまで。 そこで裁判所が2300人の子どもの親を法廷に呼び出して 既に接種…