2007-10-01から1ヶ月間の記事一覧

英国 重症障害新生児を巡る気になる動き

1月の“アシュリー療法”論争でも触れている人があったのですが、 去年から英国では、産婦人科医らが早産の重症障害新生児を bed blocker(ベッドふさぎ)と呼び、事実上「治療をせず安楽死させてはどうか」と提案しています。そういう赤ん坊がベッドをふさいで…

Watsonは人種差別主義者ではなく優生主義者

ワトソンの問題発言騒動を巡って、 「リベラルでも保守でもない、敢えて呼ぶなら尊厳派」を標榜する サイト Mercator.Net に Michael Cook という人が エッセイ There’s more to life than discovering DNA(10月19日)を書いています。 Watsonのこれま…

英医師会の後見法ガイダンス

イギリスでは2005年4月7日に新しい後見法であるMental Capacity Act 2005が成立、2007年4月の一部施行に続き、この10月1日に全面施行となっています。MCAについては、去年、名川先生のブログ記事Mental Capacity Act 2005 (2006年9月…

米では13歳に中絶を認める

前回のエントリーで13歳の少女に裁判所が中絶を命じたケースを紹介しましたが、アメリカ・フロリダ州では2005年に、裁判所が13歳の少女に中絶の意思決定を認めています。 9歳から州によって監護されている(custody)13歳の少女は、暮らしているグ…

裁判所が13歳に中絶を命令

「わたしのなかのあなた」の主人公アナは13歳でしたが、イタリアでは親の訴えを受けた裁判所が13歳の少女に中絶を命じています。 13歳の少女Valentinaが15歳の少年によって妊娠し、本人は生むことを希望。しかし、Valentinaの両親は、その子どもを産…

「わたしのなかのあなた」から 3

父親のブライアンの視点から描かれている部分に、私には非常に示唆に富んでいると思える一節がありました。 まだ親になる前、若かったころのブライアンとサラ夫婦が旅先で出会った占い師の言葉です。そのとき、占ってもらおうと言い張ったのはサラでした。 …

「わたしのなかのあなた」から 2

白血病の姉のドナーになるべくデザイナー・ベイビーとして生まれ、13年間、臓器のスペア庫として常に待機しては体の一部を姉に提供し続けてきたアナが、次はいよいよ腎臓提供を求められるという段階で、「もうイヤだ」と両親を訴えるという物語。 これから…

「わたしのなかのあなた」から 1

Katie Thorpeのケースが裁判に持ち込まれ、Katie本人の利益はcafcassという子どもの権利擁護のための組織によって代理されることになったようです。それにより、Ashleyのケースにおける決定プロセスの安易さが改めて浮き彫りにされるような気がします。 そん…

子のプライバシー、親の権利

Katieのケースは裁判所の判断を仰ぐことになったようですが、 18日のエントリー「なぜ小児科医は出てこないのだろう」で記事の存在を紹介したきりになっているので、遅ればせながら10月13日のthe Guardianの記事から、Alisonの発言を以下に。 もちろん…

Gunther自殺報道の怪

Ashleyに行われた医療処置に関する問題では、どうもメディアの報道に不可思議な点が目に付くのですが、 Gunther医師の自殺を巡っても、 ①なぜ10日間も報道されなかったのか。 Gunther医師が自殺したのは9月30日のこと。 ところがそれを地元の新聞 the S…

Watsonの差別発言から考えること

既にあちこちで取り上げられているようですが、 DNAの構造を解明したノーベル賞受賞者James Watsonの人種差別発言が問題になっているとか。 「アフリカ人はヨーロッパ人よりも知的レベルが低い」という意味の発言をし、 予定されていた講演の中止が相次ぐ…

VeriChipはジリジリと広がっていく?

マイクロチップを人体に埋め込んで アルツハイマー病患者の徘徊防止に使うシステムを開発・販売している会社VeriChipについて、 以前のエントリーで紹介しました。 他にも緊急時の医療情報アクセスや銀行口座と直結で簡単支払いにも使えると売り込んでいるも…

「尊厳」を巡る疑問

18日のTimesのKatie関連記事の中で、どうも、ひっかかること。 この中には、母親Alisonが娘の子宮摘出を望むのは、pain, discomfort and indignity of menstruationからKatieを守ってやるため、と書かれています。 Alisonが言っていたのは、「良く知らない…

次はデザイナー・ゲノムだと

何かとお騒がせのDNA研究者Craig Venterが、 研究室の化学物質から人工的に染色体を作った、 つまり世界初の新たな人造生命体が誕生したことを近く発表するとのこと。 報じているのは10月6日のthe Guardianの記事 I am creating artificial life, decl…

英国の医療と法律 とりあえずの日本語情報

終末期医療に関するものですが、英国の医療関連裁判の概要を日本語で解説してある論文を以下に。 終末期医療における法的枠組みと倫理的課題について 児玉知子 (国立保健医療科学院 政策科学部) J.Natl. Inst. Public Health, 55(3): 2006 この中から、Kat…

Katieケース、裁判へ

これまでのニュースでは、Katieの母親から子宮摘出を求められて同意した婦人科医らがNHSの弁護士に法的助言を求めているとのことでしたが、 18日付のTimesの記事Should the Court of Appeal allow Katie Thorpe’s womb to be removed? によると、その助…

Dr.GのIEET接触のナゾ

Dvorskyが10月11日のブログで、1月にGunther医師がIEETと接触していたことを明らかにし、その文章の一節を引用していることは、既に紹介しました。 しかし、その後どうも不思議に思えてならないのは、 彼ら(IEETに関わっている人々、つまりト…

問題が摩り替えられていく

前回のエントリーで紹介したthe Daily Mailの密着取材の日も、 Alisonは例によって非常に雄弁だったようです。 以下は彼女の発言の一部。相変わらず、思慮に欠ける発言が目立っています。 障害児の世話をするというのは終身刑を務めているようなものです。時…

なぜ小児科医は出てこないのだろう

その後、Katieに関する以下の2つの記事を読みました。 The Daily Mail The humbling true story of why this mother wants her disabled daughter to have her womb removed (10.11) The Guardian “Of course I thought about putting her in a home. Somet…

クリスティ・ブラウンとKatieは違うと言い切れるか

その後、Katieの母親はまだメディアの取材を受け続け、しゃべり続けています。しゃべり続けるにつれ、言うことにも歯止めが利かなくなっているのではないかという懸念さえ覚えますが、それについては、また改めて整理して書こうと思います。 ここでは10月…

なぜ「たやすい決断」を強調するのか

初めてアシュリーの親のブログを読み、当初のメディアの記事を読む中で、とても不思議に思ったこと。 何故この父親は、これほど「難しい決断ではなかった」と繰り返し言い張るのか。 何故そのことに、これほどこだわるのか。 「この決断は多くの人が想像して…

Dr.GはIEETと接触していた

前回のエントリーで、Gunther医師自殺を巡るDvorskyの障害者団体批判のコメントを紹介しましたが、 実はその中に、ちょっと仰天の事実が。 “アシュリー療法”論争ピークの1月、 あのHughes が率い、DvorskyはじめBostrom(世界トランスヒューマニスト協会の…

やはり出た「自殺は障害者団体のせい」の声

そういう声が出るだろうと思っていましたが、Gunther医師の自殺は“アシュリー療法”にいつまでも度を越した批判を続けた障害者団体のせいだ、と。 書いたのは、あのDvorsky。 自身のブログSentient Developments10月11日のエントリーにて。 それに対して…

Ashley父とKatie母の決定的な違い

10月11日のWired ScienceというサイトにGunther医師の自殺を報じる記事があります。 記事そのものは6行だけの大変短いもので、特に目新しい情報はないのですが、 そこに書き込まれたコメントが目を引きました。 私が見た時点での書き込みは3つ。 残念…

Katieにできるのは息をすることだけ?

the Telegraphの Disabled girl to have womb removed (10月9日)から。 この記事には特に目新しい事実関係の情報はないのですが、母親Alisonの発言が引用されている箇所が多く、その発言がどうも気になるのです。例えば、 私にとっては苦しい決断でし…

Gunther医師自殺 続報 2

Gunther医師の自殺はアシュリー療法とは無関係だとの記事が、あのシアトル・タイムズに。 Diekema医師が彼らしい饒舌で語っています。 The Seattle Times Doctor who backed controversial operation on child commits suicide (10月11日) Gunther医師に…

Katieのケース 追加情報 3

新たにKatie関連の記事を見つけたので、 the Daily Mail のWhy I want surgeons to remove my disabled daughter’s womb(10月7日)から、これまでになかった情報についてのみ。 Katieの脳性まひの原因は出産時の低酸素脳症。 「メンタルな能力は1歳半で…

担当医の自殺について

あまり論理的な根拠があって書くことではありませんが、 Gunther医師の自殺は”アシュリー療法”を巡って批判を浴びたことが原因だとする説が、 これから、まことしやかに出てくるのではないでしょうか。 そういう話にしてしまいたい人がいるに違いないから。 …

Gunther医師自殺 続報 1

MSNBCにGunther医師の自殺について、前のエントリーで紹介した記事よりも詳しく報じられていました。 Doctor who stunted disabled child commits suicide (10月11日) キング郡検屍官局(?)によると死因は車の排気ガスを吸い込んだことによる二…

Gunther医師、自殺

10月10日付けSeattle Post-Intelligencer の報道によれば、“アシュリー療法”を直接担当し、論文執筆者の一人でもあるDaniel Gunther医師が、自宅で自殺とのこと。病院の広報担当者は、今のところ何も発表の予定はないと。 取り急ぎ、アップします。 【追…