なぜ小児科医は出てこないのだろう

その後、Katieに関する以下の2つの記事を読みました。



まず、事実関係についての疑問を。

10月7日のthe Daily Mailの記事ではKatieのメンタルレベルは「1歳半」とされていました。
それが同じ新聞の4日後の記事では「生後3ヶ月」。 
the Guardianの記事では「生後6ヶ月」。
そのいずれもが、根拠を提示していません。

              ――――――

以下、the Daily Mailの記事について。(the Guardianについては回を改めます。)

the Daily Mailは1月の”アシュリー療法”論争でもthe Seattle Timesと並んで、
父親側に偏ったセンチメンタルな報道をしていました。

このたびはKatie一家への(というよりもAlison一家への)1日密着取材を敢行、
いかにKatieのケアがたいへんであるかをドラマチックに、かつセンチメンタルに描写しています。



その中から、まずは新たに目に付いた事実関係(ただし内容は全て母親の言)を以下に。

・1992年3月31日に誕生。出生時に難産から58分間酸欠状態となり、ICUに運ばれた。(同じ新聞の7日の記事では酸欠状態になったのは38分間とされる。)

・退院後24時間のうち22時間泣き続けた。

・脳性まひの診断は生後4ヶ月の時に小児神経外科医から。

・栄養摂取は胃ろうにて。(Ashleyと同じ)

学習障害の子どもたちの学校(?)に。帰りはタクシーにて(恐らく英国の福祉制度で支給されるのでは?)

・けいれん状に体がびくんびくんすることがよくある。

・高い悲鳴のような声を上げる、または低い声でうなっていることが多いが、気分のいい時には静かに車椅子に座っている。

・夜中に何時間も泣き叫ぶことがあり、近所迷惑なので周辺に家のない場所に引っ越した。

・身体接触を嫌がる。

Alisonが母親だということも分かっていない。

・自分のニーズを伝えることができないので、ケアはAlisonと、7年前から同居しているパートナーの判断による。

・妹は11歳。

Alisonは、もとPA。(Physician’s Assistantでしょうか?)

AlisonとKatieの父親との間がうまくいかなくなった原因のひとつは、彼が娘の障害を受け入れられなかったこと。

・2人目の子どもを産もうと考えたのは夫婦間の亀裂を修復するためと、「正常で健康な子ども」を持つ経験をしたかったから。しかし妊娠5ヶ月目に離婚。

・パートナーのPeterはfloor fitter(カーペットを貼る職人?)。仕事で家に来た時に知り合った。すでに成人した子ども2人の父親で、Katieの障害を受け入れるのに問題はなかった。

・Katieの寿命は15歳から20歳といわれていたが、2人のケアが良いので25歳から30歳に伸びた。

・週に1度「ティーンズ・クラブ」に通い、定期的にお出かけにも連れて行ってもらう。

・時々、家族のレスパイトのためにKatieを預かってもらう。

・パリのディズニーランドやあちこちの行楽地にKatieを連れて行ってきたが、大きくなるにつれて難しくなっている。

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事実関係をここまで整理して、私が抱く疑問。

・この件については母親と婦人科医のコメントが紹介されているばかりで、
Katieの小児科医は登場していません
彼女を小さい頃から診てきた専門医がいるはずなのですが、なぜ出てこないのか。
今回の母親の希望について、またKatieの状態について小児科医の見解はどうなのか???

・Katieには、けいれん発作のコントロールが充分に行われていないのではないでしょうか? 
小児神経の専門医が充分なケアを行うことによって、
夜中の号泣やびくつきは改善する可能性もあるのでは? 
福祉はもちろん、医療的にも通常の重症児ケアの範囲でKatieの不快・苦痛を軽減する
(それは結果的に家族の介護負担の軽減に繋がる)ために
もっとできることが、残されているような気がするのですが? 
この点についても、重症児医療、障害者福祉の専門家の意見を聞きたいところです。

・脳性まひだけで「余命があと何年」という話が出てくることは考えにくいのですが、
最初にKatieの寿命が12-15歳だとされ、
その後、親のケアが良かったから寿命が延びて25―30歳というのは、
一体どういう立場の人がどういう根拠で言ったことなのか?


Alisonはこの密着取材の日もたいそう能弁だったようですが、
長くなるので、彼女の発言については次回に。