2007-01-01から1年間の記事一覧

親と医師の意見の対立(Riley Rogers 事件)

シアトル子ども病院生命倫理カンファのDiekema医師のプレゼンにて 親と医師の意見が対立した例として挙げられた3つの事件の1つ。 当のシアトル子ども病院で2006年6月に起こったケースです。 この事件についてDiekema医師の説明は 腎臓病の赤ちゃんに…

親と医師の意見の対立(Mueller事件)

Diekema医師がシアトル子ども病院生命倫理カンファでのプレゼンで挙げた 3つの事例の1、アイダホのMueller事件(2002年)について。 プレゼンにおけるDiekema医師の説明は、 赤ん坊の発熱とミルクの飲みが悪いことを訴えて母親がERに連れてきた。 診察…

「最善の利益」否定するDiekema医師 (後)

(前)で紹介したように Diekema医師は考察3で「最善の利益」基準を否定するのですが、 それに続く考察4において、 医療における意思決定では 「最善の利益」よりも「害境界」や「害原則」を用いる方がよいと提案します。 「いかに利益になるか」という点…

「最善の利益」否定するDiekema医師 (前)

今年7月のシアトル子ども病院生命倫理カンファレンス 最後のプログラム、Diekeme医師のプレゼンテーション 「子どもの医療を巡る争議において(立場や意見の)相違を理解すること」。 Diekema医師はまず、 当ブログでも紹介したAbraham Cherrixの抗がん剤拒…

クローン肉、本当に食べるって?

米国FDAは今年中にクローン肉とクローン牛乳の販売を認める方針だとのこと。 Producers Favor Tracking Cloned Animals Washington post (AP), December 20,2007 クローン動物は科学的には自然に生まれた動物となんら変わらないから大丈夫、 とFDAは言って…

たかがWiiを巡る騒ぎ

Wiiスポーツに代表されるアクティブなゲームが 実際のスポーツの代わりになるかどうか 燃焼エネルギーがどのくらい違うのか、 という話題をCNNも取り上げていました。 Video games can slim kids CNN Video, December 21, 2007 これまた誰が考えても「当たり…

Sciam今年の重大科学ニュースにAshley事件

Scientific American.comが2007年の科学記事トップ25を挙げているのですが、 (実際に数えてみたら、なぜか25よりもはるかに多いものの) その中に、Ashley記事が含まれていました。 Top 25 Science Stories of 2007: Scientific American December …

Wiiに関する研究報道

Wiiスポーツをやっても実際のスポーツには及ばないよ、と 誰が考えても「当たり前じゃない、そんなの」というような研究結果を 英国Liverpool John Moore’s 大学の先生方が発表したそうで、 Wii players need to exercise too BBC December 21, 2007 とはい…

Diekema医師のプレゼンについて

7月のシアトル子ども病院生命倫理カンファレンス2日目最後のプレゼンは、 Ashley論文の執筆者の1人であるDiekema医師。 演題は「子どもの医療を巡る争議において(立場や意見の)相違を理解すること」 Understanding Differences in Conflicts Surroundin…

“脅迫状”啓発ポスター撤去される

12月18日のエントリー「脅迫状で発達障害の啓発」にて紹介した衝撃的なポスターは、 19日水曜日をもって撤去されたとのこと。 以下のWPの記事によると、 脅迫状を模して作られた広告は 自閉症、過食症、うつ、アスペルガー症候群、強迫神経症とADHDを…

体外受精の安全性 2

前回のエントリーで体外受精の安全性について触れたのを機に 思い出した記事があったので探してみたのですが、 現在行われている体外・試験管受精(IVF)技術には命すら落とす危険があり、 もっと穏やかで安全・低価格の方法が提唱されているにも拘らず、 生…

体外受精の安全性

これまで ”救済者兄弟” 英国の”救済者兄弟”事情 追加情報 の2回のエントリーに分けて 英国議会で検討されている“救済者兄弟”の問題を紹介してきましたが、 このように生殖補助技術がどんどん発達し、 “救済者兄弟”を初めとする“デザイナーベイビー”まで既成…

英国の“救済者兄弟”事情 追加情報

”救済者兄弟”について英国では2004年に認められていることを 以前のエントリーで紹介しましたが、 (以下の記事では英国で初めて救済者兄弟が認められたのは2001年となっており、 この点では記事の間で3年のズレが生じています。) 初めて認められ…

Watsonの遺伝子16%黒人由来だと

……というタイトル通りの内容の記事が 12月10日に Independentに。 Revealed: scientist who sparked racism row has black genes ヨーロッパ系の人の大半はアフリカ系の遺伝子が1%以下というのが通例らしく、 今年の初めにJames Watson博士が自らイン…

脅迫状で発達障害の啓発

これらの脅迫状は、驚くことに NY大学 Child Study Centerが看板やポスターとして使っているもの。 息子はもらった。 我々はこの子の対人能力を破壊し 完全な孤立生活に追いやっている。 後はお前たち次第だ。 アスペルガー症候群より 人格化された障害が 子…

“救済者兄弟”

ヒト受精・胚法(Human Fertilisation and Embryology Bill)の上院での審議の様子の一端を読んで、 その中に出てきたSavior sibling という言葉に度肝を抜かれたので、 検索してみたら、 以下の記事にあるように 病気の子どもを救うための臓器目的で兄弟を…

遺伝子診断で障害も重病も弾くつもり?(英国)

英国でヒト受精・胚法(1990)の見直し法案が 現在上院で第二読会中という話を聞いたので、 着床前遺伝子診断による障害児の選別が話題になっているという 11月19日の議事録をちょっとだけ覗いてみようと思ったら、 ついつい最後まで読んでしまいました。 (…

象牙海岸の悲惨

ナイジェリアの子どもたちの悲惨を読み、 去年、象牙海岸で起きた悲惨を思い出しました。 先進国が出した毒性の強い石油化学廃棄物が何百トンも 世界で最も貧しい国のひとつである象牙海岸の海辺の町のあちこちに、 夜陰に紛れて捨てられたという事件。 死者…

ナイジェリアの子どもたちの悲惨

最初にビデオを見て目と耳を疑い、 ニュースの全容が掴めるにつれて絶句し、 次にギャラリーの写真を1枚ずつクリックするにつれ 息を飲み、かたまり、 憤りで体が震えた、 ナイジェリアのニュース。 「ナイジェリアの魔女狩り、子どもが標的に」 Children a…

ShakespeareのAshley療法批判(1月 Ouch!)

“Ashley療法”の成長抑制部分を皮肉って shrink(縮める)という表現を使った批判には、 前のエントリーで紹介したSaletanの他にも、 BBCの障害者問題ブログ Ouch!に 同サイト・コラムニストのTom Shakespeareが書いた文章があります。 Saletanが 「”介護の便…

SaletanのAshley療法批判(1月 WP)

前のエントリーの最後に簡単に紹介した William Saletanが“Ashley療法”を批判したWPの記事(1月21日)について。 Saletanはオンライン・マガジンSlateの科学と技術担当執筆者。 Washington Postの記事は既に有料となっていますが、 Slateに別タイトルで同…

Watson発言で人種間のIQ差論争再燃?

アフリカ人はヨーロッパ人よりも知的レベルが低いとする James Watsonの人種差別発言騒動はもう終わったと思っていたら、 「いや、確かにWatson発言には科学的裏づけがある」という声が出たり それに対する反論がネットでは続いているらしく、 なんのことは…

Katieケース、保健省見解の無責任

前回のエントリーで取り上げたDisabilities Now の記事の中に、 保健省のスポークス・ウーマンのコメントが載っていましたが、 そのコメントから判断すると、 Katieケースに関する英国保健省の見解とは、 本人の理解と意思表示の能力に応じて 担当医師らと本…

人権団体の長がKatieケースでメディア批判

英国では、それまであった the Equal Opportunities Commission, the Commission for Racial Equality, the Disability Rights Commission の3組織を1つにまとめ、 10月1日に the Equality and Human Rights Commissionが誕生しました。 同コミッション…

“日常を暮らす”ことの力

英国では近年、 障害や病気のある家族の介護負担を担い、 子どもらしい生活を奪われて暮らしている 若年介護者と呼ばれる子どもたち(17万人と推計されます)の存在が社会問題化し、 彼らへの支援の必要が叫ばれていますが、 自分も介護者として子ども時代…

中絶に関する気になるニュース

ニュースそのものもショッキングで、 妊娠24週目を超えると中絶が違法となるイギリスから 多数の妊婦が送り込まれていたと見られるスペインのクリニックが 違法な中絶の疑いで捜索されたところ、 堕胎した胎児を粉砕して下水に流すための機械が発見された、…

再び static encephalopathy について

以前のエントリーで紹介した Katieを巡るBBCのニュース映像(10月7日)の中で、 非常に気になったこと。 このニュースではAshleyのケースについても触れられているのですが、 Ashleyの写真にかぶせたナレーションが 彼女には「珍しい脳障害(rare brain dis…

12歳もステロイド使って女の子ゲット

英国の薬物誤用諮問委員会の調査で、 ボディ・ビルダーとティーンエイジャーを中心に、 アナボリック・ステロイドの濫用人口が増えており、 12歳の男児までが、遊び仲間のグループに入ったり女の子をゲットする目的で使用している、と。 Boys of 12 using an…

権力のパラドックス

もともと自分勝手な人間が権力を握りやすいのではなくて、 権力を握ることによって、 人間は自分本位にものを考えるようになるのだとか。 そういう心理学の実験を行ったのは Northwestern University of Kellogg School of Management。 自分の思い通りにな…

Katie追加情報と「死んだ方がまし」について

前回のエントリーに引き続き、 10月8日のBBCからKatieケース関連の記事。 “Wait and see the best approach” 医療倫理学者Daniel SokolがKatieケースについて論評したもの。 主な論点は ・子宮摘出術が本人の最善の利益にかなうかどうか、全く不明。 ・実際…