再び static encephalopathy について

以前のエントリーで紹介した
Katieを巡るBBCのニュース映像(10月7日)の中で、
非常に気になったこと。

このニュースではAshleyのケースについても触れられているのですが、
Ashleyの写真にかぶせたナレーションが
彼女には「珍しい脳障害(rare brain disorder)」があると言っているのです。

実際にはAshleyの障害はKatieとまったく同じ
重い知的障害を伴う重度の脳性まひ」に過ぎないにも関わらず。

日本でも1月の論争で
Ashleyは珍しい病気・障害」だとか
現代医学では治せない難病」などという
誤解が見られました。

これらの誤解は、
当初の論文においてDiekema医師らが
static enthephalopathy with marked global developmental deficits
という“診断名”を使用し、
一部メディアが解説なしにこの表現をそのまま引用したことに起因するものと思われます。
(誤解を招かないよう、実際に意味するところを注釈したメディアもありましたが。)

この、一見ややこしげな医学用語のコケオドシには
Ashleyの状態を実際以上に重く思わせる作為があったのではないかという疑問は、
当ブログの他にもAnne McDonaldさん他、何人かが指摘しています。

そして興味深いことに、
当のAshleyの父親自身、この表現を“診断名”とは受け止めておらず、
診断をつけられなかった医師らがAshleyの状態をこう呼んでいる」と
ブログに書いているのです。

          ――――――

Ashleyのケースについては1月から非常に多くの議論がされてきました。
ところがその中には、
Ashleyはどのような子どもなのか
何が行われたのか
といった基本的な事実すら資料できちんと確認せず、
自分の中にあるスティグマに満ちた「重症障害児」のイメージだけで論じている人が
いかに多いことか。(Peter Singerを含めて。)

上記Katieのケースについてニュースを書いた記者も
ろくに原資料に当たらず書いたのでしょうか。
あまりにも障害について無知だったのでしょうか。

しかし、英国で2例目が行われるかもしれないとのニュースの重大性を考えれば、
10月に至ってなおstatic encephalopathyに目をくらまされたまま
「Ashleyは珍しい脳障害」とは、

その無知も事実確認の欠落も、あまりにも無責任。