2007-08-01から1ヶ月間の記事一覧

ゴンザレス事件の裏話

シアトル子ども病院での生命倫理カンファレンスでは、何人かが講演をした後で、まとめてパネルで会場からの質問に答えるという形式がとられています。最初のパネルを聴こうとしているのですが、聞き取り能力にも問題があって、ちょっと苦労しています。ただ…

知的障害者だからと助けなかった医師

知的障害者と「無益な治療」という概念を巡って、ちょっと古いのですが、とても気になる事例を見つけたので……。 知的障害のある男性がカリフォルニア州MercedのMercy Hospitalに救急搬送された。症状は腹痛と呼吸切迫。しかしオン・コールの外科医は男性の治…

コンフリクトなければ最善の利益も不問?

これも、前からずっと疑問に思っていたのですが…… 医療決定が問題になり裁判所の判断が仰がれたケースはニュースになりますが、それはいずれも意見の不一致、コンフリクトがあったからこそ問題になるのだということは、案外に見落とされている事実なのではな…

テキサスの"無益なケア"法 Emilio Gonzales事件

一連の報道から事件の概要を以下に。 Emilio Gonzales君はLeigh病(中枢神経を侵される遺伝性の障害)で見ることも話すことも食べることもできず、生後14ヶ月時の昨年12月からテキサス州オースティン子ども病院の集中治療室に入院、人工呼吸器を装着して…

カンファレンス 顔ぶれの不思議

シアトル子ども病院トルーマン・カッツ小児科生命倫理センターは 2005年から毎年夏に小児科生命倫理カンファレンスを開催しています。 そして過去3回のカンファレンスのプログラムを眺めてみると、 以下のように、このカンファレンスには “アシュリー療…

生命倫理カンファレンス Wilfond講演

Fostの講演のあとでWilfondの講演を聴いてみると、2人の講演内容は、”アシュリー療法“を巡っての、あのScientific American.comのメール討論のそれぞれのスタンスを「無益な治療の停止」という問題に一般化したものとも言えそうです。(メール討論の詳細につ…

生命倫理カンファレンス(Fost講演 2)

Norman Fostの講演 Parental Request for “Futile” Treatmentの趣旨を簡単に。 まずこの問題の典型と思われるケースを紹介。 ①Baby K : 無脳症で生まれ、母親の望みで病院は2年間人工呼吸器に繋いだ。 ②エミリオ・ゴンザレス :テキサス。レイ病。1歳半の…

生命倫理カンファレンス(Fost 講演 1)

7月13,14日の2日間にわたって行われた シアトル子ども病院トルーマン・カッツ小児生命倫理センターでの生命倫理カンファレンス。 第1日目の最初の講演者は、このブログでも何度かに分けて取り上げてきたNorman Fost医師。 (詳しくは「擁護に登場した…

この人もオトモダチかも? Lainie Ross

7月13-14日のシアトル子ども病院トルーマン・カッツ小児生命倫理センター主催のカンファレンスにはFost、Fraderの他にもう一人、“アシュリー療法”論争で擁護のコメントをした医師が登場しています。シカゴ大学のカマー子ども病院・マクリーン臨床医療…

ウィスコンシン大学つながり?

Scientific American.comのメール討論を読み返していたら、 これまで気がついていなかったことを発見。 討論に際して紹介されている3人の参加者の簡単なプロフィールを見ると、 Wilfond医師はトルーマン・カッツ小児生命倫理センターのディレクターである他…

Diekemaの上司なのに批判? (Benjamin Wilfond)

これまで何回かに分けてScientific American.comでのメール討論を眺めてきましたが、その意図について同サイトは「(メディアが騒ぎ議論が百出しているので)雑音に惑わされないために、最初にこの療法を承認した倫理委員会のメンバーと同じような意見を持つ…

子ども病院の生命倫理カンファレンス 2007

7月13、14の両日、シアトル子ども病院トルーマン・カッツ小児生命倫理センターが小児生命倫理カンファレンス”Current Controversies: Navigating Conflicts When Parents and Providers Disagree About Medical Care”を開催したようです。 カンファレン…

Strunk v. Strunkを論じた論文

以下いったんアップしたのち、当該論文をもう一度読んで少し加筆しました。 ボストン大学法学部の刊行物の中に、 前回のエントリーで触れたStrunk v.Strunk とその他の判例を論じている“Organ Harvests from the legally incompetent: an argument against c…

“最善の利益”はポルノと同じ (Joel E. Frader 4)

Frader医師は前回のエントリーで紹介した小児科学会の延命治療に関する方針の策定に関わった関係で引っ張り出されて、2005年にアメリカ小児科学会の学会誌Pediatrics上のBaby Doe Rulesを巡る論争に加わっています。 その方針と、この論争関連論文のフル…

延命治療に関する小児科学会方針(Joel E.Frader 3)

Joel Fraderは1996年に“Ethics and the Care of Critically Ill Infants and Children”と題するアメリカ小児科学会の方針を出した生命倫理委員会COBの委員長でした。 その方針の概要を以下に。 かつてなら死んでいた病児の生命維持が可能となり、医師や…

どうしてそんなにオドオドしている? (Joel E. Frader 2)

Scientific American.comのメール討論(1月5日)で、Frader医師はトップを切ってだいたい以下のような内容のメールを書きます。 両親の決定を支持するとの医師らの判断について論文はreasonablyにディフェンドしている。障害児の介護を考えれば、背が大き…

”たぶん”OKって? Joel E. Frader

Scientific American.comのメール討論に参加した3人のうちの1人はJoel E. Frader。シカゴの子ども記念病院の小児科医であり、ノースウエスタン大学フェインバーグ校医学部の教授です。同1月5日にAP通信のニュースでも彼のコメントが紹介されていますが、…

訂正

James J. Hughesについて、Hughes医師と表記してきましたが、彼は医師ではありませんでした。 CNNに登場した際に、Nancy Graceからアシュリー特有の症状を問われ、「直接診察せずに診断を下す愚は犯したくない」と答えていたので医師だと思い込んでしまって…

あの論文を「よく書けている」とは? (Norman Fost 6)

もう1つメール討論でのFost発言について重大なポイントとして指摘しておきたいのは、 Fost医師がベビー・ドゥ論争と障害新生児の治療停止・安楽死問題を持ち出していることです。 その下りの大まかな要旨を以下に。 70年代、80年代のベビー・ドゥ論争に…

国策でなければ優生にあらず (Norman Fost 5)

Fost医師が「ラリー・キング・ライブ」とScientific American.comのメール討論の両方で触れていることに、 優生思想だという批判への反論があります。 アシュリーに行われたことは優生思想だという批判があることに対して、彼は、 「優生思想というのは社会…

Fostも親のオウム返し? (Norman Fost 4)

Scientific Amrican.comのメール討論でのFost医師には、 これまで取り上げた他にも興味深いものとして、以下の発言があります。 アシュリーの子宮を摘出したいという父親の主な理由を確認しておくのがいいだろう。 アシュリーには子宮など必要ない、というの…

「グロテスク」論は成り立たないが……

知的レベルが低い人が成熟した肉体をもっていたら、 そのアンバランスが「グロテスク」であるとか「フリーク」であるとか、 「シボレーのエンジンを積んだキャデラックみたいなもの」 「気持ちが悪い」と言って、 アシュリーに行われた成長抑制を擁護した人…

知的障害者への嫌悪感 (Norman Fost 3)

1月5日のScientific American.com のメール討論でのNorman Fost医師の発言のうち、 もっとも過激な(正直な?)部分を以下に。 発達段階にふさわしい体のサイズの方が “怪物 freak”にならないですむという父親の意見に私は同意する。 (ただしfreakは父親が…

シボレーのエンジンを搭載したキャデラック? (Norman Fost 2)

Norman Fost医師はアシュリー療法が議論された「ラリー・キング・ライブ」(1月12日)に出演し、 2度発言しています。 まず最初の発言の方を以下に。 ラリー、私がこの件で驚くのは愛情の強さと広さですね。 わが子のために最善を尽くしたいという信じられ…

アシュリー論争にも出てた「ステロイドの専門家」 Norman Fost 1

前々回のエントリー「選手がステロイド使って何が悪い」とHughesで、 アシュリーの両親を強く擁護したJames Hughesが スポーツ選手のステロイド使用問題でも能弁を振るっていることを紹介しました。 ここ数年のステロイド論争をネットで当たってみると、 さ…

乳房芽切除の隠蔽指摘に担当医ら反論

GuntherとDiekemaの論文が乳房芽の切除を報告していないとして疑問視する“Only Half the Story”と題した書簡と、それにGuntherとDiekemaが反論する“Only Half the Story—Reply”と題した書簡がArchives of Pediatrics & Adolescent Medicineの6月号に掲載さ…

「選手がステロイド使って何が悪い」とHughes

薬物疑惑が取りざたされているバリー・ボンズの通算最多本塁打新記録樹立を目前に、 ワシントン・ポストは8月1日、 Is It Time For a Flex Plan? Techno-Athletes Change The Definition of Natural と題した記事で、 スポーツ選手の薬物や様々なテクノロ…

遺伝子治療で死者 続報 (審査委員会は民間企業?)

遺伝子治療の治験で使者が出た件に関する前のエントリーの続報です。 ワシントンポストはその後、亡くなった被験者の夫や関係者に取材して続報を書き、 安全を期するための治験のルールがいくつも守られていなかったとの 重大な疑惑を指摘していています。(…

遺伝子治療で死者

アデノ随伴ウイルス由来のベクターを使った関節炎の遺伝子治療の第2フェーズの治験で 反作用による死者が出たことが7月26日(AP)に報道されています。 治験を行っていたのはTargeted Genetics社(シアトル)。 開始は2005年10月ですが、去年FDAが…

James J. Hughes その3

もう1つ、Nancy GraceとDr.Hughesのやり取りを以下に。 G:(static encephalopathyという診断名とアシュリーの状態を両親のブログから一部紹介した後に) Dr. Hughes、どういうところが彼女特有の症状なんですか? H:(診察せずに診断はできないと述べた後…