”たぶん”OKって? Joel E. Frader

Scientific American.comのメール討論に参加した3人のうちの1人はJoel E. Frader。シカゴの子ども記念病院の小児科医であり、ノースウエスタン大学フェインバーグ校医学部の教授です。同1月5日にAP通信のニュースでも彼のコメントが紹介されていますが、そこでは医療倫理の専門家とされているので、シアトル子ども病院でのDiekema医師と同じような立場と考えていいでしょう。

このAP通信でのコメントがなかなか面白いので、メール討論でのFrader医師の発言の前に、こちらを先に紹介しましょう。

この特定の療法は、この状況ではOKだとしても、まぁ私はこの状況ではたぶんOKだと思うのですが、だからといって広く使われている解決策ではないし、障害のある人のケアについての大きな社会問題を無視しています。社会として、我々はこのような患者をケアする介護者に対してお粗末な支援しかしていません。

基本線としてはCaplanが繰り返し指摘し批判していることや、Gunther&Diekema論文掲載誌の編者でeditorialを書いたBroskoの批判と同じです。しかしFraderの口調はCaplanやBroskoほどきっぱりしたものではありません。翌6日のGazette-Timesにも引用され、「なるほど、倫理学者ですらアシュリーが大人になることを阻むのも“たぶん”OKだというほど、我が国の障害者福祉はお粗末だということか」と、“たぶん”を皮肉られています。

「アシュリーのケースだけはたぶんOKだと思うのだけど、療法そのものには問題がある」と矛盾したことを言っているわけですが、なぜこのケースに限って「たぶんOKだと思う」のか根拠は全く示されていません。担当医論文が全く同じことをやっていたのが思い返されます。論文も、「なぜこの患者においてだけはジャスティファイできる」のかは提示していませんでした。

あの論文全体の論旨もまた「アシュリーのケースだけは、とにもかくにもOKなんだけど、今後のケースは慎重に。セーフガードを整えたら、こういう親の要望もありだよね」というものでした。また倫理委の舞台裏を書いたSalon.comの記事で歯切れの悪い批判派の医師らが言外に匂わせていたのも、「まぁ、とりあえず、この子1人についてだけは、親がそこまで言うんだからということにはなったんだけど、この医療の適用そのものにはやっぱり問題があると思う」というホンネのようでした。 あの医師らの歯切れの悪さに通じるものが、Frader医師の発言にも感じられます。

そして、このFrader医師、メール討論ではもっとオドオドしているのです。

(続)