2007-07-01から1ヶ月間の記事一覧

徘徊追跡でアルツハイマー病患者にマイクロチップ?

7月22日のAP通信その他によると、家畜に管理追跡用に埋め込むマイクロチップの会社を親会社に持つVerichip という会社が、ID番号を記したマイクロチップを200人のアルツハイマーの患者に埋め込む実験を予定しているとのこと。Verichipは、既に世界中で…

ノーマライゼーションに、実は逆行していない?

とても単純に、ずっと頭に引っかかっていること。 アシュリーの両親と担当医が言っていることは、ノーマライゼーションの考え方に逆行しているのでは……? 「施設には絶対に入所させない、家庭で世話をする」と言えば、一見「地域で普通に暮らす」というノー…

アシュリーの「病気予防」のDNA的合理性?

前のエントリーで書いたように「遺伝子診断で癌罹患率が高いから臓器を摘出する」ということは、実際に行われているようです。アシュリーに行われたことのうち「病気予防で子宮と乳房芽を摘出する」という部分をこの点に沿って考えてみると、どうでしょうか…

一族そろって胃を全摘して癌予防

Mike Slabaughの一族は、代々珍しい遺伝性の胃がんが多い家系だった。おばあちゃんも、お父さんお母さんも、叔父さんも叔母さんも胃がんで死んでいった……。そこで彼と従兄弟たちが、そろって遺伝子診断を受けたところ、従兄弟17人のうち11人までが、おば…

家族介護で、なぜレイプ?

絶対に他人に介護を任せることはない、ずっと家で家族が面倒を見るというのであれば、なぜレイプを心配しなければならないのでしょうか。 「介護者に体が触れるときに大きな乳房は彼女を性的な存在とし、虐待を招く可能性があるから」というのが、両親のブロ…

学校には託せるのに?

Arthur Caplanの論評を読み返していて、ふと疑問に思ったこと。 アシュリーは学校のSpecial Educationのクラスに通っています。ブログでは「アシュリーは学校の障害児のためのクラスに行っており、毎日バスに乗って通い、彼女に合わせた活動が組まれて、先生…

Caplanの「希望」について 2

5月16日のWUのシンポの際に会場から、 ある障害児の父親の手紙が朗読されました。 非常に激しい文面でした。 逐一メモれたわけではないので、 厳密に言葉どおりではありませんが、 私の耳に聞こえたYouの響きのまま大意を訳してみたものを以下に。 うちの…

Caplanの「希望」について 1

ペンシルバニア大学・生命倫理センターのディレクターであるArthur Caplanは、 この問題について一貫して批判的な立場をとり積極的に発言しています。 1月5日にMSNBC.comに寄せた Commentary:Is“Peter Pan” treatment a moral choice?(“ピーターパン療法…

子どもを守る行政の義務・介入権 2

もう1つ、こちらは今年2月に報道された英国のケースです。 8歳で89キロという超肥満児Conner McCreaddieの生活ぶりがテレビ番組で取り上げられたことをきっかけに、彼の肥満は親のネグレクトであるとして地方自治体が介入。シングルマザーとして子ども…

子どもを守る行政の義務・介入権 1 (Cherrix事件)

未成年の医療において、なにが最善の治療か、それを誰が決めるのかという問題を巡って、興味深いケースが去年ありました。 当時15歳、ヴァージニア州在住のStarchild Abraham Cherrix がホジキンス病(リンパ腺ガンの一種)と診断されたのは2005年10…

このブログの解説

日本ではあまり報道されませんでしたが、 2004年にアメリカで重症障害のある1人の女の子に行われた ホルモン療法による成長抑制ならびに、子宮および乳腺芽の摘出という過激な医療処置が、 今年の1月から2月にかけて世界中で大きな論争を巻き起こしま…

むすび

私はゲイツ夫妻の社会貢献の純粋な善意を疑うものではありません。 アシュリーに行われた医療介入とそれを巡るプロセスに、 ビル・ゲイツ夫妻が何らかの形で関与したとも考えていません。 アシュリーの両親が「娘にこのようなことをやってほしい」と病院に申…

病院の建物取得とその時期

シアトル・タイムズの2006年10月27日のビジネス欄に、 シアトル子ども病院に関する次のようなニュースがあります。 シアトル子ども病院は2006年10月にシアトル・ダウンタウンに新たに2つの建物を取得し、研究棟として利用する予定。それにより、研究部門…

周辺事情

コンピューターソフト・ウインドウズの開発者であり、マイクロソフト社の創設者、現会長のビル・ゲイツ氏が2000年にメリンダ・フレンチ・ゲイツ夫人とともに創設したビル&メリンダ・ゲイツ財団を通じて、世界中の医療や福祉・貧困や女性と子どもを巡る様々…

支払いは被用者保険?

WPASの調査報告書には、アシュリーが手術で入院した際に病院に支払われた明細書が添付されています。 全額が保険で支払われたとされており、おそらく被用者保険で支払われたことを意味するのだろうと思われる箇所がこの中にあります(なぜか下線が引かれてい…

記事から削除された箇所とは?

1月3日付けのLAタイムズの記事と 翌4日にシアトル・タイムズに再掲された記事とを注意深く突き合わせてみると、 既に触れた2行の他にも手を入れた形跡はあちこちに見られます。 細かく言葉を置き換えたり、小さな削除や追加がある以外に、 丸ごとのセン…

報道から消えた情報

この事件について調べ始めてまもなくから、私がずっと不思議に感じていたことがありました。 調べ始めた当初、どこかの記事で父親の仕事はソフトウエア会社の重役だと読んだ覚えはあるのに、 その後の報道にはそれがまったく出てこないのです。 倫理委の席上…

記事から消えた2行

シアトル・タイムズの1月16日付の社説を読んだ時、 私は非常に注意を引かれました。 それまでに読んだ新聞の記事や論説はほぼ批判的なトーン、 少なくとも懐疑的なトーンに終始していたのに対して、 擁護の姿勢があからさまで、トーンにもヒステリックな…

社説で擁護した新聞 2

シアトル・タイムズ紙は、シアトル子ども病院が子宮摘出についての違法性を認めた直後の5月10日にも、社説で擁護を繰り返しました。今度のタイトルはThe right decision for a “Pillow Angel”(「枕の天使ちゃん」のための正しい決断)。 冒頭の1文で「障…

社説で擁護した新聞

1月早々の両親のブログ立ち上げから、メディアの報道は概ね批判的だったように思われました。そんな中、はっきりと全面擁護に回った新聞があったことをご存知でしょうか。 報道が最も過熱していたさなかの1月16日、the Seattle Times 紙は社説でこの問題…

医師らの懸念

2月9日付Salonの記事には、このたびの処置に批判的な立場の病院内の医師らの懸念として、「倫理委から外部の人が排除されたために、病院内の議論のニュアンスと複雑さが一般の人たちに伝わらない。そのために、他の障害児にそれだけ簡単に“アシュリー療法”…

行間に滲む医師らの苦悩 2

前回、Cowan医師の「この家族には、そんなことは言えない」という意味深な発言を紹介しましたが、もう一人、シアトル子ども病院の神経発達プログラムのディレクターであるJohn McLaughlin医師も、同じ記事の中で病院内に相当な反対意見があった事実を明かし…

行間に滲む医師らの苦悩 1

前回のエントリーで、「もしかしたら、当該倫理委の議論は親の要望を認める結論が“最初からありき“だったのではないか」との仮説を提示しました。実は、その仮説に立って読んでみると行間から医師らの苦悩(pain)がひしひしと読み取れる記事があるのです。 …

painful な議論?

前々回、当該倫理委当日の記録の中の一節を引用しましたが、実はその中に不思議な形容詞が使われています。 The discussion was ………. painful…. 倫理委の議論がpainful、苦痛に満ちたものだった、というのです。 倫理委の議論を形容するのに頻繁に繰り返され…

医師らが試みている誘導とは?

この事件に関する直接的な資料(医師らの書いた論文、両親のブログ、メディアに引用・紹介された両者の発言)を原文で詳細に読んだ人は、特に論文を中心として医師らの発言に、ある種の誘導の意図を感じておられるのではないでしょうか。 誘導しようとの意図…

倫理委を巡る不思議 ⑧当日の記録

WPASの調査報告書には、2004年5月5日の「シアトル子ども病院特別倫理委員会」の記録がExhibit Lとして添付されています。 この記録によると、委員会がアシュリー一家に会って担当医らから意見聴取をするのに1時間(なぜか親がパワーポイントを使って…

5.8プレスリリースのウソ

2004年5月5日の倫理委を巡る不思議について検証を続けているところですが、資料を読み返していると現在の病院サイドのウソが非常に気になるので、ここでちょっと閑話休題。 5月8日の記者会見のプレスリリースで、病院サイドはまたも大きなごまかしを…

倫理委を巡る不思議 ⑦議論の中身が出てこない

倫理委で具体的にどのような議論があったかについて、「リスク対メリット」の議論を行ったという以外に、医師らはどのように説明しているでしょうか。 まず去年秋の論文の記述から。 The treatment was requested by the parents and initiated after carefu…