このブログの解説

日本ではあまり報道されませんでしたが、

2004年にアメリカで重症障害のある1人の女の子に行われた
ホルモン療法による成長抑制ならびに、子宮および乳腺芽の摘出という過激な医療処置が、

今年の1月から2月にかけて世界中で大きな論争を巻き起こしました。

この”アシュリー療法“論争には、
実は多くの人が考えているのとはまったく別の実相があったのではないかと私は考えています。

このブログは、資料に見られる医師らの発言の矛盾を検証し、
本当は何が起こったのかについて1つの仮説を提示しようとするものです。

   ―――――――――――――――――――――――――――

“アシュリー療法”……なに、それ? という方のために、事件の概要を以下に。

2004年7月にシアトル子ども病院で、
重症重複障害をもつ寝たきりの女児(当時6歳)から子宮と盲腸、乳房芽が摘出され、
それに続いて身長の伸びと体重の増加を抑制する目的で
2年半に渡って大量のホルモン投与も行われました。
本人のQOLの維持向上のためであるとして両親が希望し、
病院の倫理委員会の承認を経て行われたとされる医療処置です。

このケースについては2006年秋、
担当医2人がアメリカ小児科学会のジャーナルに論文を発表しており、
ロイター通信などが報じているのですが、この時はあまり広く一般の関心は呼ばなかったようです。

ところが、両親が2007年元旦にこの処置を望んだ理由を説明するブログを立ち上げたことから、
メディアが広く取り上げ、にわかに賛否の議論が巻き起こって激しい論争となりました。
少女の名前はアシュリーとのみ明かされており、
両親のブログのタイトルは ”The Ashley Treatment“。
これは、アシュリーに行われた一連の医療処置に対して両親がつけた呼び名でもあります。

2月から報道も論争も下火になったかに思われましたが、
5月8日にWashington Protection and Advocacy System (現在はthe Disability Rights Washingtonと改名)という障害者の人権擁護団体が上記の事件に対する調査報告をまとめたのを機に、
病院は同日、記者会見を開いて子宮摘出について手続き上の違法性を認めました。

それに続いて5月16日にはワシントン大学でこの問題に関するシンポジウムが開かれましたが、
病院サイドは違法性については手続き上のミスに過ぎず、
アシュリーに行われた医療処置の決定は妥当なものだったとの主張を崩していません。


  ーーーーーー-----------------------------ーーーーーーーー


「シアトル・タイムズの不思議」→「当面のむすび」を読んでもらうと、
このブログが示唆している仮説の中心部分はご理解いただけるように思います。

しかし、いきなり結論を読まれると、
あまりにも荒唐無稽な仮説のようにも思われるかもしれません。

この仮説は簡単にかいつまんで論証できる性格のものではなく、
納得していただくためには、煩雑な検証にある程度お付き合いいただく以外になさそうです。

この事件に興味をお持ちの方であれば、
エントリーの日付順につまみ食いしていただくか、
または気が向いた書庫を上の方から適当に読んでいただき、
最後に「シアトル・タイムズの不思議」→「当面のむすび」を読んでいただけると幸いです。

基本的には、日付順に書いた文章です。

基本的には「当面のむすび」より上の書庫が”アシュリー療法”論争に隠れた実相に関するエントリー。

それ以下の書庫が、
その後英国で類似の要望が母親から出され、検討の末に却下されたKatieケースや
Ashley事件でのその後の動き、

また
現在の社会で起こっていることや、それを巡る生命倫理を中心とした議論など、
アシュリーの身に起こったことと関連しているかもしれない動き
逆に言えば、Ashley事件がまさに象徴しているのかもしれない世の中の動きについてのエントリーです。