2012-01-01から1ヶ月間の記事一覧

“無益な治療”差し控えは義務へ:「無酸素脳症新生児に蘇生25分はやり過ぎ」病院に賠償命令(仏)

“無益な治療”論、フランスでは 「一方的に拒否することは許されるか」とか 「どういう状況なやめてもよいか」という問題から 「どういう状況ならやめなければならないか」という問題になりつつあるらしい。 Thaddeus Mason Popeの以下の2つのエントリー情報…

「弱者の居場所がない社会 ― 貧困・格差と社会的包摂」メモ

「弱者の居場所がない社会 ― 貧困・格差と社会的包摂」 阿部彩 講談社現代新書 プロローグでも述べたように、近年ヨーロッパ諸国では、従来の貧困の概念を、より広くとらえ深く掘り下げた「社会的排除」という概念が、社会政策の考え方の主流となりつつある…

2012年1月30日の補遺

住民投票実施に向け、PAS合法化ロビーが活発に動いているミネソタ州で、ドキュメンタリー映画“How to Die in Oregon”の上映会とシンポが企画されている。 http://www.columbiamissourian.com/stories/2012/01/29/award-winning-film-about-assisted-suicide-…

今週のミュウ 4

福祉職の担当職員の方から 今日はグループ活動の日で、ティータイムの後に「今年どんな1年にしたいか」を描きました。まず台紙を選んだのですが、5~6色ある中で一番にオレンジ色、二番に青色を選ばれました。 紙の配置を変えても、その順番は変わりませんで…

米国の小児科医らが「ドナーは死んでいない。DCDプロトコルは一次中止に」

Philosophy, Ethics and Humanities in Medicine誌の昨年12月号で 何人かの小児科医が、DCDドナーは臓器摘出時に死んでなどいないのだから DCDプロトコルは一時中止とすべきだ、と主張しているとのこと。 Doctors call for a moratorium on donation after c…

「重症障害者は雑草と同じだから殺しても構わない」と、生命倫理学者らが「死亡提供ルール」撤廃を説く

The Journal of Medical Ethics のオンライン版で デューク大の Walter Sinnott-ArmstrongとNIHのFranklin G. Millerが共著論文を書き、 DCD(人為的心臓死後臓器提供)推進のためにデッド・ドナー・ルール(死亡者提供ルール)の撤廃を 説いているらしく、 …

証拠提出のため情報収集を認めたら「高裁がPAS合法化に一歩前進」と報じるMailの怪

去年の夏に以下のエントリーで紹介した訴訟の続報。 脳幹出血で全身マヒになった男性が「死ぬ権利」求め提訴(英)(2011/8/19) 英国の高等裁判所はMartin(仮名)さんの弁護士に対して 以下のように述べた、とのこと。 the solicitors may obtain informatio…

「医療資源の公平な分配とは、必要になった人が高額でも必要な医療を受けられること」とSmith

米国医師会誌に Douglas B. White医師とお馴染み「無益な治療ブログ」の法学者Thaddeus M. Popeが 「無益な治療争議は裁判所へ」と主張する論文を書いたとのこと。 タイトルは”the Courts, Futility, and the Ends of Medicine”。 それに対してWesley Smith…

欧州評議会議員会議が安楽死禁止の決議を採択

1月25日、欧州評議会議員会議(PACE)は リビング・ウィル、事前指示書に関する決議を採択し、 その中で以下のように述べて明確に安楽死を禁じた。 Euthanasia, in the sense of intentional killing by act or omission of a dependent human being for his…

2012年1月26日の補遺

日本語。ダボス会議 主要国首脳の出席現象 影響力に陰り:ダボス会議関連は多数ニュースあるけど、読む気にならない。 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120125-00000068-mai-int Obama大統領の一般教書演説で介護問題はほとんど触れられなかった。McKni…

スコットランド議会にまたも自殺幇助合法化法案

スコットランド議会に何度か自殺幇助合法化法案を提出している パーキンソン病患者のMargo Mac Donald 議員がまたも新たな法案を提出。 一昨年の失敗から学んだとして、今回の法案では ・自分で致死薬が飲めない人には医師が飲ませて幇助してもよいとする要…

ビル・ゲイツがダボス会議で「途上国の医療・農業支援はケチるな」

お昼のニュースでも渡辺健のスピーチをやっていたけど、 世界経済フォーラム、ダボス会議が25日から始まった。 Davos: big questions from top delegates to the World Economic Forum Guardian, January 24, 2012, 上記のニュースから、オープニングでのビ…

国家的権威から市場主義的権威による超国家企業の政治制度へ

「国家の退場 グローバル経済の新しい主役たち」 スーザン・ストレンジ 櫻井公人訳 全然手に負えなくて読んでいないのだけど、 パラパラっとめくって目についた個所が、 今日のエントリーや補遺の内容とも、また 当ブログでずっと描いてきた「大きな絵」とも…

2012年1月25日の補遺

英国でまた、妻をDignitasに連れて行って自殺させた夫に無罪放免の決定。 http://www.bbc.co.uk/news/uk-wales-16701034 英国のTony Nicklinsonさんの裁判のニュース、米国でも「ロックト・イン症候群」の患者として報道。 http://yourlife.usatoday.com/hea…

EU政府も欧州委員会もアフリカでの新薬開発実験でゲイツ財団のパートナー

EUの研究予算500億ユーロを握るイノベーション責任者で アイルランドのEUコミッショナー、Maire Geoghegan-Quinn氏が 一昨日、EUの自らの事務所でビル・ゲイツと会談。 既にEU政府もEU委員会も アフリカのサブ・サハラ地域でのHIV、結核、マラリア治療薬の臨…

2012年1月23日の補遺

自殺幇助を希望して法の明確化を求めている全身性障害者のTony Nicklinsonさん(57)の裁判が始まる。:以下にリンクしたエントリーにも書いているように、私はこの人が「ロックトイン症候群」と報道されていることに、前から納得がいかない。 http://www.gu…

精神障害者への強制中絶・不妊手術命令を、上訴裁判所が破棄(米)

今月初め、米国マサチューセッツ州ノーフォークの検認裁判所の判事が 32歳の精神障害者Mary Moe (仮名)への強制中絶と不妊手術を命じる判決を出した。 それについては、専門家らからも 近年聞いたこともない、極端すぎるなど批判が相次いでいたが、 17日、上…

Ouellette「生命倫理と障害」第5章: Egan夫妻のケース

第5章「生殖年齢」でOuelletteが取り上げているのは 生殖補助医療をめぐる架空のケース。 架空のケースにしたのは、 生殖補助医療に伴う深刻な倫理問題をここでは一旦置いて 障害者の子育て能力を巡る医療サイドの偏見に議論を焦点化するため。 Bob&Julie E…

2012年1月20日の補遺

アフリカ向けのワクチン資金670万ドルが盗まれたり不正使用されている、とGAVI。:この手のニュースは前にもあった。どこかで拾っているはずなのだけど、すぐには見つけられなかった。 http://www.bloomberg.com/news/2012-01-19/gates-backed-vaccine-fund-…

Ouellette「生命倫理と障害」第5章 Valerie裁判

第5章の導入部分については、こちらのエントリーに既報 ↓ Ouellette「生命倫理と障害」第5章: 「アリソン・ラッパーの像」(2012/1/17) Oulletteが「生命倫理と障害」の第5章(生殖年齢)で取り上げているケースは 1985年カリフォルニア州のValerieの裁判。 …

2012年1月19日の補遺

2010年11月に妻をDignitasで自殺させたChris Larner氏が、それを戯曲にして自ら演じるのだとか。 http://www.birminghampost.net/news/west-midlands-news/2012/01/18/wolverhampton-to-stage-play-of-woman-s-assisted-suicide-at-dignitas-65233-30148982/…

「知的障害があるから腎臓移植ダメ」? フィラデルフィア子ども病院

フィラデルフィア子ども病院に知的障害を理由に3歳の女児の腎臓移植を拒否されたとして、 母親が顛末を書き病院に撤回を訴えたブログに2万を超える署名が集まっている。 Amelia Riveraちゃん、3歳。 染色体異常の一種、ウォルフヒルシュホーン症候群で 発達…

「アリソン・ラッパーの像」から考えたこと

昨日、以下のエントリーで紹介したアリソン・ラッパーの妊娠裸像について、 ずっとグルグルしている。 Ouellette「生命倫理と障害」第5章: 「アリソン・ラッパーの像」 今朝一番のツイッターで、mnagawaさんがこの話題に反応しておられるのを発見したことか…

2012年1月17日の補遺

米国の複数の専門医会が集まって「賢い選択」キャンペーンを行い、4月までに医師と患者が賢い選択を行うに当たって問うべき5つの事柄なるものを設定することに。過剰な検査や治療を防ぐため。 http://medicalfutility.blogspot.com/2012/01/choosing-wisel…

Ouellette「生命倫理と障害」第5章:「アリソン・ラッパーの像」

http://livedoor.blogimg.jp/manzzoni/imgs/a/1/a1049073-s.jpg Alicia Ouelletteの”Bioethics and Disability” 第5章「生殖年齢」の 冒頭で取り上げられている話題がこれ。 まったく知らなかったので検索してみたら、 日本語でもいろいろ出てきた。 マーク…

「介護」「障害のある子どもの親であること」を巡るツイート 3: 2012年1月13日~15日

そのころ、私はなぜかミュウが誘拐された夢を見ており、夢の中でパニックしてわめきまくっていたら、いきなり隣の布団から伸びてきた、ひやっこい手に顔面を襲撃されて飛び起きたり……しておりました。 前からずっと頭にぼんやりあったことが、何度も繰り返さ…

「介護」「障害のある子どもの親であること」を巡るツイート 2: 2012年1月13日~15日

ブログでは、ちょっと書きづらかった親として介護者としてのナマの思いが なぜかツイッターではさらさらと書けるのが不思議です。 たぶん、ブログでは一定の整理を経てまとまったことしかエントリーにできないけれど ツイッターでは、未整理の断片をそのまま…

「介護」「障害のある子どもを持つ親であること」を巡るツイート 1: 2012年1月9日―10日

1月9日 前に某シンポで、鷲田清一氏が「かつては町内で介護の支え合いがあった」みたいなことを言われ、春日キスヨ氏が「でも、その支え合いを負わされていたのは女だった」と突っ込んだら、鷲田氏が「でも介護は誰かがしなければならない」と言った。忘れら…

2011年1月15日の補遺

シアトルの病院が人工透析の対象患者の選別のために設置した「死の委員会」から50年。Thadeus Popeはこれが現在の病院内倫理委のルーツだと言っている。 http://medicalfutility.blogspot.com/2012/01/50th-anniversary-of-death-panel-1962.html 【上記委員…

ついに出た「重症脳性まひ児の蘇生、本人の最善の利益にならず」:アイルランド高裁

いつか“無益な治療”論はここへ来るに違いないという予感があって、 私はずっと恐れていたんだけれど、 来た。ついに―――。 アイルランドの高等裁判所で重症の脳性まひ児に蘇生無用の判決が出ている。 判決文そのものを読まないと何とも言えないところもあるも…