子育て・介護・医療

精神障害者への医療差別 (米)

これまで、障害者に対する医療差別の問題はいくつかのエントリーで拾っており(詳細は文末にリンク)、 その内容については今回の拙著『死の自己決定権のゆくえ』の第3章でも 「医療と障害のある人々」というセクションを設けて紹介していますが、 8月10日の…

オーストラリアの「全国介護者レスパイト・プログラム」

オーストラリア健康高齢化省(DoHA)が2012年8月に制定した「全国介護者レスパイト・プログラム」 (National Respite for Carers Program:NRCP)の概要について、 同局から出ているNRCPガイドラインのイントロダクションから。 ・NRCPとは、 全国介護者ア…

オーストラリア介護者声明

Statement of Australia’s Carers(オーストラリア介護者声明) オーストラリア政府が2010年に制定した介護者法 The Carer Recognition Act 2010のセクション12として挙げられているもの。 (日本で『介護者憲章』と訳され紹介されているのがこれかも?) 1.…

「認知症介護の質のスタンダードを発表―英国」を書きました

認知症介護の質のスタンダードを発表 英国では、2012年3月に制定された医療・社会ケア法(2012年)により、国立医療技術評価機構NICEに社会ケアが達成すべき質のスタンダード(クオリティ・スタンダードQS)を示す責任が新たに課せられた。NICEは今年4月から…

向井承子『患者追放』にあった、医療の「届かなさ」

医療の中にある、いかんともしがたい「届かなさ」について 先週、あるところにちょっと書いてから、ずっとそのことについて というか、その「届かなさ」を超えるすべについて 考えるともなく考えていた。 そのことが、今朝のコメントを機に直前エントリーを…

医療の「届かなさ」に挑むことに要する勇気について

今朝、こちらのエントリーのコメント欄で、 患者が医療の「届かなさ」に挑むことに要する多大な勇気とエネルギーについて ちょっと触れたら、 25年もの時の向こうから、ある情景と そこにあったヒリヒリするような痛みの記憶が 思いがけない鮮烈さで蘇ってき…

北アイルランドの2013年第1四半期のケアラー・アセスメント報告

北アイルランドの保健省から2013年第1四半期の介護者統計が発表になっており、 以下の記事に、ケアラー・アセスメントについての概要が取りまとめられている。 今回が8回目ということなので、 2年前から四半期ごとに発表されていることになる。 私は最初、こ…

「『レスパイト・ケアラー求む!』介護シェア週間」書きました

「レスパイト・ケアラー求む!」介護シェア週間 英国のサウスウォーク在住のペドラー夫妻には子どもはいない。が、家には色とりどりのオモチャや絵本が入った大きな箱がある。夫婦は日頃はしまってあるそのオモチャ箱を、月に1度か2度、日曜日の朝になると出…

「医師の診察室における障害と差別」NYT

NYTに医師が書いた「医師の診察室における障害と差別」という論考。 中心的な主張は以下の一節によくあらわされていると思う。 It’s been nearly 23 years since the Americans With Disabilities Act, a federal law prohibiting discrimination against pe…

「健康な人への無用な検診やめて、資源をケアラーの健康チェックに回せ」と英GP学会

英国のGP学会(RCGP)から、 自分自身のニーズを後回しにし、自分の健康のことを忘れがちなケアラーに 医療資源を回すべき、との声が上がっている。 記事のタイトルと冒頭の1文だけを見ると、 まるで介護者のメンタル・ヘルスの定期チェックだけが言われてい…

Mencap「知的障害者への医療差別をなくす憲章」

なるべく前のエントリーとセットで読んでいただければ。 以下の憲章は Mencapが医療専門職や各種学会と協力して作ったものです。 医療差別をなくす憲章 障害ではなく、その人を見てください。 ・知的障害のある人はみんな、医療を受ける平等な権利があります…

知的障害のある人への医療差別 (Mencap作成のビデオ)

もう何年もかけて知的障害児者に対する医療差別の問題と取り組んできた 英国のMencapが、以下のGetting it right キャンペーンのサイトに、 とても分かりやすい、そして胸が痛くなる医療差別のビデオをアップしています。 http://www.mencap.org.uk/campaign…

祝! Healthwatch 立ち上げ: 「ケアホームの劣悪な介護実態を消費者団体の潜入調査が暴く【英国】」書きました

実は以下の記事、 書いたのは2年も前なのですが、 この果敢な潜入調査をやった Which? で 長年活躍してきたAnna Bradleyさんがトップとなって、 去年10月に英国で医療と社会ケアに特化した消費者保護団体、 Healthwatch Englandという団体が立ちあげられてい…

【お知らせ】ヤングケアラー支援ブログが誕生しました!

一般社団法人日本ケアラー連盟から ヤングケアラー支援ブログが誕生!! http://youngcarers.carersjapan.com/ 病気や障がいをもつ家族をケア(介護、看護、世話など)している、または そのお手伝いをしている10代~20代のヤングケアラーと元ヤングケアラー…

「同意なき不妊手術も精神科医療も虐待に相当」国連報告書

4日の補遺で拾った 国連のHuman Rights Councilの医療現場での虐待に関する報告書を BioEdgeが紹介している。 報告書本文はこちら。 アルゼンチンの人権問題の専門家 Juan Mendez氏が、 国連 Human Rights Councilに答申したもの。 「拷問に相当する、または…

すぐキレる問題行動ドクターは“怒りコントロール”講座へ送られる新時代(米)

もちろん、あくまでも少数に過ぎないけれど、 命令し、怒鳴り、わめき、暴言を吐き、キレる医師というのはいる。 専門家によると、 米国の医師のだいたい3~5%ではないか、とのこと。 例えば記事の冒頭に出てくるのは、 手術中に手渡された器具が正しく設定…

「肥満の人にGPがエクササイズを処方、テクノで見張り、サボったら福祉給付は差し止め」提言(英)

この4月に地域住民のウェルビーイングと保健衛生の責任が NHSから地方自治体に移されることを受け、 保守系のWestminsterの自治体 と、 地方自治体情報ユニットというシンクタンクが A Dose of Localism: the Role of Councils in Public Healthという報告…

84歳の男性が病院で餓死 (英国)

ずいぶん前から断片的に目にしていた 英国のNHS病院での高齢患者へのネグレクト問題。 英国の病院で高齢患者が食事介助をされず低栄養状態になっているとか、 自分の汚物にまみれたまま放置されているといった告発は 私が英語ニュースを読み始めた2006年から…

「英米でも深刻化する子どもの貧困」ほか書きました

英米でも深刻化する子どもの貧困 子どもの貧困が深刻だ。 ガーディアン紙は自社サイトの教師ネットワークを通じて全英591人の教師に調査を行い、その結果を6月に報じた。それによると、「朝の登校時にお腹をすかせている生徒がいる」と回答した教師は83%に…

認知症の母親をフルタイムで介護する重症障害男性から「働けるでしょ」と手当を引き上げ(英)

Graeme Tyldesleyさん(57)は 2002年に病気で引退するまで21年間病院職員として働いてきたが、現在は 進行性の脊髄の病気があり身体が不自由で(写真では歩行器を使って歩いている) 認知症の母親(82)と同居してフルタイムの介護を担っている。 母親がパ…

ホームレスになった統合失調症患者の父親・元議員が振り返る、精神医療「改革」の失敗

コネチカット州の下院議員と市長として、 25歳の時から精神保健医療の「改革」に力を注いできたPaul Gionfriddoさんが、 統合失調症を発症した息子が 医療からも教育からも司法からも適切な支援を受けられずに ホームレスに転落していくまでをWashingon Po…

エヴァ・キテイとセーシャのこと

「ケアの倫理からはじめる正義論 支えあう平等」を読んで、 これまで、同じ重症障害のある娘をもつ親の立場で、 エヴァ・キテイの個人的な事情や思いについて知りたかったことが いくらかはっきりしたので、整理してみる。 まず、キテイも私と同様に障害者運…

「ケアの倫理からはじめる正義論 支えあう平等」を読んだ

「ケアの倫理からはじめる正義論 支えあう平等」 エヴァ・フェダー・キテイ 岡野八代 牟田和恵 (白澤社 2011) 2010年のキテイの「愛の労働 あるいは依存とケアの正義論」の出版と 同年11月の来日の後に出版されたもので、 来日時の京都同志社大学での講演…

あるヤング・ケアラーの語り

10月は、オーストラリアの介護者週間。 いつからだったか記憶にないほど幼い頃から 精神障害のある母親の介護を担ってきたヤングケアラーの語りが紹介されている。 Shayley Willsonさん。 年齢が記事には明記されていないけれど、 内容から推測すると、現在1…

「驚きの介護民俗学」を読んだ

とても評価の高い本で、 確かに感動も味わいもないわけではないのだけれど、 ずっと、喉に引っかかった小骨のような違和感があった。 それは、著者が介護現場でどういう働き方をしているのかが 最後まできっちり掴めないことと関係しているような気がする。 …

アルツハイマー病の人の家族介護者への調査(アイルランド)

アイルランドの研究で アルツハイマー病の人をフルタイムで介護する家族介護者を調査したところ、 ストレス、神経障害やパニック発作に苦しむ人が5分の1、 3分の1以上の人が、身体が疲れきっていると感じていた。 また3分の2以上が 他の人に介護を分担しても…

えーっ! そうだったんですかぁぁ? 仰天の、欧米先進国『脱施設』の裏側

立岩真也氏が生活書院のHPで 次の『生死本』というタイトルの本の準備として連載をスタート。 現在、以下の2つ。 『生死本』(仮)の準備・1(2012/8/7) 家で死ぬ本――『生死本』(仮)の準備・2(2012/8/21) この2つ目の中に、『脱施設』をめぐる事実関係…

介護費用負担総額に上限設定へ(英)

以下のエントリーで書いたように英国では昨年夏に 介護と支援の財政委員会、通称Dilnot委員会から 公平で持続可能な成人介護制度の財政システム構築に向けた提言が行われました。 英国「介護と支援財政員会」提言(2011/7/5) それについて「介護保険情報」11…

20周年記念式典で起こった「ありえないこと」

娘がお世話になっている療育園は今年で創設20周年を迎え、 今日、記念式典があった。 関係者のあいさつや祝辞があり、その後、 子どもたちの20年間をたどるスライドがあって、 (みんな小さくて可愛くて笑顔がキラキラしていて、スタッフもまだまだ若く…

統合失調症の母親を持つ子供の回復過程(夏苅郁子論文)

いただきもので、 以下の論文を読みました。 「人が回復する」ということについて ――著者と中村ユキさんのレジリエンスの獲得を通しての検討―― 夏苅郁子 精神神経学雑誌 第113巻第9号(2011) 845-852頁 アブストラクトは 統合失調症の家族支援は、服薬管理…