「医師の診察室における障害と差別」NYT

NYTに医師が書いた「医師の診察室における障害と差別」という論考。

中心的な主張は以下の一節によくあらわされていると思う。

It’s been nearly 23 years since the Americans With Disabilities Act, a federal law prohibiting discrimination against people with disabilities, went into effect. Despite its unequivocal language, studies in recent years have revealed that disabled patients tend not only to be in poorer health, but also to receive inadequate preventive care and to experience worse outcomes. One study even uncovered significant disparities in the diagnosis and treatment of breast cancer in women with disabilities.

障害者への差別を禁じた連邦法であるADAが施行されて23年が経とうとしている。
同法の明確な法文にもかかわらず、近年の研究では
障害のある患者は健康度が低いだけでなく、
不適切な予防ケアしか受けられず、
受けた医療の効果も低いことが明らかになっている。
ある研究では、障害のある女性の乳がんの診断と治療に
大きなバラつきがあることすら判明している。


で、この記事が大きな紙面を割いて紹介しているのは
以下のエントリーで取り上げたTara Lagu医師らの調査。


調査の結果はリンクから読んでもらうとして、
この論考の興味深い個所としては、

Many of the doctors’ practices were eager to explain why they refused to see the patient, unaware, it seemed, of the legal implications of their refusal. Some said the patient was “too heavy.” Others brought up the potential litigation risk if the patient or a staff member was hurt during a transfer.

多くの医院や診療所が、なぜその患者を診れないかという理由を熱心に説明したが、
拒絶することそのものが法的に問題なのだということは分かっていないようだった。

中には患者が「重たすぎる」といったところもあった。
車いすから診察台にトランスファーする際に患者やスタッフがけがをしたら
訴訟になる可能性がある、といったところもあった。


Lagu医師は、
「我々が医療職だというだけで患者は診てもらえると、みんな思いこんでいるけれど、」
実際の医療現場では、私が障害者だったらしてほしくないようなことが行われている」


要因として挙げられているのは、
医療提供サイドの意識の低さや法的な知識不足のほかに、

高さを調節できる診察台が通常の診察台の4倍の値段であるなど
物理的な環境整備のコストや、

抱えてトランスファーするなどの時間が余計にかかることに対して
報酬が設けられていない問題。

さらに、ADAに医療機器について詳細な規定がない問題。

しかし、この記事によると、
オバマの医療改革法、the Affordable Care Actに設けられた新条項で
この夏に専門家委員会ができてガイドラインを議論し
各種連邦機関に対して一定の勧告を行うので、
この問題についても改善があるのでは、と。



いちばん上の引用箇所で触れられている研究はこちら ↓
http://content.healthaffairs.org/content/30/10/1947.abstract


Lagu医師らの研究は身体障害に関するもの。

知的障害者に対する医療差別はさらに深刻な面がある。
それについては英国のメンキャップがもう何年も前から頑張っている ↓