子育て・介護・医療

「野の花ホスピスだより」を読む

野の花ホスピスだより 徳永進 新潮文庫 四月下旬の夜中、ナースコールが鳴る。当直ナースが尿器で採尿すると「オシメノヒト、ナンニン? ジブンデタベレンヒト、ナンニン?」と東さん。「なんでそんなこと聞く?」と当直ナースは返した。 自分でおしっこの始…

NYT社説「メディケア拡大拒否は貧困層の健康を損ない、救急医療コストを安全網と納税者に付け回す」

米国で貧困層や障害者への支援を打ち切る州が相次いでいる(2012/7/23)のエントリーで 17日のNYTの社説を紹介しましたが、 NYTは引き続き28日にも メディケイド拡大を拒否する州への懸念の社説を掲載しています。 当ブログでも何度か触れたことのあるオバマ大…

「障害のある乳幼児と母親たち その変容のプロセス」から「なぜ障害のある子どもの親は『親でしかない』のか」へ 3

前のエントリーからの続きです。 著者はずっと母親の「主観的な経験」を重要視していながら 参考文献を見ると、この人、学者が「(母)親について」書いたものばかり読んでいる。 なんだか、 障害や病気についての知識は身につけているけど、 障害や病気その…

「障害のある乳幼児と母親たち その変容のプロセス」から「なぜ障害のある子どもの親は『親でしかない』のか」へ 2

前のエントリーからの続きです。 その「あとがき」にあった結論とは、 一つは、 早期療育の家族支援の中心は「自己のポジショニング」中心に、という点。 もう一つは、以下の3行で、 私にとっては、この本で最重要なのはここだった。 子どもの発達支援という…

「障害のある乳幼児と母親たち その変容のプロセス」から「なぜ障害のある子どもの母親は『親でしかない』のか」へ 1

「障害のある乳幼児と母親たち その変容のプロセス」 一瀬早百合著 生活書院 2012 著者は田園調布学園大学準教授で精神保健福祉士、ソーシャルワーカー。 これまでの障害受容論、家族支援論、社会学における障害児・者家族研究を振り返り、 社会学における障…

介護者が罪悪感なしに利用できるよう、レスパイト・サービスの質向上を(英)

何度か補遺で拾ってきたように、先月、 英国のケアサービス大臣が介護者にレスパイトへのアクセス改善を約束しましたが、 それを受けて Chigwellでレスパイト・サービスを提供している事業者のチャリティVitaliseが 障害者、病気の人、高齢者の家族介護者に…

「日本に介護者支援法を実現する市民の会」賛同申込書

■申込書送付先: Fax:03-5368-1956(一般社団法人日本ケアラー連盟事務局) メール:carers.law@carersjapan.com(下記の内容をご記入ください) 私は「日本に介護者支援法を実現する市民の会」に賛同いたします 氏名(団体名) (必須) ふりがな( ) ご…

【拡散希望】「日本に介護者支援法を実現する市民の会」に賛同のお願い

日本に介護者支援法を 実現する市民の会 にご賛同ください 「一般社団法人 日本ケアラー連盟」は、介護をしている人、介護者を気遣う人、介護者の抱える問題を社会的に解決しようという志を持つ人が集い、病気や障害ごとの縦割り介護を横につないで、「市民…

この10年で医療を受けられない米国人が激増

オバマ大統領が作った医療制度改革法 the Affordable Care Act(ACA)に対する 最高裁の判決と次の大統領選挙の行方が注視される中、 Health Affairs誌に発表された Urban Institute研究者らの大規模な調査によって、 2000年から2010年の10年間に メディケイ…

精神障害者のケアラーの9割に心身への影響(豪の調査)

オーストラリアでWesley Mission により 精神障害のある人をケアする1000人のケアラーを対象とした調査結果が報告されている。 それによると 自身の心身の健康に有害な影響を報告したケアラーはほとんど90%で、 家族や友人との関係に悪影響があったとする…

最近のツイートから、「重症重複障害」と「支援」について

最近のツイートから、「重症重複障害」と「支援」について ウチの娘のけいれんは、眠っている間しか出ないのと小発作なので一緒に寝ていないと気付けず、昔から見たことがあるのは親(特に母親)だけで。昔の主治医とは信頼関係が良かったので、丸ごと信じて…

英国のケアラー実態調査:成人ケアラーの6割にメンタルヘルスの問題

英国のケアラー支援チャリティ the Carers Trustが ケアラー実態調査の結果を発表している。 なお、英国のケアラー支援の老舗、the Princess Royal Trust for Carers が 4月1日をもって Crossroads Careと合併し、the Cares Trust となった、とのこと。 こ…

「刑務所で認知症患者が増加、介護も囚人に(米国)/英国医師会か『「選択的人工呼吸』の提言」書きました

刑務所で認知症患者が増加、介護も囚人に(米国) 英語圏のニュースを拾い読みしていると、思いもよらない事態の出現に驚きつつも、「考えてみれば、こういうことが起こるのも必然だった」と深く納得させられることがある。そして「必然ならば、近く日本でも…

「支援2」からのツイート集 1

「支援1」についてはちょうど1年前に、 「支援」創刊号を読むというエントリーを書いていますが、 「支援2」を半分弱読んだところで、 矢も盾もたまらず、ダダ漏れツイートしたものが以下。 「支援2」の冒頭の「当事者をめぐる揺らぎ」を読んで、「え~、…

「病院での認知症ケア実態調査 英国」を書きました

The National Audit of Dementia (全国認知症調査)は、医療の質向上を目指して集まった英国精神医学会などの職能団体が共同で2008年にスタートした事業である。2009年には一般病院(general hospital)における認知症の人々へのケアの質を調査するための評…

医療職のアイデンティティがケアラーへの情報提供と意思決定支援に影響

BMC Medical Informatics and Decision Making 2012, 12:26 に掲載の論文で 初期から中等度の認知症の人を介護しているケアラーへの レスパイト・サービス選択をめぐる情報の流れと意思決定支援について 専門家とクライエントとそれぞれの視点からの質的研究…

最近の「障害のある子どもの親」ツイートまとめ

親に子どもの障害を告知した後、なるべく早く同じ状態の子どもを育ててきた親(必ずしも親の会ではなく)に繋いであげてほしいと、ずっと言い続けてきたけど、当初は「いや、まずは私たちが支えて落ち着いてから」「まずはリハビリ」など専門職の自意識過剰…

「全国介護者戦略モデル事業報告書による政策提言」を書きました

前のエントリーに報告書の概要があります。 このエントリーは報告書本文 p.131-132 の全訳です。 2011年秋の本報告書の刊行は、政府の意見聴取キャンペーンthe Future of Care and Supportと期を一にするものである。2012年には保健相から介護と支援白書の刊…

「全国介護者戦略モデル事業報告書(英国)」を書きました

英国政府は1990年の「全国介護者戦略」を08年に見直し(08年8月号の当欄で既報)たが、その際に介護者支援の新事業や既存事業の拡大など大規模なモデル事業をスタートさせた。1年半にわたって行われた全英25か所でのモデル事業について、保健省の資金提供を…

「あれは自分ではなかったか」読後メモ

2005年2月11日に石川県で起きた グループホームのスタッフによる利用者への虐待致死事件を受けて、 7月に東京と大阪で開催されたセミナーでの、 下村恵美子、高口光子、三好春樹3氏の講演内容をまとめた本、 「あれは自分ではなかったか グループホ…

「よろず相談室」の介護相談

いただきもの情報の、2月12日の中国新聞 「よろず相談室」コーナーがあまりに面白いので。 相談の内容は、55歳の男性から以下のもの。 近くで一人暮らしをしている78歳の母が病気で倒れ、食事や入浴などに介助が必要となりました。長男の私が最期まで面倒を…

「気持ちが沈む日に、ケアラーのあなたへ」

英国のケアラー支援チャリティ、CarersUKのサイトから。 CarersUKのサイトのフォーラムで会員の一人が 「落ち込んだ時の立ち直り方」掲示板スレッドを立てた際に、 続々と集まったアドバイスのトップ20を集めたもの。 (とり急ぎのアップです。訳語については…

「リハビリの夜」を読んだ 2

(前のエントリーの続きです) そうした共感を持って読みつつ、 それではあまりに希望というものがないではないか……と 暗い気持ちに陥ってきたところで、 ふいに、以下の鮮やかな一節が登場する。 失禁した私から見える世界は、その多くが、私とは関わりを持…

「リハビリの夜」を読んだ 1

「リハビリの夜」(熊谷晋一郎 医学書院) ずっと気になっていた本をやっと読んだ。 たいそう面白かった。ちょっと新鮮な読書体験でもあった。 言葉ではなかなか伝えにくいこと、普通はおそらく小説の仕事とされていることを 著者は小説という形式を取らずに…

「介護」「障害のある子どもを持つ親であること」を巡るツイート 4: 2012年2月2日~3日

昨日、今日と、また ツイッターで「介護者の立場」で沢山つぶやいてしまったので、 以下に取りまとめ。 ――――――― 「ケアの社会学」を読んでから、介護される者の権利と介護する者の権利には序列があるのか、そも「権利」が「優先順位」になじむのか、というこ…

「介護」「障害のある子どもの親であること」を巡るツイート 3: 2012年1月13日~15日

そのころ、私はなぜかミュウが誘拐された夢を見ており、夢の中でパニックしてわめきまくっていたら、いきなり隣の布団から伸びてきた、ひやっこい手に顔面を襲撃されて飛び起きたり……しておりました。 前からずっと頭にぼんやりあったことが、何度も繰り返さ…

「介護」「障害のある子どもの親であること」を巡るツイート 2: 2012年1月13日~15日

ブログでは、ちょっと書きづらかった親として介護者としてのナマの思いが なぜかツイッターではさらさらと書けるのが不思議です。 たぶん、ブログでは一定の整理を経てまとまったことしかエントリーにできないけれど ツイッターでは、未整理の断片をそのまま…

「介護」「障害のある子どもを持つ親であること」を巡るツイート 1: 2012年1月9日―10日

1月9日 前に某シンポで、鷲田清一氏が「かつては町内で介護の支え合いがあった」みたいなことを言われ、春日キスヨ氏が「でも、その支え合いを負わされていたのは女だった」と突っ込んだら、鷲田氏が「でも介護は誰かがしなければならない」と言った。忘れら…

母に殺させるな……「介護者支援」への思い

昨夜、介護者支援についてツイッターであれこれ書いていたところ、 ある方のツイッターで以下のニュースが流れました。 重度障害の62歳長女を絞殺容疑 85歳母「介護に疲れ…」産経新聞 1月11日 タイトルを見た瞬間に胸が詰まりました。 それまでのツイートの…

「障害のある子(今は成人)の親になってムカつくのは」Tweetシリーズ

昨年12月21日にツイッターを始めました。 アカウントはspitzibaraです。 よかったら覗いていただけると嬉しいです。 こんなことになるのでは、と懸念して ツイッターには手を出しかねていたのですが、 やっぱり予想通りに見事にハマってしまい、 今日の午後5…