「よろず相談室」の介護相談

いただきもの情報の、2月12日の中国新聞
「よろず相談室」コーナーがあまりに面白いので。

相談の内容は、55歳の男性から以下のもの。

近くで一人暮らしをしている78歳の母が病気で倒れ、食事や入浴などに介助が必要となりました。長男の私が最期まで面倒をみるべきだと思いますが仕事があります。母と不仲な専業主婦の妻は「自分でみるか、施設に入れて」と譲りません。


これに、74件の回答が寄せられたとのこと。
紙面で紹介されているのは6回答で、1つだけが男性からのもの。

簡単にそれぞれの要旨と年齢を並べると、

・その古くさい考えと思いやりの無さが、妻と母との不仲の原因では。(無職 73歳)
・家族だけで抱え込むより介護サービスを利用して。それは介護放棄ではないから。(介護士 38歳)
・仕事に逃げて妻に押しつけようとしている。私の夫も嫁しゅうと問題でそうだった。妻の気持ちを理解する姿勢で解決を。(会社員 41歳)
・嫌がる妻に無理に介護させても母が不快なだけ。母を思うなら施設利用を。(自営業男性 34歳)
・自分の世代では嫁の介護が当たり前で、ひどい仕打ちを受けつつ尽くしたが最後に感謝してもらって苦労が消えた。介護は妻と母親が仲直りするチャンス。(主婦 80歳)
・妻は介護士ではない。どうしても妻にやらせて自分は仕事に行くなら、母親の老後資金から妻に対価を支払うべき。(主婦 29歳)


ここまで読んで、パパッと頭に浮かんだ感想は、

・ただ一人「施設へ」と回答しているのは男性だということ。

・その男性の回答意図は
「嫌がる妻に無理にやらせるよりは、母のために施設へ」であり、
「専業主婦なのだから本来なら妻がやって当たり前」と
「妻が快くやってくれるなら、それでよいが」が前提され、
「嫌がる妻に無理にやらせることも選択肢ではあるが」も前提されている。

・質問者の妻が提示した選択肢は
「息子である夫自身が介護する」と「施設に入れる」のはずなのだけれど、

回答した男性の念頭にある選択肢は
「快くであれ渋々であれ妻にやらせる」と「施設を利用する」2つであって、
「息子である男性自身が介護する」という選択肢はなぜか消えてしまう。

というか、息子が自分で介護するという選択肢をなきものとするために
施設利用という解が持ち出されているのだけど、

「母親自身のための施設利用」と言い換え、
施設利用という決断の原因・理由を妻に、決断の利益を母親に転嫁することで、
夫であり息子である自分は2重に免罪されている。



・女性の回答は、それぞれに
自分の個人的な体験が生々しく反映しているなぁ、ということ。

・質問者の男性にとっては介護の方策の問題でしかないことが、
回答者の女性には、夫婦間の関係性や嫁・姑の関係性の中で受け止められていること。

・姑と不仲で介護は嫌だと言っている女性に、
「介護は姑と仲直りする絶好のチャンス」と押し付けるのも女性……。
こういう人が「私は姑のウンコを素手で受けてきた」と胸を張ったりするのかもなぁ。

・かといって、妻にカネを払えばいいという問題でもないと思うけど、
若い人たちはもうこのくらい割り切れているのだろうか。
母親の老後資金から払え、というのも、ちょっとついていけない。

・それにしても、質問者はもちろん、回答者の誰も
この母親本人は何を望んでいるのか、をまったく問題にしないのね……。

――と思ったら、さすがに心理カウンセラーのアドバイスには含まれていました。

介護の問題は、一人ひとりの生き方や人間関係を反映します。
相談者はまず、母と不仲な妻をこれまでどう支えてきたのか、夫としての自分を振り返るとよいでしょう。妻の「NO」は、単に義母や介護に対してではなく、かねてのつらさを受け止めてくれない夫に愛想を尽かして言っているのかもしれません。
今は介護保険は介護休業などの制度も利用できます。どうしても自宅で妻に介護を頼む必要があるなら、「やって当たり前」ではなく、妻を説得して味方につける努力や工夫が必要です。
社会的な支援をどこまで使い、どこまで家族で対応したいか。仕事を持つ自分には何ができるのか。自分の希望や覚悟を明確にし、誠意を持って妻に伝えましょう。母親の気持ちも忘れてはなりません。誰に介護してほしいか、本人に効くべきです。
妻や親とのこれまでの関係がよくなければ、簡単に結果は出ないでしょう。ですが、ここで真剣に向き合えば、夫婦関係や家族関係を変える好機にもなりますよ。


つまり、介護は家族の問題の一つであり、
家族の問題そのものから「男であることを盾にとって逃げるな」と言っておられるのですね。御意。

具体的な問題については
現実対応と、本人尊重というのは、どちらも的確なアドバイスと思う。

ただ、現実問題、こういう状況で本人の気持ちのありかって、往々にして
「介護も介助もいらない。私はまだ大丈夫」だったりするから
家族にとっては悩ましい、というものじゃないのかなぁ。

そうすると、こういう質問をする男性は
妻にも対応しなければならん、並行して母親にも対応しなければならん、わけで、
そういう手間なことを辛抱強くできるような男なら、
最初からこんな質問をしなければならん状況にはおかれない……とすれば、

結局は心理カウンセラーが指摘する原点に戻るのかも?



それにしても、
次回に向けて回答募集されている相談は40歳男性の

「妻が中年太りをしてきた。妻には綺麗でいてほしい。
本人を傷つけずに痩せてほしいと伝えるには?」

「よろず相談室」の担当者さんに少々問題があるのか、
それとも本当に世の中の男性ってな、この程度なんでしょーか?

私の周りの男性は、もうちょっと平均値が高いように思うんですけど。