英国のケアラー実態調査:成人ケアラーの6割にメンタルヘルスの問題

英国のケアラー支援チャリティ the Carers Trustが
ケアラー実態調査の結果を発表している。

なお、英国のケアラー支援の老舗、the Princess Royal Trust for Carers が
4月1日をもって Crossroads Careと合併し、the Cares Trust となった、とのこと。



そのCarers Trustがこの度行った500人の成人の調査データによると、
成人ケアラーの60%が介護負担から、またその他の責任との両立の困難から
メンタル・ヘルスの問題を抱えていると報告。

身体的な健康問題と精神的な健康問題の両方を経験した人は
4分の1を超え、主な訴えは筋肉痛や不眠、疲労など。

介護によりキャリアが損なわれたという人は、ほとんど60%。

現在、英国では600万人、成人の8人に1人がケアラーで
彼らの無償のケア労働によって、毎年ざっと1190億ポンドの公費が節減されている。

2037年には900万人に達する見込みで、

この調査結果は
英国政府に誰もが受けられる支援サービスの整備を促すものだ、と。

今回の調査では、ケアラーのほとんど3分の2が
カウンセリングもレスパイトも福祉サービスも使ったことがないという結果となったが、
これらのサービスはケアラーの負担とストレス軽減につながることが知られている。

これまでの研究では
ケアラーはその他の人に比べて健康を害する確率が2倍になるし、
約4分の3のケアラーで経済状況が悪化するとのエビデンスがある。

150万人以上のケアラーが60歳以上の高齢で、
介護をこなしながら、自らも支援を必要とする場合が多い。

今回の調査結果を受けて、
野党の陰の保健相などから地域による格差を解消するためにも
ケアラー支援に関する全国レベルのミニマル・スタンダードと予算確保を
呼びかける声が上がっている。

The Carers Trustのトップは
「多くのケアラーは
自分のことをケアラーであるとは意識しないまま
社会にどんな支援があるか気づいていないのです」

またCares UKの幹部からは
成人の社会ケア緊縮策の影響が廻り回ってケアラーに付け回されている、との指摘も。

ケアラーの58%が女性で、42%が男性。

300万人が仕事と介護の両立に苦労しており、
ケアラーの5人に1人が仕事を諦めざるをえなくなっている。

1週間に50時間以上の介護を行っているケアラーは125万人。



The Carers Trust の 当該調査のページは以下。
http://www.carers.org/news/new-research-finds-unpaid-carers-struggle-without-support


その他、関連報道の一部を以下に。




多くのケアラーが
自分はただ家族の世話をしているだけと考えて、特に介護者として自分を捉えず、
そのために社会に存在する支援サービスに繋がれていない問題は

去年の英国のケアラーズ・ウイークでも
「隠れたケアラーを発見する」というキャッチで取り上げられていました ↓
ケアラーの本当の顔: 英国ケアラーズ・ウィーク2011(2011/7/5)


ちなみに日本のケアラー実態調査については ↓
日本のケアラー実態調査(2011/6/14)