「健康な人への無用な検診やめて、資源をケアラーの健康チェックに回せ」と英GP学会

英国のGP学会(RCGP)から、
自分自身のニーズを後回しにし、自分の健康のことを忘れがちなケアラーに
医療資源を回すべき、との声が上がっている。

記事のタイトルと冒頭の1文だけを見ると、
まるで介護者のメンタル・ヘルスの定期チェックだけが言われているみたいで、
なんだ、またも薬への誘導か……? とちょっと警戒心が動くのだけれど、

記事をちゃんと読んでみると
GP学会が言っているのはそういうことでは全然なくて、

ケアラーがストレスから心身の健康を損ないやすく、
介護を続けていれば早晩、自身も病気になる可能性が高いにもかかわらず、
自分がケアしている相手のことで精いっぱいになってしまって、
なかなか健康診断すら受けられずにいる現状と、

それなのにNHSやGPの医療現場では
財政のひっ迫を始め多数の問題が山積していて、
ケアラーの健康管理に目が向けられていないことを
本当に案じての提言。

医療資源は本当に必要とされているところに振り向けられるべきであり、
その「本当に資源を必要としている」中にはケアラーが入っているぞ、と。

「ケアラーが倒れたら、GPは患者を2人失うことになるんですよ。
介護を受けている人も失うし、ケアラーも失うわけだから、
財政の面から言っても、ケアラーには健康でいてもらわないと」と
BBCの番組で、RCGP会長。

財源について問われると、

健康な人をターゲットに、例えば心臓病のような
「起こす確率が低い病気」への検診を実施するなどの

「効果がないことをやるのは、いいかげんにやめて、
時間と資源を最も医療を必要としている人に振り向けなければ。
そして、最も必要としているのはケアラー達です」



高齢者への予防医学はむしろ有害、という指摘は
09年の以下のエントリーその他、いろいろ拾っているし ↓
「現代医学は健康な高齢者を患者にしている」(2009/3/8)

各種健診については
放射線被ばくリスクや誤診リスクの方が
実は検診の利益よりも大きい、という指摘だって、
ここ数年、あちこちから出てきている。
(補遺にいくつも拾っているのですが、
探すのが面倒なのでパス)

要するに、GP学会の会長さんが本当に言いたいのは、
ビッグファーマや医療機器会社に利益がもたらされるようなところばっかりに
限られた資源を無節操に振り向けるのではなく、
ちゃんと本当に患者への利益になるところに使え、ということであり、

経済活性化の問題が保健医療の問題に化けるようなところに
資源を無節操に振り向けるのではなく……ということなんじゃないかしら。