精神障害者への強制中絶・不妊手術命令を、上訴裁判所が破棄(米)
それについては、専門家らからも
近年聞いたこともない、極端すぎるなど批判が相次いでいたが、
17日、上訴裁判所が不適切だとして破棄したとのこと。
近年聞いたこともない、極端すぎるなど批判が相次いでいたが、
17日、上訴裁判所が不適切だとして破棄したとのこと。
「子どもを産む・産まないを自分で決める決定権は基本的なものであり、
意思決定能力が十分でない人を含めて全ての人に当てはめられなければならない」
意思決定能力が十分でない人を含めて全ての人に当てはめられなければならない」
なお女性は現在、妊娠5カ月。
Mary Moeさんは重症の統合失調症と双極性障害を診断されている。
これまでに2回妊娠したことがあり、最初の妊娠は中絶。
その後、症状の悪化による入院を経て2度目の妊娠。
男児が生まれ、Mary Moeさんの両親が育てている。
これまでに2回妊娠したことがあり、最初の妊娠は中絶。
その後、症状の悪化による入院を経て2度目の妊娠。
男児が生まれ、Mary Moeさんの両親が育てている。
去年10月に救急病院を受診した際に妊娠していることが判明。
州のメンタル・ヘルス部局が、両親を代理決定者として強制中絶の許可を求めた。
州のメンタル・ヘルス部局が、両親を代理決定者として強制中絶の許可を求めた。
裁判所が任命した専門家は
Moeさんに自己決定能力があったとしたら中絶しないことを選択するだろうと判断したが、
Moeさんに自己決定能力があったとしたら中絶しないことを選択するだろうと判断したが、
検認裁判所の判事はこれを採用せず、
本人に意思決定能力があったとしたら「幻覚に惑わされないことを選」び、
中絶して治療薬を飲むことを望むはずだと判断。
本人に意思決定能力があったとしたら「幻覚に惑わされないことを選」び、
中絶して治療薬を飲むことを望むはずだと判断。
両親を代理決定者に任命して、
「なだめたりすかしたり、それでだめなら策を弄してでも」
Moeさんを病院へ連れて行って人工妊娠中絶手術を行い、その後、
「このような苦しい事態が将来繰り返されないよう」不妊手術を行うよう命じた。
「なだめたりすかしたり、それでだめなら策を弄してでも」
Moeさんを病院へ連れて行って人工妊娠中絶手術を行い、その後、
「このような苦しい事態が将来繰り返されないよう」不妊手術を行うよう命じた。
今回の上訴裁判所の逆転判決は多くの専門家やアドボケイトに歓迎されているが、
こうしたケースでの同意問題を研究してきたYeshiva大学の Daniel Pollackは
「我々が知っている以上に、こうした命令は出されているのでは」
「我々が知っている以上に、こうした命令は出されているのでは」
興味深いのは
上訴裁判所の差し戻し判断そのものは妥当だと考えつつも、
その理由は間違っている、と述べていること。
上訴裁判所の差し戻し判断そのものは妥当だと考えつつも、
その理由は間違っている、と述べていること。
NC州が過去の強制不妊施策の補償に踏み切ったばかりであることに触れて、
強制不妊の濫用の歴史の重さを語り、問われるべき本質的な問いは実は
Moeのような人は強制不妊でなければセックスを禁じられるのか、だとCaplanはいう。
強制不妊の濫用の歴史の重さを語り、問われるべき本質的な問いは実は
Moeのような人は強制不妊でなければセックスを禁じられるのか、だとCaplanはいう。
しかしセックスをさせないことは不可能である。
中絶についても
重症の人に意思決定能力があった場合の望みや意思を推し量ることは無意味。
重症の人に意思決定能力があった場合の望みや意思を推し量ることは無意味。
既に娘が生んだ子どもを一人育てている貧しい両親が
これ以上娘の心配をしたくないという気持ちも、
これ以上娘が産む子どもを引き受けたくないという気持ちも分かるが、
それで両親に決定権が与えられるというものでもないし、
中絶が解決策だとも思わない。
これ以上娘の心配をしたくないという気持ちも、
これ以上娘が産む子どもを引き受けたくないという気持ちも分かるが、
それで両親に決定権が与えられるというものでもないし、
中絶が解決策だとも思わない。
Moeの治療薬と胎児への影響の問題は、薬を減らす、またはやめればよい、
Moeも両親も子どもを育てられないなら養子に出すことが最善だろう。
Moeも両親も子どもを育てられないなら養子に出すことが最善だろう。
Mary Moeがまた妊娠するようなことは確かに本人の最善の利益ではない。
Moe自身の意思が不明なまま胎児を殺すことは胎児の最善の利益ではない。
このケースには考えるべきことが多々あるが、
その解決策を強制不妊や本人同意のない妊娠中絶に求めるべきではない。
Moe自身の意思が不明なまま胎児を殺すことは胎児の最善の利益ではない。
このケースには考えるべきことが多々あるが、
その解決策を強制不妊や本人同意のない妊娠中絶に求めるべきではない。
世界医師会が「強制不妊は医療の誤用。医療倫理違反、人権侵害」(2011/9/12)
英国の裁判のことを考えてみても、
Mary Moeさんの事件で私が一番気になるのは
当初の裁判を起こしたのが州の保健当局だという点――。
Mary Moeさんの事件で私が一番気になるのは
当初の裁判を起こしたのが州の保健当局だという点――。
NC州のように過去の反省、謝罪と被害者への補償に向かう動きがある一方で、
その動きには、どこか、
世界中に野火のように広がっていく「死の自己決定権」運動に似た
大きな政治的な意図が匂っているような気がする。
世界中に野火のように広がっていく「死の自己決定権」運動に似た
大きな政治的な意図が匂っているような気がする。
【NC州の補償問題関連エントリー】
NC州で、かつての強制不妊事業の犠牲者への補償に向け知事命令(2011/3/21)
NC州の強制不妊事業の犠牲者への補償調査委員会から中間報告書(2011/8/15)
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2011年12月10日の補遺
ノース・カロライナ州の1933-1977年の優生施策の推定7600人への補償問題。人数ではヴァージニアやカリフォルニアの方が多いが、ソーシャルワーカーにまで選別の権限を与えたのはNC州のみ。犠牲者の多くは貧困層やマイノリティの若い女性や知的障害者。
http://www.nytimes.com/2011/12/10/us/redress-weighed-for-forced-sterilizations-in-north-carolina.html?_r=1&nl=todaysheadlines&emc=tha23
http://www.nytimes.com/2011/12/10/us/redress-weighed-for-forced-sterilizations-in-north-carolina.html?_r=1&nl=todaysheadlines&emc=tha23