無益な治療

Rasouli訴訟でカナダ最高裁、医師らの上訴を棄却:治療中止も同意を必要とする治療

当ブログでずっと追いかけてきたRasouli訴訟に 18日、カナダ最高裁から判決が出ました。 「“治療停止”も“治療”だから同意は必要」とOntario上位裁判所(2011/5/17) 「患者に選択や同意させてて医療がやってられるか」Razouli裁判続報(2011/5/19) カナダのRaso…

「重症化する患者を選別する」“患者管理”サービス、IT企業の「ビジネス・チャンス」

メディカル・コントロールと新・優生思想の周辺から出てくるニュースには それまで想像もできなかった形の科学とテクノロジーの応用に仰天すると同時に、 考えてみれば、いろいろ起こっていることの当然の帰結だなぁ、と 改めて納得させられる……ということが…

生命維持を中止するため、自己決定能力ある患者に代理決定者を求めた病院が敗訴(PA州)

生命維持続行を指示する患者本人の意思を無視するため、 意思決定能力のある患者に代理決定者を立てようとした ペンシルベニア州Allentownの St. Luke’s病院が敗訴。 裁判所は病院の訴えを認めなったばかりでなく、 こうした主張を行ったことに対して罰則を…

オレゴン州、メディケイドでガン患者の終末期医療を配給制に

The Oregon Health Education Review Committee(HERC)の会合で、 今年10月から新たなガイドラインが施行されて、 メディケイドのガン患者への治療内容が変わることが決まったとのこと。 前回のガイドライン改定では、 余命が2年以内のガン患者の治療に制限…

「もうできることは何もない」と呼吸器はずされた乳児が自力で呼吸し回復 (英)

髄膜炎の生後3週間の男児の 「無益な」生命維持停止からの回復事例。英国。 いい笑顔ですね~。 http://i.telegraph.co.uk/multimedia/archive/02633/cute_2633714b.jpg Harrison Ellmer君。 健康で生まれたが、その後、病院へ運ばれ、 蘇生の後に髄膜炎と…

Hawking 博士に生命維持中止の提案があったことが自伝映画で明らかに

出版されるや世界中で1000万部を売り上げた “A Brief History of Time”を執筆中の1985年、 Stephen Hawking(現在71歳)はスイスで肺炎を起こした。 「私は重体で、薬でこん睡状態にされ、 そして生命維持装置につながれました。 医師らは私はもう助からない…

DNR指定の人違いで蘇生中止された肺炎のダウン症児、死亡(英)

以下のように 患者にも家族にも知らせない一方的なDNR(蘇生無用)指定が問題になっている英国で、 “終末期”プロトコルの機械的適用で「さっさと脱水・死ぬまで鎮静」(英)(2009/9/10) 肺炎の脳性まひ男性に、家族に知らせずDNR指定(英)(2011/8/3) 高齢者…

一方的な「無益な治療」拒否のアリバイ化するPOLST

POLSTについては 去年、以下のNYTの記事で初めて知ってエントリーに書いた段階で、 こういうことになるんでは……という予感があった。 医師が主導して考えさせ、医師の指示書として書かれる終末期医療の事前指示書POLST(2012/11/26) 現に、この時、私は以下の…

Rasouli訴訟のサニーブルック病院でまたも無益な治療事件

カナダの最高裁で審理中のRasouli事件については、以下に。 「“治療停止”も“治療”だから同意は必要」とOntario上位裁判所(2011/5/17) 「患者に選択や同意させてて医療がやってられるか」Razouli裁判続報(2011/5/19) カナダのRasouli事件、最高裁へ(2011/12/2…

生命維持の差し控えと中止を決めるのは患者の状態よりも、たまたま運ばれたICUの文化

以下の直前2エントリー、 「ガンで死が差し迫った段階を“診断”するツールは未だ存在しない」として、そこで起こる現象の整理を試みた調査(2013/5/22) 新城拓也医師「現時点では医師による終末期の判定は占いの域」(2013/5/23) に大きく関連しているという気…

「ガンで死が差し迫った段階を“診断”するツールは未だ存在しない」として、そこで起こる現象の整理を試みた調査

16日の補遺のトップに拾った論文を kar*_*n28さんがゲット・シェアしてくださったので、読んでみた。 (ただ使用されているDelphiテクニックなるものがさっぱりわからず メソッドの個所に書かれた詳細はパスしたため、理解できたのは概要のみです) 論文タイ…

へイスティング・センターが生命維持と終末期医療のガイドラインを改定

へイスティング・センターのガイドラインについては、 どこかで言及されているのを読んだ記憶があるかなぁ……という程度だし、 Ashley事件からこちらのあれこれから、へースティング・センター自体に対しても、 思うことはいろいろあるのだけれど、 Thaddeus …

「アルツハイマーで死ぬよりも尊厳がある」と、ヘビに噛まれた父親の解毒剤を娘らが拒否(米)

Daily Mailがソースみたいなのだけれど、 どこのサイトからもMailのリンクが効かなくなっているので、 こちらのサイトから。 アルツハイマー病を患っていたフロリダ在住のRichard Floraさん(76)。 娘のEllen Wilsonさんの家でガラガラヘビ(Eastern Diamon…

生命維持の中止に同意しないなら、裁判所に訴えて法定代理人を交代

Russel Border さんは12年3月に Reading Hospital and Medical CenterのICUに入院。 ICUの患者として人工呼吸器その他の延命治療が施されたが、 担当医らはその間に法廷代理人のSharon Grayさんに連絡し、 Borderさんの状態はターミナルで無益なので、 生命…

オクラホマ州に、QOL根拠の一方的な生命維持拒否を禁じる法律

26日金曜日、オクラホマ州に 患者サイドが希望する生命維持治療をQOLを根拠に一方的に拒否することを 医療職に禁じる法律が成立。 Thaddeus Popeによると、 これまでに同様の法律ができている州は アイダホ、ニューヨークなど。 Popeはこうした州を “red lig…

シンガー、認知症の母親の医療について「自分の母となると違う」(1999)

前に、ピーター・シンガーが ストーニーブルック大学の認知障害カンファで、アシュリー事件に言及したり、 エヴァ・キテイが障害のある娘セーシャが暮らすコミュニティへの見学ツアーに誘ったのを 「そんなのを見て何が学べるのか」と断ったりした際に(詳細…

Not Dead YetからNCDへ「無益な治療」論・法に対する懸念コメント

大統領から任命された15人のチームから成り、 大統領、議会その他連邦機関への諮問を行う連邦政府の機関、 National Council on Disabilityに対して、 Not Dead Yetのトップ、Dian Colemanが電話で、 全米に広がりつつある「無益な治療」論による一方的な治…

Wilkinson&Savulescuの「無益な治療」論文(11)を読んでみた

“Knowing when to stop: futility in the ICU” Dominic J. C. Wilkinson and Julian Savulescu Current Opinion in Anesthesiology, 2011, 24:160-165 これも、前のエントリーで読んだ論文と同じく、 落ちていく先はコスト論。 無益な治療論争は定義が一定…

Wilkinsonの「無益な治療」論文(11年)を読んでみた

A Life Worth Giving? The Threshold for Permissible Withdrawal of Life Support From Disabled Newborn Infants Dominic James Wilkinson Am J Bioeth, 2011 February; 11(2): 20-32 【関連エントリー】 「“生きるに値する命”でも死なせてもOK」と、Savle…

CA州で新たな「無益な治療」事件

Kessel Marciasさんは数ヶ月前に メキシコのTijuanaで痩身手術(脂肪吸引? 胃のバンディング?)を受けた。 1月30日になって、血を吐いたので、 その時の担当医に電話をすると、 「それは正常なことだし、治せるから連れてこい」と言われた。 そして、Tijua…

「米国の救命優先ルールの轍を踏まず、英国医師はDNR決定権守れ」

英国ではこのところ 患者も家族も知らない内に一方的に蘇生不要(DNR指定)がされるケースが続発して 訴訟になったり、大きな論争になっている。 終末期ケアのプロトコルLCPが機械的に高齢者に適用されている問題も 政府が調査に乗り出す騒ぎにまで発展して…

Betancourt訴訟上訴審の判決文を読む:植物状態からの治療中止を認めず、判断の一般化も回避

前のエントリーでとりまとめてみた英国のBland事件と同様に、 米国でも植物状態とされた患者からの生命維持の停止が問題となったBetancourt訴訟。 拙ブログでもお馴染みのNot Dead Yet、ADAPTやThaddeus Popeなどが 「法廷の友」として意見陳述してもいる事…

Tony Bland訴訟(英1993):植物状態患者から栄養と水分の停止を認める

トニー・ブランド事件(1993)については 以下をはじめ、いくつかのエントリーで触れており、 ロンドンの保護裁判所、植物状態の女性の栄養と水分停止を認める:Tony Bland判決(1993)基準に(2011/8/4) タイトルにあるように、 その後の植物状態の患者へ…

最小意識状態の患者への生命維持差し控えを上訴裁が認める(英)

昨年12月に以下の判決が出た訴訟の続報。 裁判所、最小意識状態での「無益な治療」拒否を認めず:David James事件(英)(2012/12/13) 英国の上訴裁判所が下級裁判所の判断を覆し、 治療続行が「無益」な場合には 医師には生命維持治療の差し控えが認められる…

同意なく生命維持停止された、と遺族がナーシング・ホームの医師を訴える(米)

そういえば、一時に比べて、 このところ、あまり聞かなくなった「無益な治療」訴訟ですが、 久々に聞いたと思ったら、ちょっとパターンが変わった――? バルティモアのプロ野球チームでアンパイヤとして有名だったErnie Tylerさんの遺族が、 同意してもいない…

Wilkinsonの新刊は、障害の可能性理由による小児の「無益な治療」論

Dominic・Wilkinsonって、Savulescuと一緒に何度も取り上げてきたので、 つい 「Savulescuの相方」として生命倫理学者なんだとばかり思っていて、 この人が小児科医でもあるのだということに 恥ずかしながら、今まで気づいていませんでした。 なんか、ひぇぇ…

Rasouli事件の病院で新たな「無益な治療」訴訟:「救命できても自立生活は無理だから生命維持停止を」

カナダで脳卒中で意識不明となった男性Dennis Dayeさん(65)を巡って 無益な治療訴訟。 Dayeさんは先月10日、 大きな脳卒中を起こしてSunnybrook Health Science Centerに運ばれ、 脳の浮腫のために頭蓋骨の多くの部分を取り覗く手術を受けた。 主治医のF…

裁判所、最少意識状態での「無益な治療」拒否を認めず:David James事件(英)

このニュース、 治療の差し控えが認められなかったという点よりも、 植物状態から最少意識状態まで「無益な治療」論の対象は拡大してきているのか、という点で戦慄……。 David Jamesさん(68)は5月に便秘で入院し、肺炎を起こして重症に。 Jamesさんはこれま…

カナダの“無益な治療”訴訟で「Owen教授のアセスメントを」

カナダのバンクーバーで 米国のシャイボ事件と似たような構図の訴訟が起きているのだけれど、 抵抗している家族から 当ブログでも追いかけてきたAdrian Owen教授の被験者に、という希望が出て Owen教授側も受け入れそうな気配。 妻から栄養と水分の停止を求…

デンマークで回復事例 不安からドナー登録取り下げる人も

1ケ月前の記事ですが、 またもデンマークで「無益な治療」停止+臓器提供が決められた患者の回復事例。 去年10月、車の事故で大けがを負ったCarina Melchoirさんは Aarhus 病院に運ばれて3日後に脳の活動が消え始めたため、 医師らが治療の停止を家族に相談…