無益な治療

医師が主導して考えさせ、医師の指示書として書かれる終末期医療の事前指示書POLST

最近ちょこちょこ目にするので気になっていたPOLSTを NYTの社説が取り上げている。 POLSTとは、 Physician Orders for Life Sustaining Treatmentのことで、 生命維持治療に関する医師の指示書。 医師が主導して患者の終末期医療について話し合いをして 終末…

LCPの機会的適用でNHSが調査に

本来は丁寧な終末期のケアのパスであるはずのリヴァプール・ケア・パスウェイ(LCP)が 英国の医療現場で「さっさと脱水・死ぬまで鎮静」という 機会的な高齢者ケアのツールになり果てているという問題は、 当ブログでも以下のエントリーなどで折に触れて追…

「ダウン症だから」と本人にも家族にも無断でDNR指定(英)

英国で、50代と見られるダウン症の男性AWAさん(仮名)が、 入院した2つの病院で立てつづけに、障害を理由に、 本人にも家族にも無断で、DNR(蘇生無用)指定にされて、 男性の親族が、 2つ目の病院を訴えている。 AWAさんは両親が50年間世話をした後に 2010…

「最少意識状態は植物状態よりもマシか? 否。カネかかるだけ」とSavulescuとWilkinson

ここ数年、脳死や植物状態からの回復事例が相次いだり、 実は最少意識状態だったと植物状態の誤診ケースが次々に明らかになっています。 そうした事件それぞれの詳細は、以下のエントリーにリンク一覧があります。 Hassan Rasouliさん、「植物状態」から「最…

「長い心肺蘇生は無益」を否定する調査結果

入院中の患者が心停止になった時に、 どれだけの長さ心肺蘇生(CPR)を続けるべきかについては 明確なエビデンスベースのガイドラインはなく、 これまでは一般に、長く続けることは それで蘇生できても患者が永続的な神経障害を負う確率が高いために無益であ…

英国の終末期パスLCPの機会的適用問題 続報

先月、以下のエントリーで取り上げた LCPの機会的適用問題の続報がありました。 「NHSは終末期パスの機会的適用で高齢患者を殺している」と英国の大物医師(2012/6/24) この告発で 本来は緩和ケアのパスであるリヴァプール・ケア・パスウェイ(LCP)が 機械的…

障害者への医療の切り捨て実態 7例 (米)

アシュリー事件で詳細な調査を行ったWPAS(現DRW)を含む 全米の障害者の人権擁護ネットワーク、NDRNから “アシュリー療法”、強制不妊、治療の一方的停止と差し控えを批判する 大部の報告書が出たことと、その冒頭の批判声明について、 以下のエントリーで紹…

「NHSは終末期パスの機会的適用で高齢患者を殺している」と英国の大物医師

East Kent Hospitals の神経科部長で、Kent大学の臨床神経科学科教授の Patric Pullicino氏が、ロンドンでの医師会講演で 現在、英国で病院またはNHSの医療下で亡くなる人は年間45万人おり、 そのうちの29%に当たる13万人がリヴァプール・ケア・パスウェイ(…

加藤太喜子「『医学的無益』はいかなる場面で有効な概念か」メモ

「生命倫理」VOL.21 NO.1 2011年9月に掲載の加藤太喜子さんの論文 「『医学的無益』はいかなる場面で有効な概念か」を、 とても興味深く読んだ。 シュナイダーマン、ヤングナー、ウィルソン、バーナット、ルビン、 トゥルオグ、バゲーリ、ブレット、ラン…

ケアホーム入所者に無断でDNR指定、NHSトラストが家族に謝罪(英)

英国で一方的なDNR指定が問題化してきていることについては、 去年1年間だけでも、以下のエントリーで取り上げていますが ↓ 肺炎の脳性まひ男性に、家族に知らせずDNR指定(英)(2011/8/3) 「本人にも家族にも知らせず“蘇生無用”」はやめて一律のガイドライ…

浅井篤氏ら「医師の無益性判断、日本の患者は受け入れるか?」と英語論文

ピーター・シンガーの翻訳などがある功利主義の生命倫理学者、浅井篤氏が、 浅井研究室の門岡康弘氏、東京医療センターの尾藤誠司氏との共著で 以下の論文を発表。 門岡氏については、こちらに ⇒http://qq.kumanichi.com/medical/2009/04/post-236.php 尾藤…

Hassan Rasouliさん、「植物状態」から「最少意識状態」へ診断変わる

以下のエントリーやいくつかの補遺で追いかけてきたカナダのRasouli事件の続報。 「“治療停止”も“治療”だから同意は必要」とOntario上位裁判所(2011/5/17) 「患者に選択や同意させてて医療がやってられるか」Razouli裁判続報(2011/5/19) カナダのRasouli事件…

「医師は患者本人の同意なしにDNR指定してもよいか」Bernat論文

昨日の補遺で拾ったNeurology TodayのBernat論文 「脳神経科医は患者本人の同意なしにDNR指定してもよいか?」。 Ask the Neuroethicist: Can a Neurologist Write a DNR Order on a Terminally Ill Patients Without Consent? Bernat, James L. MD Neurolog…

患者の意に反して呼吸器止めた豪クイーンズランドの医師、調査へ

豪クイーンズランド、ゴールド・コーストの医師が 患者や家族の医師に反して人工呼吸器を事実上止めたとして、 調査を受けている。 患者はターミナル期の高齢の女性で、 まだ死にたくない、死ぬしかないにしても、せめてもう数日、 家族との時間を持ってから…

フランスの治療差し控えと緩和ケアに関する日経メディカル記事

昨日“無益な治療”差し控えは義務へ:「無酸素脳症新生児に蘇生25分はやり過ぎ」病院に賠償命令(仏)というエントリーで 末尾に昨年12月27日の日経メディカルのフランスに関する記事をリンクしたのですが、 会員登録した人でなければ読めないので。(文字数…

“無益な治療”差し控えは義務へ:「無酸素脳症新生児に蘇生25分はやり過ぎ」病院に賠償命令(仏)

“無益な治療”論、フランスでは 「一方的に拒否することは許されるか」とか 「どういう状況なやめてもよいか」という問題から 「どういう状況ならやめなければならないか」という問題になりつつあるらしい。 Thaddeus Mason Popeの以下の2つのエントリー情報…

「医療資源の公平な分配とは、必要になった人が高額でも必要な医療を受けられること」とSmith

米国医師会誌に Douglas B. White医師とお馴染み「無益な治療ブログ」の法学者Thaddeus M. Popeが 「無益な治療争議は裁判所へ」と主張する論文を書いたとのこと。 タイトルは”the Courts, Futility, and the Ends of Medicine”。 それに対してWesley Smith…

ついに出た「重症脳性まひ児の蘇生、本人の最善の利益にならず」:アイルランド高裁

いつか“無益な治療”論はここへ来るに違いないという予感があって、 私はずっと恐れていたんだけれど、 来た。ついに―――。 アイルランドの高等裁判所で重症の脳性まひ児に蘇生無用の判決が出ている。 判決文そのものを読まないと何とも言えないところもあるも…

米国内科学会の倫理マニュアル “しみったれ医療”を推奨

米国内科学会誌1月3日号の補足として出された倫理マニュアル第6版。 わざわざ「倹約しつつ(parsimonious)」という文言を使用して コスト・パフォーマンスを意識した“しみったれ医療”を説いているらしい。 医師の第一の義務は患者に対するものであると断り…

2011年のまとめ:無益な治療

主要な“無益な治療”訴訟はやはり今年もカナダで起きていて、 【Maraachli事件】 1歳児の「無益な治療」で両親が敗訴(カナダ)(2011/2/24) 2011年3月1日の補遺(2011/3/1) 2011年3月5日の補遺(2011/3/5) 呼吸器外し命じられたカナダのJoseph君、セントルイ…

カナダのRasouli事件、最高裁へ

当ブログで追いかけてきたRasouli“無益な治療”事件で、 2011年6月の「治療の停止も治療である以上、同意は必要」との上訴裁判所の判決に対して 医師らの上訴が認められ、最高裁へ――。 お馴染み「無益な治療ブログ」のThaddeus Popeは 「世界で最も重大な意味…

日本の終末期医療めぐり、またも「欧米では」論法

今朝の朝日新聞の声欄のトップに 京都の医師の方の「人工栄養 国民的議論が必要」というタイトルの投稿があった。 5日に報じられた厚労省研究班の人工栄養の指針案をめぐって、 出てくるだろうと予想された通りの内容なのだけれど、 こういう話になるとイヤ…

Truogの「無益な治療」講演(2011年11月10日) 後

(前のエントリーの続きです) Truogは講演の後半、 自らが所属するボストン子ども病院の無益な治療をめぐる方針と、 テキサスの一方的な無益な治療法(正確には事前指示法)とを比較検討していきます。 例として言及されているのは 当ブログでも取り上げた…

Truogの「無益な治療」講演(2011年11月10日) 前

マサチューセッツ大学医学部のGrand Rounds(学内研修?)で 11月10日にRobert Truogが行った“治療の無益性”をめぐる講演。 タイトルは “Medical Futility: When is Enough Enough?” 私なりの勝手な解釈で和訳すると、 治療の無益性:どこまでいけば「もうそ…

利益が全くない心肺蘇生を親が諦めないケースでの倫理委の検討過程

前のエントリーの続きです。 ② Katherineのケース ケースの概要は以下。 妊娠32週目の出産。1680グラム。 早産による呼吸障害で 生後4日目まで人工呼吸器、その後4日間鼻チューブ。 その後も夜間無呼吸症候群。腸ろうによる栄養摂取。 生後25日目に腹腔内出…

トリソミー13の新生児に心臓手術を認めた倫理委の検討過程 2

前のエントリーの続きです。 Daniel君のケースでの心臓手術について検討された利益は、 ① 延命。 ② 長らえた命を生きる間に本人が感じる喜び ③ VSDで死ぬと苦しい死になるので、その軽減になる。 ④ 親にとって息子が生きることは喜び ⑤ 2人の子どもにとって…

トリソミー13の新生児に心臓手術を認めた倫理委の検討過程 1

17日の補遺で拾ったMedical Futility Blogの記事で紹介されていた NICUでの“無益な治療”判断において倫理委の役割を提唱する論文。 The role of a pediatric ethics committee in the newborn intensive care unit M.R. Mercurio, Department of Pediatric…

カナダ王立協会報告書、自殺幇助は「自己決定」で一方的”無益な治療”停止には「教育」のダブルスタンダード

昨日のエントリーで紹介したカナダ王立協会の報告書については 自殺幇助と自発的安楽死の合法化提言の部分でメディアが大騒ぎしている中、 さすが「無益な治療ブログ」(正確には「医学的無益性ブログ」だった)のPopeが この報告書の一方的な無益な治療停止…

高齢者には食事介助も水分補給もナースコールもなし、カルテには家族も知らない「蘇生無用」……英国の医療

患者の立場から英国の医療の質の向上に向けて活動するチャリティ The Patients Associationから、患者や家族の生の声を拾った3つ目の報告書が出ている。 We’ve been listening, have you been learning? The Patients Association 報告書冒頭の、チャリティ…

高齢者の入院時にカルテに「蘇生無用」ルーティーンで(英)

英国では病院が患者を蘇生無用(DNR/DNAR)指定する際に、 必ずしも家族への通知をすることが義務付けられていないことについて、 以下のエントリーなどで追いかけてきましたが、 肺炎の脳性まひ男性に、家族に知らせずDNR指定(英)(2011/8/3) 「本人にも家…