LCPの機会的適用でNHSが調査に

本来は丁寧な終末期のケアのパスであるはずのリヴァプール・ケア・パスウェイ(LCP)が
英国の医療現場で「さっさと脱水・死ぬまで鎮静」という
機会的な高齢者ケアのツールになり果てているという問題は、
当ブログでも以下のエントリーなどで折に触れて追いかけてきました。



つい先日も
22もの医学関連団体が連名でLCPは患者が無益な治療で苦しまないために
考案されたパスである、とするステートメントの情報を拾ったばかり。

これについては10月23日の補遺で拾って、以下のように書いています。

英国で丁寧な看取りのプロトコルであるはずのLCPが機械的な鎮静と脱水に繋がっていると指摘されている問題で、メディアにはLCPそのものへの誤解があふれているとして、本来のLCPについてのコンセンサス・ステートメントが9月に出されていた。:パスそのものが悪いわけじゃない。それが機械的に運用されていくことで現場スタッフが思考停止に陥ることの問題。そこには社会に「高齢者や重症障害者の命は丁寧な治療にも、救命にも値しない」という価値意識が共有され広がっていることが関係している。それが本当の問題。
http://ja.scribd.com/doc/110654494/Consensus-Statement-Liverpool-Care-Pathway-for-the-Dying-Patient


Telegraphと一緒にLCPを問題視してキャンペーンを張ってきたDialy Mailは社説で、

When well over 100,000 are dying on the LCP each year, the suspicion inevitably arises that the pathway is being used to hasten death and free up beds.

毎年LCPで10万人をはるかに超える人が死んでいるとなれば、患者の死を早めてベッドを開けるためにLCPが使われているのではないかとの疑惑が出てくるのは避けがたい。


また、上記6月24日のエントリーで取り上げた発言をしている
神経科医のPatric Pullicino医師は

It is self-evident that stopping fluids whilst giving narcotics and sedatives hastens death… The median time to death on the Liverpool Care Pathway is now 29 hours. Statistics show that even patients with terminal cancer and a poor prognosis may survive months or more if not put on the LCP.

麻薬と鎮静剤を投与すると同時に水分の供給を中止すると死が早まるのは自明であり……LCPで死に至る時間の中間値は今や29時間である。統計からは、ターミナルながんで予後がよくない患者ですら、LCPを適用されなければ何カ月も、場合によってはそれ以上も生きているというのに。


そこで、ついにNHSがこの問題で調査に乗り出し、
LCPを適用されて満足な処遇を受けられないで死んだとされる患者の家族に
聞き取り調査を行う、とのこと。

医療現場からは反発の声も。




【11月4日追記 続報】
英国で問題になっているLCPの機会的運用、一方的なDNR指定で、保健大臣が医師らに患者と家族との話し合いを求める方向で新たな義務を医師らに課すことに。
http://medicalfutility.blogspot.jp/2012/11/england-to-require-clinicians-to-write.html

【11月28日追記】続報あり
http://www.bbc.co.uk/news/health-20503932