カナダ王立協会報告書、自殺幇助は「自己決定」で一方的”無益な治療”停止には「教育」のダブルスタンダード

昨日のエントリーで紹介したカナダ王立協会の報告書については
自殺幇助と自発的安楽死の合法化提言の部分でメディアが大騒ぎしている中、

さすが「無益な治療ブログ」(正確には「医学的無益性ブログ」だった)のPopeが
この報告書の一方的な無益な治療停止に関する部分を取りまとめてくれている。

Royal Society of Canada Report Addresses Medical Futility
Medical Futility Blog, November 15, 2011


現在のように個々のケースを裁判所が判断するのも適当とは思えず、
法的な手続きで決着をつけることが必要と思われるものの、

問題の複雑さからしても委員会の性格からも、
この委員会には決着をつけるだけの具体的な提言はできない、として、

延命の可能性のある治療を一方的に中止または差し控えることをめぐる論争について
委員会としては以下の3点を提言している。
(引用は上記リンクにありますが、ここでは文言の通りではありません)。

1. 医療職が一方的に差し控えまたは中止できる法的条件を州政府が明記すべき。

2. 一方的な差し控えまたは中止をめぐる医療職の義務について、
医学教育機関は教育を徹底すべき。

3.一方的な差し控えまたは中止に関する自分の法的な立場を理解し、
自らや家族のよきアドボケイトとして医療職と良好なコミュニケーションが取れるように、
州政府は州民を教育すべき。


……てことは、
「延命」ではなく「延命になる可能性のある」治療まで
医療職が「一方的に」差し控えたり中止することそのものは認める前提――。

でも、よ、

自殺幇助と自発的安楽死を「自己決定権」に基づいて認める立場と、
「一方的な」治療の差し控えまたは中止を医療職に認める立場とは
この委員会にとっては一体どういうふうに整合するんだろう……?

なんか、さぁ、これって、

「自己決定権」を根拠にできないところでは、「教育」によって、
いってみれば「自己納得」・「自己決定もどき」へと国民を誘導していけば、
「一方的」の部分も、まぁ、みんな誤魔化されてくれるんじゃない……みたいな戦略?

「事前指示書」という仕掛けが
そこの溝をなんとな~く見えなくしてくれそうだし……って?


なお、以下の記事によると、報告書が提起した問題は
自殺幇助の合法化と一方的な無益な治療停止の問題の他には
主として以下の2点。

・カナダ国民に事前指示書を書いておくよう教育を徹底し、
患者の療養を通じて事前指示書が有効に機能するよう現場のシステムを整備すること。

・緩和ケアの患者のセデーションは合法ではあるものの、
その対象となる苦痛の種類や範囲があいまいで、
患者自身の同意についても明確ではなく、
患者の意思が不明な場合に家族と医療の間に意見の相違があると問題化する。

Four issues raised by the end-of-life report
The Glove and Mail, November 15, 2011