米国初のヒト胚幹細胞による脊損治療実験、突然の中止

Obama大統領が「科学の力で医療費削減を」と就任演説をした途端に始まった
米国で初めてのヒトでの胚幹細胞による脊損治療実験について、
以下のエントリーで拾いましたが、


そこに、今回、突然の中止という続報――。


Geron社の発表によると、
現在の資金不足と経済状況の不透明の中、
ガン治療薬開発に集中するために下されたビジネスとしての決定だといい、

それを裏付けるように、
同社は同時に常勤社員の38割のリストラも発表。

なお、新たな患者に治療することはないが
これまでに治療した4人の患者については今後もフォローしつつ、
こちらの研究の技術面でも資金面でもパートナーを探していくとはいうものの、

ヒト胚の廃棄を前提にした技術の倫理問題や今だ動物実験も十分でないとの安全性懸念、また脳損傷から2週間以内に治療開始という治験の条件について
受傷直後の患者が冷静に参加を決断できるのかという疑問もある中、

米国で初めて承認された同種の治験には
幹細胞治療研究そのものの今後の命運がかかるだけに
心臓病、ガン、アルツハイマーやマヒなどに大きなポテンシャルを謳う
幹細胞治療の研究業界界隈では、大きな失望の声が上がっている。

クリストファー・リーブ財団の幹部はカンカン。

「ったく腹が立つわ、胸糞が悪いわ。
みんなの希望を煽っておいてカネがないからやめるなんて悪党のやることだ。
これでは我々は実験室のマウス扱いじゃないか」

米国ではもう1つ、眼病の幹細胞治療の治験も行われており、
こちらはUCLA Jules Stein Eye Instituteが不治の眼病患者2人に実施しているとのこと。



素人だからなのか、
なんとなく疑問に感じるのは、

確かにがん治療開発は科学とテクノのマーケット創設のトレンドで
それなりに国際競争が熾烈になっているというのは想像がつくのだけど、

でも、本当に副作用は今のところ出ていないというなら、
将来的にはオンボロ儲けが確実な分野なわけですよね、これって?

しかも米国初で、脊損治療ではGeron社だけがやっているわけだから
一人勝ちが保障されているようなもので?

それで「経営的判断でがん治療薬に専念したいから撤退」……?

それとも、
その筋のハーバードの研究者のコメントで「幹細胞は貴重な研究だが、
将来有望な科学技術を新しい治療法にしていくのは長くて骨の折れるプロセス。
途中で何度も挫折はつきもの」というのを読むと、

この世界的な不況の中、そろそろ
「命を救う技術」「難病に新たな治療の可能性」というだけで
実験につぎ込まれるカネが正当化される……という時代じゃなくなってきた……ということ?

いや、でも、それでは新たなマーケット創出ができなくならない?






アップする際、
リスクに関する興味深い記事を書いてくださっているブログがあったので
以下にTBさせていただきました。