「NHSは終末期パスの機会的適用で高齢患者を殺している」と英国の大物医師

East Kent Hospitals の神経科部長で、Kent大学の臨床神経科学科教授の
Patric Pullicino氏が、ロンドンでの医師会講演で

現在、英国で病院またはNHSの医療下で亡くなる人は年間45万人おり、
そのうちの29%に当たる13万人がリヴァプール・ケア・パスウェイ(LCP)と呼ばれる
終末期ケアのパスの適応となっているが、

「LCPをスタートさせるだけのエビデンスがなく、
LCPはケアのパスウェイというよりも死の幇助のパスウェイになっている」

「まだかなり長く生きられるはずの多くの高齢患者が、
LCPによって殺されているのではないか」

「患者は状態の適切な分析もなしにLCPを始められていることが多い」

などと語り、その要因として、
ベッドを早く空けて回転させたいことと、
辱そうなど、手のかかる高齢患者への看護の手間を省きたいことの2点があるのでは、と。

また、一応、死が数時間後または数日後に迫っているなどと言われるが
それらは「明らかに誤り」であり、

QOLや予後に関する担当医やチーム内の個人的な見解が作用して
患者がLCPの対象とされている、とも。

Pullicino医師自身、
てんかん発作がある71歳の患者が肺炎で救急搬送されてきた際に、
週末のピンチヒッターで勤務していた医師が本人や家族の同意もなしにLCPを決めて、
モルヒネを投与していたので、月曜日にそれに気づいて
周囲の抵抗を受けながらも撤回させた経験がある、という。

その男性は治療によってけいれん発作が治まり、4週間後に退院して家に帰り、
その後1年2カ月後に別の病院に運ばれて、やはりLCPの適用となり死亡。

他にも、3年前に、ロンドン大学の老年医療科の名誉教授 Peter Millard氏、
St. Luke病院がんセンターの緩和ケア部長、Peter Hargreaves氏などからも、
「裏口安楽死」の警告の声があり、

弱者の治療(の判断?)に経済要因が持ち込まれている危険性が指摘されていた、とのこと。



09年に、現場医師らがDaily Telegraph紙に内部告発の手紙を書いたのも、
これと全く同じ、LCPが高齢者であれば機械的に適用されている、との指摘でした ↓



3年前に出た医療現場でのLCP適用への批判とは、
この辺りのことのように思われます。

しかし、この記事の1か所には
「Pullicino医師は、その71歳の男性患者がその後に生きた14カ月は
NHSと納税者への大きなコストによって賄われたものだと認めざるをえなかった」という
下りがあるので、その場でそうした質問(突っ込み?)があったものと思われ、

英国でも米国同様に“無益な治療”論は
既に当該患者に対する治療そのものの無益性よりも、
社会がそのコストを容認するか否かという意味での無益性へとシフトしている……ということでは?