ミュウの試行錯誤

ミュウはもう何度か書いてきたように
おかあさんといっしょ ファミリーコンサート」が3度のメシよりも好きなヤツで、
家にいる限り、午前1回、午後1回のコンサートDVDが決して欠かせぬ日課となる。

その時には親が「○○(タイトル)にする?」と聞くのに対して
「ハ(Yes)」または首振り(NO)で答えて選んだり、

時には、ほぼ全巻を取りそろえてある棚のあたりを指さして、
「他のものを出してこい」と要求することもある。

そして、ずらっと目の前に並べられたケースの中から
「あれにしようかな、あ、でもこれもいいし……きゃ~、ど~しよ~」みたいに
実に楽しそうに目移りしつつ、しかし十分に悩ましげに、時間をかけて選んでいく。

面倒くさくなった親が適当なのを勝手にかけてしまったりすると、
オープニングの音楽がチャラッチャラ~と流れ始めたところで、
「これは違うっ!」と頑強な「ダメ出し」を食らう。

ケースからも最初の曲の出だしからも分かるほど、
ミュウはそれぞれをちゃんと判別しており、その時々の「選好」というものがあるんである。

そういえば、DVDを見ている間は
そのケースをずっと手に持っているのが子どもの頃からの彼女のルールだった。

手が大変不器用なので
1時間ちょっとの視聴の間には
何度かケースがずれて上手に持てなくなる時があるのだけれど、

そういう時、ミュウはいったん別の手に持ち替えたり、または
手にしたケースを自分のお腹に押しあて、腹でケースを支えつつ握り直す……という芸当を見せる。

それは、子どもの頃からずっとケースを持ったままDVDを楽しんできて、
その過程で、ケースをとり落としそうになるたびに「試行錯誤」する中から
少しずつ見つけ出してきた修正方法なんだなぁ……ということを、

この週末に、いつものように
なんてことなく、お腹を使ってケースを持ち替えている娘を見て、改めて考えた。

一般に「ものを考える」能力があるどころか、
「何も分からない」と思われているらしい重症のウチの娘が

手にしているものを持ちにくくなってきたら
お腹に押し当てて支えておけば、落とさずに握り直すことができる」と
試行錯誤を重ねながら、その方法を獲得した……ということは、
彼女が「思考している」ということなんでは……?


そういえば、数年前までミュウのおもちゃの一つに
親が使い終わった携帯電話が含まれていて、
片手で握ったまま、その親指だけでキーを押しては
画面が変わるのを楽しんでいたのだけれど、

半年ばかりそうやって遊んでいるうちに、ミュウはいつのまにか
親指の指先だけではなく、外に反らせた時の関節の内側や、
親指の付け根の出っ張りでも、握りこんだ携帯のキーを押すことができるようになっていた。

広範なキーを押すために
これもまた試行錯誤で獲得した彼女なりの「工夫」であり「わざ」のようだった。

時々、いつのまにか握る場所まで変わっていることがあるので、

注意して見ていると、
いったん別の手に持ち替えてから握り直すやり方のほかに、
時々ほんの一瞬だけ、携帯電話を握りこんでいる手をぱっと離すことがある。

その一瞬に、ほんの僅かに上または下に携帯を移動させて
次に握る場所を微妙に調節していることが判明した。

こいつは、本当はかなり頭がいいんではないか……。

私としては、つい、そう思ってしまうのは、
やっぱり、ただの親バカなんだろうか。

実際のところ、
この子たちの頭の中でどれほどの「思考」が行われているか
本当は誰にもわからないではないか……と、私は思うのだけれど。