「長い心肺蘇生は無益」を否定する調査結果

入院中の患者が心停止になった時に、
どれだけの長さ心肺蘇生(CPR)を続けるべきかについては
明確なエビデンスベースのガイドラインはなく、

これまでは一般に、長く続けることは
それで蘇生できても患者が永続的な神経障害を負う確率が高いために無益である、と
考えられてきたが、

Lancetに発表された
同種としてはこれまでで最大規模で、唯一CPRの長さと救命率をリンクさせた調査により、

平均して現在行われているよりも9分間長く続けるほうが
救命率が良い、との結果が出ている。

The American Heart Associationの世界最大のデータベースから
2000年から2008年までに米国435の病院で心停止を起こした64339人の患者を特定。

救急救命室の患者と、治療中に心停止に至った患者を除き、
通常病棟とICUの成人入院患者を対象とした。

病院によりCPR続行の時間には
最短の病院では中央値で16分、
最長の病院では中央値が25分というバラつきがあり、その差は50%以上。

最長の病院群で患者が救命され退院できる確率が
最短の病院群よりも12%上がることが分かった。

また神経機能は、CPRの長さを問わず、だいたい同じだった。

時間の延長で最も利益があるのは
除細動に反応しない症状の患者。

CPRの時間が長くなることで
医師らが状況分析ができ、様々な介入を試みられるからではないか、と著者ら。

論文にコメンタリーを書いた英国NHSの医師は
「30分以上もCPRで血流を確保し酸素を送り続けて、なお救命できて、
それだけではなく神経的にも良い状態で救命できる患者がいる可能性がある、ということ」

また別の医師からは
終末期の患者の場合や、その他の理由で長くCPRを行うことが不適切なケースもある、との指摘。

論文著者らも、
どの患者でもCPRを今より長くやった方がいいということではない、と。