障害者への医療の切り捨て実態 7例 (米)
アシュリー事件で詳細な調査を行ったWPAS(現DRW)を含む
全米の障害者の人権擁護ネットワーク、NDRNから
“アシュリー療法”、強制不妊、治療の一方的停止と差し控えを批判する
大部の報告書が出たことと、その冒頭の批判声明について、
以下のエントリーで紹介してきました。
全米の障害者の人権擁護ネットワーク、NDRNから
“アシュリー療法”、強制不妊、治療の一方的停止と差し控えを批判する
大部の報告書が出たことと、その冒頭の批判声明について、
以下のエントリーで紹介してきました。
この報告書を読んで、最も驚き、心が騒いだのは
いわゆる“無益な治療”論による障害児・者の医療の切り捨てが
既にここまで来ているのか……という事例の数々。
いわゆる“無益な治療”論による障害児・者の医療の切り捨てが
既にここまで来ているのか……という事例の数々。
とり急ぎ、報告書の27ページから30ページにかけて紹介されている7つのケースについて。
① Amelia Rivera事件:知的障害を理由に腎臓移植を拒否(2012年1月)
② 薬の副作用治療のはずが栄養も水分もなしの緩和ケアに(WA州)
精神科薬の副作用で重大な神経障害を起こし、入院を経て
薬の副作用の治療目的でナーシングホームに入った。
薬の副作用の治療目的でナーシングホームに入った。
DRWの調査員が訪問し、本人がうめき声を上げているのは空腹のためだと訴えても、
スタッフはどうせ何も分からなくなっているとして相手にしなかったので、
調査員は男性に眼でペンを追わせて意識が完全であることを証明し、
治療計画の変更を迫った。
スタッフはどうせ何も分からなくなっているとして相手にしなかったので、
調査員は男性に眼でペンを追わせて意識が完全であることを証明し、
治療計画の変更を迫った。
その結果、男性には適切な栄養とリハビリ・サービスが供給され、
さらに通常治療に切り替えて口から食べるよう促したところ
男性は体重とともに身体能力を取り戻し、担当医は「奇跡の回復だ」と驚いた。
さらに通常治療に切り替えて口から食べるよう促したところ
男性は体重とともに身体能力を取り戻し、担当医は「奇跡の回復だ」と驚いた。
人格障害とアル中で腎臓障害のある男性 Waldo (40)が
精神病院と治療施設と監獄とを行ったり来たりして
行動が改まらないことに業を煮やした法的代理人(法人)が
もはや改善の見込みも、支援を受けて自立生活を送れる見込みもないとして
Waldo を本人の意志に反して“no code(蘇生無用)”に指定した。
精神病院と治療施設と監獄とを行ったり来たりして
行動が改まらないことに業を煮やした法的代理人(法人)が
もはや改善の見込みも、支援を受けて自立生活を送れる見込みもないとして
Waldo を本人の意志に反して“no code(蘇生無用)”に指定した。
④ 78歳、知的その他の重複障害あるから大腸がん手術ダメ(RI)
外科医は、これほど重い障害がある患者を延命させる理由はない、と反論。
本人は障害のために言葉を持たないが、幸いなことに
本人は生きていることを喜びとし手術を受けたいと希望していることを
施設職員が確信していたために、
本人は生きていることを喜びとし手術を受けたいと希望していることを
施設職員が確信していたために、
そのことを医師に伝え、信じてもらうことができた。
それらを前提に考えれば、
手術の利益はリスクを上回ると外科医も考えを変えて
男性は手術を受け、その後2年間生きた。
手術の利益はリスクを上回ると外科医も考えを変えて
男性は手術を受け、その後2年間生きた。
⑤ 自己決定能力があるのに家族としか意志疎通を図らない病院 (OH州)
OLRSは病院の危機管理課に連絡を取り介入を求めると同時に、
セカンド・オピニオンを求めた。
セカンド・オピニオンを求めた。
その結果、セカンド・オピニオンは当初の診断と変わらなかったが、
病院が積極的に本人に意思確認を図るようになった。
また姉(妹?)が代理人に任命され、彼を
緩和サービスのあるナーシング・ホームに移した。
病院が積極的に本人に意思確認を図るようになった。
また姉(妹?)が代理人に任命され、彼を
緩和サービスのあるナーシング・ホームに移した。
⑥ 遠方に住む無関心な代理人が「検査も治療もしないで」 (IL州)
⑦ 若干20歳に医師が「褥瘡も障害も重すぎるから、治療は無益」 (ワシントンDC)
当初は点滴で抗生物質での治療が予定されていたが、
入院後に医師らは、傷が酷いうえに身体的にも知的にも障害が重いので
治療の利益がリスクを上回らないとして、治療を取りやめ、
栄養と水分の供給もなしに、介護施設に送って死なせようという、ということに。
入院後に医師らは、傷が酷いうえに身体的にも知的にも障害が重いので
治療の利益がリスクを上回らないとして、治療を取りやめ、
栄養と水分の供給もなしに、介護施設に送って死なせようという、ということに。
とりあえずの受け皿がないために、そのまま病院で症状を悪化させていく
Johnさんを案じた介護スタッフが懸念の声を上げても、
医師らは「治療法はないし、もうすぐ死ぬ」と取り合わない。
Johnさんを案じた介護スタッフが懸念の声を上げても、
医師らは「治療法はないし、もうすぐ死ぬ」と取り合わない。
ワシントンDCの人権擁護団体は
病院の担当医が上記所定の手続きを満たしていないことを文書によって証明。
病院の担当医が上記所定の手続きを満たしていないことを文書によって証明。
Johnさんが、なんら積極的な治療を受けられなかった2か月の入院を終え、
地域の自分のアパートに退院して帰った8月2日には、
体重が10キロ以上も減り、褥そうは3倍の大きさになっていた。
地域の自分のアパートに退院して帰った8月2日には、
体重が10キロ以上も減り、褥そうは3倍の大きさになっていた。
「あれほど辛い思いをしたにもかかわらず、
また、この患者は死ぬと病院医師らが診断したにもかかわらず、
彼は今でも地域で生きて暮らしている」
また、この患者は死ぬと病院医師らが診断したにもかかわらず、
彼は今でも地域で生きて暮らしている」
【NDRN報告書関連エントリー】
障害者人権擁護ネットから報告書「“A療法”・強制不妊・生命維持停止は人権侵害(2012/6/20)
障害者の人権を侵害する医療への痛烈な批判: NDRNの報告書「まえがき」(2012/6/22)
障害者への医療の切り捨て実態 7例(米)(2012/6/26)
NDRN報告書:概要(2012/7/7)
NDRN報告書:WI州の障害者への医療切り捨て実態 2例(2012/7/9)
NDRN報告書: A療法について 1(2012/7/13)
NDRN報告書: A療法について 2(2012/7/13)
NDRN報告書:カルメンの強制不妊ケース(2012/7/14)
NDRNのCurt Decker、"アシュリー療法“、障害者の権利、医療と生命倫理について語る(2012/7/31)
NDRN報告書: 提言(2012/8/2)
障害者人権擁護ネットから報告書「“A療法”・強制不妊・生命維持停止は人権侵害(2012/6/20)
障害者の人権を侵害する医療への痛烈な批判: NDRNの報告書「まえがき」(2012/6/22)
障害者への医療の切り捨て実態 7例(米)(2012/6/26)
NDRN報告書:概要(2012/7/7)
NDRN報告書:WI州の障害者への医療切り捨て実態 2例(2012/7/9)
NDRN報告書: A療法について 1(2012/7/13)
NDRN報告書: A療法について 2(2012/7/13)
NDRN報告書:カルメンの強制不妊ケース(2012/7/14)
NDRNのCurt Decker、"アシュリー療法“、障害者の権利、医療と生命倫理について語る(2012/7/31)
NDRN報告書: 提言(2012/8/2)