倫理委を巡る不思議

TruogのGonzales事件批判

Harvard大学のDr. Robert Truogといえば、 以前臓器移植で「死亡提供者ルール」廃止せよとのエントリーで紹介したように、 臓器を摘出するのに脳死を待たずとも 本人の事前の意思表示さえあれば植物状態から摘出してもよいことにしようという あまりにもラデ…

「利益vsリスク」論は前提がおかしい

前々からずううううううっと不思議でならないのですが、 「利益vsリスク」の差し引き勘定による「最善の利益」論というのは 根本的におかしいんじゃないかと思えてならないのは それって、 そもそもの前提が「やってもいい」に立っているじゃないか、と。 リ…

行間に滲む医師らの苦悩 2

前回、Cowan医師の「この家族には、そんなことは言えない」という意味深な発言を紹介しましたが、もう一人、シアトル子ども病院の神経発達プログラムのディレクターであるJohn McLaughlin医師も、同じ記事の中で病院内に相当な反対意見があった事実を明かし…

行間に滲む医師らの苦悩 1

前回のエントリーで、「もしかしたら、当該倫理委の議論は親の要望を認める結論が“最初からありき“だったのではないか」との仮説を提示しました。実は、その仮説に立って読んでみると行間から医師らの苦悩(pain)がひしひしと読み取れる記事があるのです。 …

painful な議論?

前々回、当該倫理委当日の記録の中の一節を引用しましたが、実はその中に不思議な形容詞が使われています。 The discussion was ………. painful…. 倫理委の議論がpainful、苦痛に満ちたものだった、というのです。 倫理委の議論を形容するのに頻繁に繰り返され…

医師らが試みている誘導とは?

この事件に関する直接的な資料(医師らの書いた論文、両親のブログ、メディアに引用・紹介された両者の発言)を原文で詳細に読んだ人は、特に論文を中心として医師らの発言に、ある種の誘導の意図を感じておられるのではないでしょうか。 誘導しようとの意図…

倫理委を巡る不思議 ⑧当日の記録

WPASの調査報告書には、2004年5月5日の「シアトル子ども病院特別倫理委員会」の記録がExhibit Lとして添付されています。 この記録によると、委員会がアシュリー一家に会って担当医らから意見聴取をするのに1時間(なぜか親がパワーポイントを使って…

倫理委を巡る不思議 ⑦議論の中身が出てこない

倫理委で具体的にどのような議論があったかについて、「リスク対メリット」の議論を行ったという以外に、医師らはどのように説明しているでしょうか。 まず去年秋の論文の記述から。 The treatment was requested by the parents and initiated after carefu…

倫理委を巡る不思議 ⑥親の主張をオウム返しする医師ら

医師らは、倫理委員会での議論では「リスクとメリットを秤にかけてメリットの方が大きいと判断した」と説明しています。しかし、よく考えてみれば、「メリットがこんなにある。それに対してリスクはこんなに少ない。だから(アシュリーへの利益は論理的に考…

倫理委を巡る不思議 ⑤委員長の意識

ところで倫理委の実際の委員長は、ずっと表に出てきませんでした。そのこともまた、Diekema医師が委員長だったのだとの私の誤解を助長したように思われます。しかし、委員長はシアトル子ども病院トルーマン・カッツ小児生命倫理センターのDavid Woodrum医師…

倫理委を巡る不思議 ④Diekema医師の位置

私はこの事件について調べ始めた当初、 Diekema医師がアシュリーのケースを検討した倫理委員会の委員長なのだと思い込んでいました。 メディアでの彼の発言の多くが、 当該倫理委を代表して解説・釈明するといった口調のものだったことから、 そういう予見を…

倫理委を巡る不思議 ③医師らの論文の矛盾

病院サイドからはアシュリーのケースを検討した倫理委についての詳細が出てこない、という話はすでに書きました。医師らの論文も同様です。 ところが、医師らは論文の中で当該倫理委のメンバーについてあたかも報告しているかのようなマヤカシを仕組む一方で…

倫理委を巡る不思議 ②地域の人をはずした理由

WPASの調査報告書添付の同倫理委の職務規定によると、シアトル子ども病院に恒常的に設置されている倫理委員会のメンバーは議長のほか、医療職、他の病院の医療職、病院理事会それから地域それぞれの代表で構成されています。 それに対して、Slon.comの取材に…

倫理委を巡る不思議 ①詳細が出てこない

これまでにいろいろなエントリーで述べてきましたが、この事件に関して病院サイドから公表された情報の中に、アシュリーのケースを検討した倫理委員会についての情報はほとんどありません。たとえば倫理委員会の委員の人数はどうだったのか。委員の構成はど…

親と医師は言うことが違う ④倫理委員会のいきさつ

既に紹介したように、親の要望を倫理委員会に諮った理由について、論文では、成長抑制療法はunconventional でありcontroversial だと思われたので倫理委員会にかけたと書かれています。 ところが、両親のブログで倫理委が開かれたいきさつを書いた部分は微…