アシュリーの「病気予防」のDNA的合理性?

前のエントリーで書いたように「遺伝子診断で癌罹患率が高いから臓器を摘出する」ということは、実際に行われているようです。アシュリーに行われたことのうち「病気予防で子宮と乳房芽を摘出する」という部分をこの点に沿って考えてみると、どうでしょうか。

両親のブログには、乳房芽の切除の理由として繊維のう胞と乳がんになりやすい家系であることが挙げられています。また、子宮摘出の理由の中にも子宮がんの予防が書かれています。

シアトル子ども病院は両親から要望を受けた際に、遺伝子診断を考えなかったのでしょうか。

「繊維のう胞と乳がん」と「子宮がん」の予防が臓器摘出の理由の一部に挙げられているのであれば、その妥当性を検討するに当たって、アシュリーがこれらの病気に将来罹患する確立はどの程度か、調べてみるべきではなかったでしょうか。子宮摘出にせよ乳房芽の切除にせよ、非常に過激で侵襲的な行為なのですから、病気予防を理由にするのであれば、そのくらいの慎重さは必要のはず。

アシュリーの遺伝子診断を行って非常に高い確率が出たら、それで初めてその病気の予防を理由の一部に含めることが可能となるでしょう(もちろん、未成年に関するこのような判断が親の決定権に含まれる場合のみです。)しかし逆に非常に罹患率が低く出たとするならば、それらの病気の予防はアシュリーの臓器を摘出する合理的な理由として成立しないことになります。

仮に遺伝子診断におけるアシュリーのこれらの病気の罹患率が低く、臓器摘出の理由から「病気予防」が消えた場合、残された理由は「性的虐待予防。大きな胸も生理も本人にとって不快」のみとなります。果たしてこれだけの理由で、子宮と乳房芽の摘出は妥当とされるものでしょうか。

ブログの内容から想像すると、両親はあくまで本人のQOL向上のためならそれだけの理由でも妥当と考えているようですが、医師らの主張する妥当性は病気予防に大いに依存しているので、罹患率が低い場合には医師らの論拠は破綻することになるように思えるのですが……。