擁護に登場した奇怪な人々

「炭鉱で働こうと代理母をやろうと自分の身体なんだから勝手」と Fost

Norman Fostのことを知ったのはAshley事件がきっかけだった。 たぶん、日本ではほとんどノーマークの倫理学者なんじゃないかと思うのだけど、 私は2007年の2~3月頃から Norman FostこそがAshley事件の筋書きを裏で書いた人物ではないかと睨んでいるので、…

Fostのステロイド解禁提唱遍歴とAshley事件

前のエントリーでNYTimes掲載のステロイド解禁論と その中でのNorman Fostのコメントを取り上げたついでに、 それとは別に、かなり前から机の上に置いて眺め暮らしていた Fost のステロイド解禁論の特集記事があるので。 As controversy swirls, medical eth…

違法ステロイド体験記から思うこと

カナダの作家 Craig Davidsonのステロイド体験記の中から、 個人的に非常に気になった点をいくつか。 ① 冒頭、彼が「油っぽい尿」のような液体が入った注射器をかざして逡巡する場面で、 この液体が2種類のステロイドであることが書かれているのですが、 そ…

Norman Fostの論文

なぜかNorman Fostには著書がないのですが、 論文の中にはamazon.comで電子版として購入できるものがあります。 amazonの概要から分かる範囲で以下に、 ①Organs from anencephalic infants: an idea whose time has not yet come: An article from: The Hast…

最相葉月の「いのち」から考えるFost

(このエントリーは前回の続きになっています。) 最相葉月の「いのち 生命倫理に言葉があるか」には 98年11月5日の国際生命倫理サミットでJulian Savulescuが物議を醸した翌6日、 世界で初めてヒトの受精卵からES細胞を取り出し増殖に成功したとの 大ニュー…

最相葉月の「いのち」に、あのSavulescu

最相葉月の「いのち 生命科学に言葉はあるか」(文春新書)を読んで、 ものすごく密度の濃い本で面白かったし勉強になったし、 考えたことも言いたいこともいっぱいあるのだけれど、 ありすぎて、すぐには整理がつかないところもあるので そちらは置いておく…

思いがけないところにFostの名前

Washington University in St. Louisのサイトに 面白いプロジェクトが紹介されています。 自身が癌にかかったことがある倫理学者と 癌にかかった配偶者を介護したことがある倫理学者7人とで、 そうした個人的な経験を通して これまでの倫理学の様々な議論に…

A療法擁護の2人ドーピング議論に

去る1月15日にニューヨークで 「競技スポーツでの能力強化ドラッグは受け入れるべきである」 We should accept performance-enhancing drugs in competitive sports. という提案をテーマに大きなディベートが行われたらしく、 ネット上でも多くの記事やブロ…

Sciam今年の重大科学ニュースにAshley事件

Scientific American.comが2007年の科学記事トップ25を挙げているのですが、 (実際に数えてみたら、なぜか25よりもはるかに多いものの) その中に、Ashley記事が含まれていました。 Top 25 Science Stories of 2007: Scientific American December …

FostはFDAの小児科研究倫理検討委員長

MilwaukeeのJournal Sentinel が いわゆる環境ホルモンビスフェノールAの安全性について12月2日付けで長い記事を掲載し、 利権が絡んだ政府と製薬会社の研究結果が学術研究の結果と大きく違っていることなど 安全性を巡る政府の判断基準に疑問を投げかけてい…

Norman Fostという人物

いわゆる“Ashley療法”を強く擁護した Wisconsin大学のNorman Fost医師について、 当初は彼がAshley論文の著者であるDiekema医師の恩師であることから、 「助っ人を頼まれたか、または自ら助っ人を買って出たのだろう」と簡単に考えていたのですが、 その後、…

Norman Fost「子どもの臨床実験リスクには報酬で」

“リベラルな生命倫理学者”どころか“過激派”と呼びたいNorman Fostの またぞろコワイ発言が、お膝元Milwaukeeの地方紙に。 Child health study stirs compensation question Journal Sentinel (JSOnline 11月25日) 子どもの肥満や喘息に影響する環境要…

FostはES細胞研究スタートにも関与していた

思ったのですよ。 京都大学の山中教授チームが万能細胞を作った、 米Wisconsin大学のThomson教授チームもまもなく同様の成果を発表する、 と聞いたときに。 「あ、あのFostのいる大学だ」と。 でも、まさか直接Thomson教授とつながりがあったとまでは、 想像…

Fostらが「プライバシー法は医学研究のジャマ」

米国医師会ジャーナル(JAMA. 2007; 298(18):2164-2170)に 医療プライバシー法は疫学研究の邪魔だ、とする論文が掲載されています。 著者は次期疫学学会会長のDr.Roberta B. Ness (Pittsburgh大学Graduate school of Public Health)。 疫学専門医へのアン…

カフェインだって昔は違法薬物、とSavulescu

2006年のツール・ド・フランスでのドーピングが確認されたことを受けて、 9月23日にCBCニュースのSundayという番組が 「スポーツでのドーピング:このまま定着か?」と題した討論を組み、 「もはや解禁するしかない時期にきたのだろうか」と問題提…

不思議な“アシュリー療法”エッセイと、その著者たち 2

Hastings Center Report March-Apr. 2007 の“アシュリー療法”に関するエッセイの著者は以下の3人です。 S. Matthew Liao Julian Savulescu Mark Sheehan 筆頭著者のLiao はホームページによると、 オックスフォード大学のthe Ethics of New Biosciences の…

不思議な“アシュリー療法”エッセイと、その著者たち 1

Hastings Center Report の3-4月号に、 以下の“アシュリー療法”関連のエッセイが掲載されていました。 The Ashley Treatment: Best Interest, Convenience, and Parental Decision-Making By S. Matthew Liao, Julian Savulescu, and Mark Sheehan 簡単に…

臓器目的で子ども作って何が悪い、とFost

これまで見てきたように、 Norman Fostはアシュリー療法論争に登場した他にも、 ステロイド論争で大いに有名な人物のようなのですが、 ちょっと古いところまで遡ると、 1991年にも臓器目的で子どもを産むことを巡る論争に名前が出てきます。 例えば、 子…

Singerの“アシュリー療法”論評 2

ここでも私が最も気になるのは、 アシュリーの障害像をSingerがどこまで正しく理解してこの文章を書いたかという点。 この論評の冒頭で彼が説明しているアシュリーの状態とは、 アシュリーは9歳。しかし精神年齢は3ヶ月児相当以上には発達していない。歩く…

Singerの“アシュリー療法”論評 1

Peter Singerの「実践の倫理」に触れたついでに、1月26日に彼がニューヨークタイムズに書いた”アシュリー療法“論争に関する論評 A Convenient Truthについて。 彼はこの文章の中で、主に両親と担当医への批判から3つの論点を挙げて、それに反論していま…

カンファレンス 顔ぶれの不思議

シアトル子ども病院トルーマン・カッツ小児科生命倫理センターは 2005年から毎年夏に小児科生命倫理カンファレンスを開催しています。 そして過去3回のカンファレンスのプログラムを眺めてみると、 以下のように、このカンファレンスには “アシュリー療…

この人もオトモダチかも? Lainie Ross

7月13-14日のシアトル子ども病院トルーマン・カッツ小児生命倫理センター主催のカンファレンスにはFost、Fraderの他にもう一人、“アシュリー療法”論争で擁護のコメントをした医師が登場しています。シカゴ大学のカマー子ども病院・マクリーン臨床医療…

ウィスコンシン大学つながり?

Scientific American.comのメール討論を読み返していたら、 これまで気がついていなかったことを発見。 討論に際して紹介されている3人の参加者の簡単なプロフィールを見ると、 Wilfond医師はトルーマン・カッツ小児生命倫理センターのディレクターである他…

Diekemaの上司なのに批判? (Benjamin Wilfond)

これまで何回かに分けてScientific American.comでのメール討論を眺めてきましたが、その意図について同サイトは「(メディアが騒ぎ議論が百出しているので)雑音に惑わされないために、最初にこの療法を承認した倫理委員会のメンバーと同じような意見を持つ…

どうしてそんなにオドオドしている? (Joel E. Frader 2)

Scientific American.comのメール討論(1月5日)で、Frader医師はトップを切ってだいたい以下のような内容のメールを書きます。 両親の決定を支持するとの医師らの判断について論文はreasonablyにディフェンドしている。障害児の介護を考えれば、背が大き…

”たぶん”OKって? Joel E. Frader

Scientific American.comのメール討論に参加した3人のうちの1人はJoel E. Frader。シカゴの子ども記念病院の小児科医であり、ノースウエスタン大学フェインバーグ校医学部の教授です。同1月5日にAP通信のニュースでも彼のコメントが紹介されていますが、…

訂正

James J. Hughesについて、Hughes医師と表記してきましたが、彼は医師ではありませんでした。 CNNに登場した際に、Nancy Graceからアシュリー特有の症状を問われ、「直接診察せずに診断を下す愚は犯したくない」と答えていたので医師だと思い込んでしまって…

あの論文を「よく書けている」とは? (Norman Fost 6)

もう1つメール討論でのFost発言について重大なポイントとして指摘しておきたいのは、 Fost医師がベビー・ドゥ論争と障害新生児の治療停止・安楽死問題を持ち出していることです。 その下りの大まかな要旨を以下に。 70年代、80年代のベビー・ドゥ論争に…

国策でなければ優生にあらず (Norman Fost 5)

Fost医師が「ラリー・キング・ライブ」とScientific American.comのメール討論の両方で触れていることに、 優生思想だという批判への反論があります。 アシュリーに行われたことは優生思想だという批判があることに対して、彼は、 「優生思想というのは社会…

Fostも親のオウム返し? (Norman Fost 4)

Scientific Amrican.comのメール討論でのFost医師には、 これまで取り上げた他にも興味深いものとして、以下の発言があります。 アシュリーの子宮を摘出したいという父親の主な理由を確認しておくのがいいだろう。 アシュリーには子宮など必要ない、というの…