Fostも親のオウム返し? (Norman Fost 4)

Scientific Amrican.comのメール討論でのFost医師には、
これまで取り上げた他にも興味深いものとして、以下の発言があります。

アシュリーの子宮を摘出したいという父親の主な理由を確認しておくのがいいだろう。
アシュリーには子宮など必要ない、というのがそれだ。

子宮の唯一の目的は生殖であり、
明らかに生殖とは縁が無いアシュリーには
リスクと負担だけを生じて、何の利益も無い臓器なのだ。

生理の負担はあなどれない。
重度の知的障害のある女性がよく生理がくるたびに恐怖に駆られるが、
アシュリーはちょうどそのくらいが分かる程度の知能である。

それから妊娠の危険も少しながらある。
特に後に施設に入る必要がある人には実際に起こっていることだ。
プロジェステロンに血栓症エストロゲンにガンのリスクはあるが小さい。
こうした長期にわたるリスクと、
手術で子宮を取れば一時的な痛みや小さなリスクですむのとを秤にかけるということになる。
人によって、どちらが大きいか判断は違うが、両親の判断が無茶だとは思わない。


・Fost医師は、子宮摘出の主たる目的は「アシュリーには必要ないから」というものだと言っています。
実際、両親のブログで子宮摘出の理由を説明する一説は
「アシュリーに子宮は必要ありません」という木で鼻をくくったような一文で始まっており、
確かにそれが主たる理由であると読めなくもありません。
もっとも両親は一応「生理と生理痛の回避」を主たる理由としており、
「不要だから」が主たる理由だというのはFost医師の大胆な解釈です。
が、案外にこの解釈は親のホンネを突いているのかもしれません。
(乳房芽についても、両親のブログは理由の説明を
「授乳しないアシュリーには大きな乳房は必要ありません」との1文で始めています。)

・知的障害のある女性は生理に対処することができないで苦しむという話が、ここでも出てきます。
アシュリーの父親もDiekema医師もこの話を何度も繰り返しています。
しかし彼女に会ったことも無いはずのFost医師に、
どうして「アシュリーはちょうどそのくらいが分かる程度の知能である」と言えるのか?

・これも両親や担当医を擁護する人たちがよく持ち出す話なのですが、
「施設に入所するとレイプされる」といわんばかりです。
それは他の入所者によってという意味なのか、職員によってという意味なのか。
果たしてそういう事実がどの程度あるのか。
この「レイプされる可能性があるから」というのは
アシュリーの父親が子宮摘出の副次的なメリットとして挙げており、
担当医らが時にあたかも子宮摘出の主要な理由の1つであるかのように繰り返している点です。

・最後の部分は、生理のコントロールなら子宮を摘出しなくても、
ホルモン剤の服用や注射で可能だという批判を念頭に置いたものと思われます。
ホルモン剤には血栓症と発がんリスクがあるから、
長期に服用してそのリスクを負うよりは、子宮を取ってしまった方が
長い目で見たらリスクが少ないとFost医師は主張しているのでしょう。

(ちなみに医師らの論文はこの点について、
ホルモン注射で生理コントロールをする場合に本人と介護者が負う“費用と痛みと不便”が
子宮摘出によって解消されると書いています。
あたかも子宮摘出が安価な医療であり、
手術には痛みもリスクもなく、
入院や外科手術に伴う不便もないかのように。)

 このように考えてくると、
上記のFost発言は
ほぼ担当医らが言うことの焼き直しである
ということが言えるようです。

さらに 担当医らの言っていることは1月以降は両親のオウム返しであることを考えると、
彼もまたここで両親の言っていることを後追いしているに過ぎないのではないでしょうか。

(冒頭の解釈も、この口調からすると、
Fost医師本人は父親の言い分を追認しているつもりのようです。)