体外受精の安全性

これまで


の2回のエントリーに分けて
英国議会で検討されている“救済者兄弟”の問題を紹介してきましたが、

このように生殖補助技術がどんどん発達し、
“救済者兄弟”を初めとする“デザイナーベイビー”まで既成事実化する中、

生殖補助技術は本当に安全なのかと
その足元に疑問を投げかけるニュースが
11月25日のMedical News Todayにありました。

「試験管受精は危険なのか?」
Is The Test Tube Conception Dangerous?

体外受精では
異なった遺伝子情報を処理するメカニズムに狂いが生じて遺伝子刷り込みの病気が起こる確率が
通常の妊娠によって生まれた子どもに起こる確率よりも高い
というロシアの調査結果が紹介されており、

その原因として
遺伝子刷り込みが受精時の外的要因に反応することや
ホルモンの刺激によって自然な妊娠では成熟しない異常な卵子が成熟してしまうなど、
手法そのものの特異性に影響されるのではないか、と。

生殖補助技術と遺伝子刷り込みの関係については
専門家の意見も分かれており。
体外受精児そのものが極めて珍しいのだから、それで人工授精を否定することはないとする人もいれば、
遺伝子刷り込みの異常は氷山の一角に過ぎないと生殖補助技術に反対する人もあり、

この問題はきちんと調べて、
体外受精をいかなる点においても安全なものにする必要がある、と。


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生命の誕生というのは非常に繊細で複雑なメカニズムなのだから、
そこに人工的に手を加えるということは、
当然のことながら異常が起こる確率も高くなるだろうと感じるのは、
極めて常識的な感覚だと思うのですね。

生殖補助に関して様々な技術(代理母も含めて)が進むに連れて、
そうした技術を使ったがゆえに障害を負った子どもも実は生まれているのではないかと
私はずうっと気になっているのですが、
そういう話は本当にないのか表に出てこないのか、
なにしろあまり聞かない。

例えば臓器移植に関する調査研究のほとんどが
ドナーについてではなくレシピアントについて行われるように
生殖補助医療に関する調査研究の多くも成果に関するものであり、
リスクを巡る調査研究はあまり行われていない……
ということはないのでしょうか??

そして、いわゆる「科学的事実」には
「科学的に実証されないことは存在しない」つまり
「調査研究の対象とされない限り、それは存在しない」という
改めて考えてみたらアホみたいな盲点があるようにも思われるので、

生殖補助技術のリスクが云々されることがないのも、
ただ単に「誰もきちんと調査していないから」
というだけなのではないか……とずっと気になっていました。

この記事によると、
このたびロシアの研究者が調べたのは
「遺伝子刷り込み病という生殖補助技術の安全性リスクのほんの一面」について、
ちょいと調べてみた、というに過ぎないようなので、

これはやはり、
体外受精と着床前遺伝子診断で“救済者兄弟”を作ることを認めましょう」
などと議会で議論するより以前に、
安全性に関する調査を徹底的に行ってほしいもの。