VeriChipはジリジリと広がっていく?

マイクロチップを人体に埋め込んで
アルツハイマー病患者の徘徊防止に使うシステムを開発・販売している会社VeriChipについて、
以前のエントリーで紹介しました。

他にも緊急時の医療情報アクセスや銀行口座と直結で簡単支払いにも使えると売り込んでいるものの、
人体に埋め込むという侵襲性の高さから
思いのほか業績が不振であるとのニュースも紹介しました。

この徘徊防止システムがスイスで売れたとのニュースが、
9月26日にSouth Florida Business Journalで報じられています。
VeriChipのカナダ支社Xmark Corp.による、同商品のスイスでの販売第1例とのこと。

詳しい契約内容は明らかにされていませんが、
ProtectPoint徘徊防止システムが導入されるのは
チューリッヒ近くの聴覚障害者と高齢者向け施設。

屋内施設で利用者の居場所を把握するためにRFID(Radio Frequency ID)チップが使用される、
としか記事には書かれていません。

チップを使用するという以上、人体に埋め込むのではないでしょうか。

聴覚障害者と高齢者の施設」とは、実際にはどのような施設なのか。
こういうシステムを導入するというのだから、それは入所施設と考えるのが妥当なのでしょうが、
利用者はどのような人たちなのか。

施設がシステムを導入したからといって、利用者に勝手にチップを埋め込んでいいものでもないはず。
その場合、このセンターの利用者の同意については、どういう考え方になるのか。

疑問だらけです。
(キーワード検索しても、ビジネス関連サイトの記事が多いのです。
必ず株価が書かれている、といった類の。
こういう方向からの関心が目立っているというのも、なんだか……。)

この記事にあるXmarkのCEOの発言からは、
海外でマーケットを広げていくことによって
アメリカの同業界で主導的地位を固めようとの意図が感じられます。

要するに、
何かと非難されるアメリカで業績を伸ばす前に(経営も悪化していることだし)、
海外にマーケットを広げてchipの利用を既成事実化し、
それによって非難をかわしてしまおうという戦略なのでは?

Xmarkのサイトを覗いてみると、
トップページに以下のようなアナウンスがありました。

信頼の商品の数々に新しい名前が付きました

Xmarkへようこそ。

Xmarkは医療セキュリティ製品会社の新たな名称です。

名称を改めることによって、我々は医療セキュリティに特にフォーカスします。
これまではeXI やVeriChipとしてご存知だったかもしれませんが、
これからは当社の商品は全てXmarkの名でお届けすることになりました。

なんということはない。
いろいろ批判に晒されて人権侵害のイメージが付着してしまったVeriChipという商品名は脱ぎ捨てたぞ、と。

つまり、これは、海外でのマーケット拡大戦略に向けた備えでは?

さらに、売れるのはやっぱり医療セキュリティだと判断し、
この分野にフォーカスしよう、ということでもあり、

まさか、

自分で選択・同意する能力がある人たちには売れないみたいだから、
そういう能力がない人をまずは狙おうと……?


              ―――――


ところで、まったくの偶然なのでしょうが、XmarkのCEOはDaniel A. Gunther。

あのAshleyの担当医だった(そして、9月30日に自殺した)Daniel F. Gunther医師と
ミドルネームのイニシャル1文字を除いて、同姓同名。

意味のない偶然と頭では分かりつつ、なんだか幽霊を見たようで、一瞬ぞうっと……。