Dr.GはIEETと接触していた

前回のエントリーで、Gunther医師自殺を巡るDvorskyの障害者団体批判のコメントを紹介しましたが、

実はその中に、ちょっと仰天の事実が。

“アシュリー療法”論争ピークの1月、
あのHughes が率い、DvorskyはじめBostrom(世界トランスヒューマニスト協会の創設者) もNammも理事に名を連ねるthe Institute for Ethics and Emerging Technologies(IEET)のサイトに
Gunther医師が書き込みをしたというのです。

IEETのサイトを検索してみましたが、Gunther医師の書き込みそのものを見つけることはできませんでした。

Dvorskyが例の「グロテスク」発言を行った文章 Helping Families Care for the Helplessは
当初彼のブログに書かれたものですが、その後IEETのサイトにも掲載されました。

その文章について、1月にGunther医師がIEETのサイトに次のように書いてきた
とDvorskyは言います。

IEETのサイトの記事は私が出会った最初の正気(sane)で理にかなった(rational)反応のひとつでした。こちらではみんな、あなた方のサポートに感謝しています。やがて、もっと理にかなった声が沢山上がるようになり、反動的な声が消えていくといいのですが。


(こちらではみんな all of us here とは、一体誰のことなのでしょうか。
シアトル子ども病院の関係者のことなのか。
アシュリーの親もそこに含まれているのかどうか……?)

ここに見られるGuntherの“アシュリー療法”批判への捉え方は、
2月に入ってAshleyの父親がAP通信に送ったメールの文章に見られる意識とそっくりです。

(ブログ公開以来、自分たちの元には1600通の激励、120通の批判のメールが届いた
と書いた上で、)

「励ましのメールはほとんどが思慮深いもの」で、自分たちのブログを読んでくれたのだとわかる。

「批判メールの大半は明らかに批判のための批判、または単なる反動であり、
メディアのセンセーショナルな見出しに(本文をちゃんと読まずに?)反応しているだけのようだ」

以前のエントリーで指摘したように、
父親がブログで書いていることやメディアで発言していることから推測すると、

去年10月の論文発表で巻き起こった批判に対して、父親は
「自分の意図が誤解されているためにこのような批判が起こるのであり、
自分がきちんと理を分けて説明すれば理解されるはず」
と考えていたフシがあります。

自分の考えは何処をとっても理にかなっている(つまりrational)のであり、
まともな人間(Guntherがいうsane?)であれば理解できないはずがないのに、
何故こんなにも世間に理解されないのか、
それこそ彼は理解に苦しんでいるのではないでしょうか。

だから世間の人たちが理解できないのは自分のブログをちゃんと読んでいないか、
またはメディアに煽られているからだ、
と考えるしかないのでしょう。

       ――――――――――

ちなみに、

以下は世界トランスヒューマニスト協会サイトのFAQ(Version 2.1 2003 Nick Bostrom)、
「トランスヒューマニズムに関する一般的な質問」の項目の1.1「トランスヒューマニズムとは何か」への答えの一節。

…….we can make things better by promoting rational thinking, freedom, tolerance, democracy, and concern for our fellow human beings.

……我々はrationalなものの考え方、自由、寛容、民主主義、そして同じ人間同士への心遣いを広めることによって事態を改善していくことができる。

ここで言う「自由」とは彼らがあちこちで主張していることから考えると、
例えばKatieの母親が主張しているような選択の「自由」
スポーツにおいて能力強化薬を使う「自由」、
遺伝子操作によってお好みの子どもを持つ「自由」
などのことと思われます。

いわゆる“アシュリー療法”も、彼らに言わせれば、
この中の「同じ人間同士への心遣い」に含まれるのでしょう。
どうせ彼女には必要のない子宮や大きな乳房を取ってしまうことによって、
QOLを改善し、生理の苦痛からも将来の病気リスクからも解放し、
将来仮にレイプされたとしても妊娠という最悪の事態は防いであげたのですから。

体を小さなままにすることによって中身とつりあう外見にしてあげた、それだけ「グロテスク」でも「フリーク」でもない存在にしてあげた、という「心遣い」も、忘れてはなりません。

このような考え方を彼らはrational thinkingと呼ぶのであり、
rational thinkingができる人ならば“アシュリー療法”の妥当性を納得しないはずがないと
Ashleyの父親も考えていたわけです。

Guntherも上記のDvorskyの引用から見る限りではそう考えており、
世の中にはrational にものを考えられず感情に走る人間が多いことを
嘆かわしく感じていたようです。

こういう考えが共通していたとすると、
やはり親のブログに書いてあった謝辞の通り、
Gunther医師は最初からアシュリーに行われた一連の医療処置を主導したのかもしれません。

(それなら、なぜ外部への釈明をすぐにDiekema医師一人に任せて引っ込んでしまったのか
という疑問は残りますが。)

いずれにしても、DvorskyとAshley父それにGunther医師。

実に気の合いそうな3人です。