豪でも“反応のない”患者の治療差し控えガイドライン

オーストラリア政府の医療倫理委員会が新たなガイドラインにおいて
昏睡後に反応がなかったり反応が非常に小さい患者では
経管栄養を含む治療を差し控える方向を提唱。



あまりに負担が大きな(overburdensome)治療について
一般向けに教育を行うべきだともされており、

その中には、ただの生理的な反応に過ぎない体のどこかの動きを
意識がある証拠だとか意思によるものだと家族がカン違いして
誤った希望を抱くことのないように……という”教育”も含まれているのだとか。

(でも植物状態だとか最少意識状態とされた人が完全に目を覚ましたというケースだって報告されていて、
植物状態」の脳のダメージの不可逆性についてはまだ分からないことも多いはずなのに……。)


「あまりに負担が大きい治療」とは、
risky, intrusive, destructive, exhausting, painful or repugnant であって、
コストが利益や成功を上回るもの。

しかし、治療の中には
risky, intrusive, destructive, exhausting, painful or repugnant でありうるものは多いのだから、
これは要するに後半に重きがあって「どうせ無益なのにコストが嵩むなら死なせましょう」ということでしょう。

気になるのは、
Karen WeberのケースでBobby Shindlerが問題にしていた経管栄養が
ここでも「基本的なケア」ではなく「治療」に含まれていること。

そして、もっと気になるのは、
意見が対立した家族と医師が裁判所に決着を持ち込むのを防ぐことが
ガイドラインの狙いの1つに挙げられていること。

じゃぁ、自分で自分の身を守ることが出来ない人たちのためのセーフガードは???
認知能力はあるのに表出能力が低いために意思を伝えることが難しい人たちは??

また、オーストラリアの保健相に上記ガイドラインが提出されたのは
上院の安楽死に関するレポートが提出されるのと同時だったという点も、
大いに気になるところ。

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すべては連動している、と思う。

「無益な治療」論による重症障害児・者の切捨て。
「生きるに値する命」、「本人の最善の利益」論による障害児の中絶・安楽死
遺伝子診断によるデザイナー・ベビー志向と障害のある胚の排除。
「死ぬ権利」論による自殺幇助合法化への動き。
科学とテクノロジーによって身体に手を加えて簡単問題解決の文化。
科学とテクノロジーで、さらに健康にさらに長生きにさらに能力アップを、と
トランスヒューマニストらが見果てぬ人類改造の夢。
一部の富裕層の利益だけに都合よく世界が作り変えられていくグローバリズム
強い者がより強くなるために弱い者を踏みつけ、切り捨てていく新自由主義

みんな、繋がっているんだ……と思う。