「中絶か重症障害か……選ぶのは親のあなた」(英)

現在、英国で生まれる年間65万人の新生児のうち
約8万人が37週未満の未熟児で、
そのうち半数が集中ケアを受ける。

先週、1キロ未満の超未熟児が増えているというニュースがあり、
プロライフのアドボケイトからは中絶リミットを24週から20週に
引き上げるべきだとの声が起こっているところ。

一方、Newnastle's Royal Victoria Infirmaryの新生児医療専門医の新たな研究結果では
24週未満で生まれた新生児の生存率は15年前と変わらない。

しかも、医療の発展で、その80%が
集中的で、無益な、人によっては“実験的な”と表現する医療を受けてから死んでいく。
生き延びたとしても、重い障害を負うことが多い。

さらに、もう1つ、ごく最近明らかになった調査結果では
未熟児で生まれた子どもは新生児期に激しい痛みを治療で経験するので
それが脳に影響を及ぼし、長じてから
痛みに対して普通の子どもよりも敏感になる、とも言われる。

そこで、医学的にそれが可能だからといって、
病気や障害だらけで生まれた子どもを
何が何でも救命しなければならないとするのは如何なものか、という声が出ている。

……として、
子どもが生まれた時に医師から救命治療について判断を求められて
迷いつつも救命を選び、現在、障害を持つ子どもを育てている3組の夫婦を
取材し、紹介しつつ、

最後に新生児医療の専門家の
「救命した結果、本人に苦痛をもたらすほどの障害を負うケースは、ごくわずか。
大半は、他の子どもたちよりも障害があるという点で異なっているけど、
学校で他の子どもよりも支援があれば、よい生を生きることができる子どもたち。

救命のために力を尽くすべきではないというのは
全く障害が残らない可能性や、十分に対応可能な障害の可能性があるという程度の
ボーダーラインの子どもたちまで切り捨てることになる」
との発言を紹介。

冒頭に紹介されているMeganちゃんのケースで
妊娠中期に流産しそうになった時の医師の発言が、
おそろしく形式的かつ誘導的で、

You can have a termination or I can try to turn a non-surviving fetus into a severely disabled child, by holding off your labour until he baby has a chance of survival. The choice is yours.

中絶もできます。

あるいは、生きる望みが出てくる時期まで陣痛を抑えれば、
ほんらい助からない胎児を救って重症障害を負わせようと試みることはできます。

決めるのはあなた方です。



去年、
早産・死産撲滅に、シアトルこども病院がゲイツ財団、ユニセフ、WHOと乗り出すというニュースを見て、
その「撲滅」の方法に、そこはかとない疑念を感じていたら、

その辺りから、
未熟児を産ませず、生まれても救命しないための科学的エビデンス作りが進んでいると感じられるような
情報がやたらと、あちこちで目に付くようになってきて、
(リンク以外にも、そういうエビデンス作りの研究情報を拾った補遺は多数)

で、この動きは結局、こういう方向のものなんだろうな……と推測していたのだけど、
やっぱり、大当たりだった?

「障害のある生は苦しいばかりで生きるに値しないから死なせてあげよう」と、
出口のところで進む自殺幇助の議論と、いかにもパラレルな議論が
生の入口のところでも進んでいる……ということになるのか。

パラレルだとしたら、
「死の自己決定権」の後ろから「無益な治療」論が追いかけてきていて、
自ら死を選ぶのでないなら病院側が治療を拒否できる仕組みが出来つつあるのと同じように、
今はとりあえず「親の選択」だとして救命を選択できる余地も
そのうち「無益な治療」論によって徐々に狭められていくのかもしれない。

それに、

The choice is yours. 選択するのはあなたです。
……というのは、まぎれもなく「自己選択・責任」を親に負わせる言葉。

障害があるのを承知で生んで、承知で救命したのだから
あとは親の自己選択、自己責任で生涯、面倒をみるんでしょうね、
社会に助けなんざ、期待するんじゃありませんよ。
アンタが好きで生んで、好きで救命したんだからね――。

もはや社会支援の必要はなくなる……?