英国から米の慈善資本主義批判

"Just Another Emperor: the Myths and Reality of Phlilanthrocapitalism"
「新たな帝政:慈善資本主義の神話と現実」という本(著者Michael Edwards)が刊行されたことに寄せて、
著者と同じチャリティ財団に所属し、
かつて英国首相の社会施策アドバイザーを務めたことがあるGeoff Mulgan氏が
open Democracyというサイトに慈善資本主義を批判する一文を寄せています。

The new philanthropy: power, inequality, democracy
By Geoff Mulgan,
Open Democracy, April 10, 2008


ヨーロッパにはまだ本格的に押し寄せてはいないものの、
“暫定的な独占企業”の資金と限られた個人によってコントロールされるアメリカ型巨額慈善事業は
じわじわと英国の経済にも変革をもたらしている。

フォードやカーネギーなどの独占企業が始めた慈善事業が普及した後に、
金融と情報分野が突出する経済構造の変化が
限られた数人の手に富を集中させたものだから、

彼らは“本来の慈善や博愛精神”など全く持ち合わせてなどいないくせに
イメージアップのために慈善事業を始めたのだ、と。

(引用符にした部分、
貴族による慈善事業の伝統が厚い英国人のプライドなのでしょうか?)

しかし、これまで社会変革をリードしてきたのは社会運動と政治であり、
ビジネスは常にそれらのリードに従ってきた。

社会活動は共助と協力の精神と繋がっているもので
本来、慈善や博愛とはつながりを持たない。

市場原理もまた、消費者の側に選択を通じて最終的な権力を持たせるもののはず。

資金の提供者が人々に必要なものを選択する慈善資本主義は
アダム・スミスの市場原理にも理念にも反するものである。

経済分野の権力が、社会分野での権力になり代わってはならない。
異なる分野の原理はそれぞれに独立していることが民主主義の基本である。

        ――――――

ブッシュ政権と製薬会社が
FDAの専門性を盾に薬害訴訟つぶしを目論んでいることや、

医療の世界でFostらによる裁判所軽視発言が見られることからも、

司法は独立どころか存在そのものが危ういところに押しやられつつあるのではないか
という危惧を私は個人的に感じているのですが、

科学の進歩に法整備も倫理上の議論も追いついていないからといって、
このまま勢いに任せて司法がなし崩しに軽視されていったら、
弱い者を守る砦は崩され、社会は本当の弱肉強食世界に陥ってしまうのでは──?