Ashley関連(09年)

Diekemaらの成長抑制論文に医師らからの批判

ちょっと遅ればせの記事になりますが、 Diekema、Fost両医師他が去年6月に小児科学会誌に成長抑制に関する論文を書き、 早々と一般化する場合のスタンダードを設定しようと試みたことは、 既にいくつかのエントリーにまとめました(詳細は文末にリンク)が、…

「医師の道徳的な義務とは自身に対して負うもの」と“Ashley療法”の線引きを突き崩すTan論文

11月号のMedical Ethics 誌に“Ashley療法”を論じた論文が掲載されています。 Agency, duties and the “Ashley Treatment” N. Tan, I. Brassington J Med Ethics 2009;35:658-661 リンクはアブストラクトのみですが、 この情報を教えてくださる方があり、ま…

「脳が不変だから子どもも不変」の思い込みで貫かれている……A療法の論理に関する重大な指摘

ここしばらく、とても熱っぽい“Ashley療法”批判を展開してくれるブログがある。 ブログ主はカナダの重症児の母親 Clairさん。 最近、Ashleyの父親のブログを最初からもう一度じっくり読み直してみたという 14日のポストが面白い。 Working Through Issues on…

Obama医療保険改革で「祈りによる治療」給付が問題に

どーでもいいことなんですけど、このエントリーをアップした午後6時前現在、 訪問者カウントに 7 が 5つ並んでいます。 なんか、いい気分です。こんな地味なブログに寄ってくださって、ありがとうございます。 ----- ----- 医療保険制度改革案…

Diekema & Fost 論文を読む 6:司法の否定

「反論25」で取り上げられている最後の批判の論点は 「これほど重大な医療決定では、裁判所の判断が必要」。 しかし、これは、もともと2007年5月の記者会見で 病院側が公式に違法性を認めた点です。 それを改めて論駁して「裁判所の判断は無用」とまで主張…

Diekema & Fost 論文を読む 5:「だから、ちゃんと検討したんだってば」

4月のDiekema&Fost論文の「反論25」で取り上げられているのは 倫理委の検討が不十分だという批判。 具体的には、 ・ Ashleyの利益だけを代理する人物が検討過程にいなかった。 (これは小山さんが2007年5月のシンポで会場から指摘された敵対的審理の不在…

Diekema & Fost 論文を読む 4:窮鼠の反撃?証明責任の転嫁

4月のDiekema & Fost 論文の眼目は、 これまで出てきたAshleyケースに対する批判の論点に対して反駁する、というもの。 主要な批判の論点を25点挙げて、それに1つずつ反駁して見せた後、 (一つ一つは相変わらず論理が飛躍していたり、ウソやマヤカシに満…

Diekema & Fost 論文を読む 3:政治的判断を否定

今回の論文に初めて出てきた内容として、私が最も注目したい箇所は やはり「反論25」で、然るべき手続きがなかったとの批判に反論している部分にあって、 If the institution had any self-interest in this case, it would have been to not perform thes…

Diekema & Fost 論文を読む 2:ホルモン療法の期間を修正

私は英語でも日本語でも書いているのだけど、なぜか他には誰も触れない、 しかし相当重大なウソなのですが、 2006年のDiekemaらの論文はAshleyのホルモン療法の期間を 実際よりも約1年間短く報告しています。 おそらく論文を書いた時点では、親がブログを立…

Diekema & Fost 論文を読む 1:倫理委に関する新事実

Diekema、Fost両医師が今年4月に Bioethics誌に論文を書いて Ashleyケースへの批判に反駁していることを10月1日のエントリーで紹介しました。 手に入れてくださる方があって、その後フルテキストを読むことができました。 大筋としての印象は、 2006年…

Diekema医師が今更のようにAshley論文書いて批判に反駁

たぶん、Bioethics誌の最新号なのだと思うのですが、Diekema医師が Ashleyケースへの批判に反駁する論文を書いているようです。 タイトルは Ashley Revisited: A Response to the Critics What Sorts of Peopleのブログ・エントリーに抜いてあるアブストラク…

成長抑制に関する法的分析、オーストラリアの法律事務所から

オーストラリアの法律事務所が9月号のニュースレターで オーストラリアでも「成長抑制を求める親の声が増えそうな話を聞くので」として、 障害児に成長抑制を行おうとする可能性のある医師に向けて法律的な分析を行い、 親からの要望を受けたら、まずその倫…

また起きたぞ、A事件で時々起こるネット上の“不思議”

Ashley事件を追いかけながら、 いつからか気がついていたネット上の奇妙な現象について 今年の2月に以下のエントリーで書いたのですが、 “A療法“批判が出るとネット上で起こること(2009/2/13) 今朝、また、同じことが起こっているのを発見。 How is Ashley’s…

WA大学が10月に「優生学と障害」シンポ

いただき物の情報。 夕方いただいてから、ずっと頭から離れない。 ワシントン大学の障害学プログラムが10月9日に公開シンポをやるというのですが、 そのタイトル、「優生学と障害・ワシントンにおける歴史と遺産」。 Eugenics and Disability: History an…

Wilfond医師に関する新事実からAshley事件ふたたび

昨日のリンク集作成のための検索作業から、 シアトル子ども病院理事会メンバー以外にも、 ちょっと思いがけない事実を拾ったので、追記。 このエントリーは、 Ashley事件に、よほどマニアックな興味関心をお持ちの方以外には意味不明かもしれません。 Benjam…

森岡氏「子どものいのち」との見出しでA事件について

前のエントリーで触れた森岡正博氏の「33個めの石」の中で、 Ashley事件について触れられている。 もともと2007年に「労働新聞」に連載されたものなので、 この本の章立ては一つ一つが短い。 その2本分を使って、ごく簡単に事件を紹介し、 介護負担の軽減の…

Norman Fostが「ヒト対象実験の無意味な規制と手続きやめろ」

当ブログが Ashley事件においても、また米国の特に急進的な生命倫理の論客としても 要注意人物として注目してきたWisconsin大学の Norman Fost 医師が Yale大のRobert J. Levine 医師との共著でJAMAに発表した論文で ヒトを対象とした実験研究に対する規制が…

A事件が犯した最大の罪は障害者の間に線引きを行ったこと

今回の臓器移植改正法の成立は これまで障害児・者を巡って英語圏の医療で起こっていることを追いかけてきた私には 日本でもこれを境に、そちらに向かう「すべり坂」が始まるぞ、とのメッセージとして響きました。 それで、そういうことを、あれこれ考えてい…

Bad Cripple氏の成長抑制批判から“科学とテクノの催眠術”を考える

“Ashley療法”論争の当初から一貫して批判を続けている 障害当事者Bad CrippleことWilliam Peace氏が このたびのDiekema医師らの成長抑制論文を読み、 長いエントリーをアップしています。 Growth Attenuation: Ethics of Treatment Bad Cripple, July 15, 20…

病院の公式合意を一医師が論文で否定できることの怪 (A事件・成長抑制論文)

Deikema&Fost の成長抑制論文が シアトル子ども病院とWPASとの合意を否定している点について、 当ブログでは、そのあたりの背景を検証してきているので、 関連情報を整理し、ひとつの仮説を立ててみたいと思います。 Ashleyケースに対するWPASの調査の終了…

Deikema&Fost論文の「重症の認知障害」が実は身体障害であることの怪

Diekema、Fostらの成長抑制論文についてのエントリーです。 論文は冒頭部分で 「重症の認知障害」が未定義であること、線引きが難しいことは認めつつ、 成長抑制目的で「重症の認知障害」という場合には以下の3つを条件とし、 重症児医療の経験のある小児科医…

Diekema&Fostの成長抑制論文を読んでみた

Diekema&Fostの成長抑制論文のフルテキストを読んでみました。 まだ、しっかり読み込んだわけではありませんが、 あっちもこっちも指摘したいことだらけ。 取り急ぎ、「あんまりだろ、それは」と仰天した5点について。 1.2007年の論争以来、重症児の家族…

成長抑制論文にWhat Sortsブログが反応

Diekema, Fost 両医師その他の今回の論文について 英語ブログの方でアナウンスしたところ、 What Sorts of Peopleブログで カナダ,Alberta 大学のRob Wilson 氏が 早速取り上げて、広くみんなに警戒を呼びかけてくれている。 WAKE-UP CALL: Growth-Attenuati…

成長抑制WGの作業のウラで論文が書かれていたことの怪

Pediatrics 誌のDiekema、Fost医師らの論文のアブストラクトのページで 論文がアクセプトされたのが去年10月だったという箇所を見て、 気になったので、1月のシンポのWebcast冒頭のWilfond医師の概要説明で 成長抑制WGの作業日程を確認してみました。 2008年…

Diekema とFostが成長抑制療法で新たな論文

米国小児科学会誌の6月号。 Growth-Attenuation Therapy: Principles for Practice David B. Allen, MD, Michael Kappy, MD, PhD, Douglas Diekema, MD, MPH and Norman Fost, MD, MPH Pediatrics Vol. 123, No.6 June 2009, pp. 1556-1561 (doi:10.1542/pe…

小児へのRisperdalの適応外処方で乳房切除術を受ける少年たち

FDAが成人を対象に認可したRisperdal の自閉症やADHDの子どもへの適応外処方が 米国の小児科医療でルーティーン化しており、 特に男児が胸の膨らむ副作用で乳房切除術を受けるに至るケースが続出。 訴訟も起きている。 記事にリンクされている CBS のビデオ…

「裁判所は親の決定に介入して子どもを守る」とDiekema医師

抗がん剤治療を拒否している13歳のDaniel君母子のニュースを 19日にNewsweekも取り上げていました。 Parents’ Rights, Judges’ Rules Newsweek, May 19, 2009 宗教上の信条が関わるこのようなケースで 「親の決定権」や「子の最善の利益」をどう考えるか…

シアトル子ども病院が創作したオレオレ詐欺的物語

シアトル子ども病院が今年1月に行った成長抑制シンポジウムのWebcastから まず冒頭のWilfond医師の概要説明のプレゼンを聞いてみた。 これは詐欺師の話と同じだなぁ……と思う。 Ashleyケースについては当院では当初から public engagementを旨としてきました…

A事件:病院記者会見の直後に堂々と相反する発言を繰り返したD医師

ごく最近になって、新たにAshley事件関連の重要な資料を見つけました。 Bioethics Discussionという個人のブログなのですが、 2007年5月8日にシアトル子ども病院がAshleyの子宮摘出の違法性を認めた翌日に Diekema医師がBioethics Listservというサイトに投…

重症児のコスメティックな手術(Wilfond論文) 3

このエントリーは、以下の続きです。 Wilfond医師が「重症児へのコスメティックな手術も親の決定権で」 重症児のコスメティックな手術(Wilfond論文)2 知識がないため、どう考えていいのか分からないところもあって、 できれば専門家の方に教えていただき…