Diekema とFostが成長抑制療法で新たな論文

米国小児科学会誌の6月号。

Growth-Attenuation Therapy: Principles for Practice
David B. Allen, MD, Michael Kappy, MD, PhD,
Douglas Diekema, MD, MPH and Norman Fost, MD, MPH
Pediatrics Vol. 123, No.6 June 2009, pp. 1556-1561 (doi:10.1542/peds.2008-2951)

2008年10月に承認されているので、
今年1月の成長抑制シンポに向けての準備と平行で執筆されていた論文ということになり、
例のワーキング・グループの作業との関連が気になります。

Allen, Diekema, Fost の3人はワーキング・グループのメンバー

アブストラクトの概要を大まかに以下に。

重症児に対する大量ホルモン投与による成長抑制療法が報告されたことで、重症児の成長とともに家族が他者の手を借りずにケアする(independent care)ことができなくなり、それによって在宅ケアが困難となったり家族で一緒に行動することができなくなるなど、重症児の成長が家族介護に及ぼすネガティブな影響という問題が広く注目されることとなった。

本稿では、重症かつ永続的な認知障害のある子どもの成長抑制療法の、効果と安全性についての科学的な論考を行い、さらに倫理面について考察する。臨床面で問題となる点について、専門的な考え方を提言する。我々の分析によれば、成長抑制は革新的で十分安全な療法であり、重症の認知障害があり歩行不能な子どもと家族のQOLを改善する可能性をもたらす。小児科医やその他のケア提供者は、3歳前後を目処にした将来に向けたガイダンスに、これら選択肢の議論を含めるべきである。第1例の報告が広く報道され議論となったので、倫理コンサルテーションが行われることが望ましい。

つまり、
重症児が3歳くらいになったら小児科医やその他の医療や福祉専門職は
成長抑制療法という選択肢もありますよ、と薦めろという主張なのでは?

independent care という文言がものすごく引っかかる。

私は当初から
成長抑制の論理は家族に抱え込めとのメッセージを送るものだと批判してきましたが、
成長抑制はここでも、本人と家族のQOLを改善するだけでなく、
家族が他者に頼らずに重症児をケアするためのツールとして提案されています。
つまり、子どもの成長をホルモンで抑制してでも家族が介護を抱え込め、と。

また、「科学的なrationale」だとか「臨床上の成長抑制の利益」だとか、
この問題を医学の専門性の中に取り込もうとする意図が見え隠れしており、

裁判所は医療に口を出すなというFost の持論を思わせると同時に、
障害当事者や障害学からの批判に対して巧妙にバリアを張っている感じがします。

内容については、これ以上はフルテキストを読んでからのことになりますが、
Norman Fost は当初から当ブログが要注意と考えていた人物。
Diekema, Wilfond両医師の恩師に当たる、米国小児科倫理界の大ボスです。

論争当初は直接の利益関係のない専門家のフリをして強引な擁護を繰り広げ、
その後は特に表立った動きは見せていませんでしたが
(しかし今回のWGにも入っています)
ついに表に出てきたな、という感じがします。

この論文はおそらく実際にはFostとDiekema両医師の共著でしょう。

第1オーサーのDr. AllenはWGのメンバーに入ってはいますが、
Wisconsin大学の小児科医。Fostの傀儡と見て間違いないはず。

一般を欺くこれまでの仕事はDiekema医師の詭弁が担い、
これからは医療現場において定着させていくべくFost医師の権力にものを言わせる。
それが2人の描いているシナリオなのではないでしょうか。

もちろん、その後ろにいるのは
Seattle Times 始めメディアの操作すら可能とおぼしき Ashleyの父親。

彼らが次に狙っているのは、おそらくは米国小児科学会の承認
この論文は、そのための布石のように私には思えてなりません。


Norman Fost に関するエントリーを 2007年11月段階で一旦まとめたものが、
こちらのNorman Fostという人物のエントリー。

その後もFostについてはフォローしているので、
「擁護に登場した奇怪な人々」の書庫を中心にエントリー多数あります。

【追記】
Norman Fost に関するリンク集を作りました。