2013-01-01から1年間の記事一覧

こうの史代『この世界の片隅に』を読んだ

この前、ある方に教えてもらった、この漫画を読んで、 ちょっとすぐには言葉にならないほどの深い衝撃を受けた。 「この世界の片隅に(前篇)」(アクションコミックス) こうの史代 双葉社 2011 Spitzibara自身の感想は すぐには言葉にならないのだけれど、…

近刊書『死の自己決定権のゆくえ:尊厳死・「無益な治療」論・臓器移植』のお知らせ

来月、以下の本が出ることになりました。 タイトルは 『死の自己決定権のゆくえ: 尊厳死・「無益な治療」論・臓器移植』。 大月書店から8月23日刊行予定。1890円。 ある意味、当ブログの いくつかの書庫の集大成のような内容になっております。 はじめに 第…

2013年7月17日の補遺

昨日のエントリーで触れたジマーマン事件についての報道をいくつか。 NYT. 無罪判決を受けて、法改正を呼び掛ける社説。 Trayvon Martin’s Legacy: The acquittal of George Zimmerman should be a call to reform laws that make it easier to kill.(July…

米国の教師が指摘するビル・ゲイツ教育改革7つの問題点

この記事が冒頭、問題視するのは以下の状況。 The foundation’s ability to spend unprecedented amounts of money on education reform causes has recently made Gates unduly influential in the education world. The organization supports groups that…

気に入った映画をもう一度見ようとしたダウン症の男性、警官ともみ合い死亡(米)

今年の1月、 3か月前から担当してくれている支援者と映画を見に行った ダウン症の男性、Robert Ethan Saylorさん(26歳)。 その映画が気に入ったので、もう一度見たいと言っていたが、 映画館を出たところで、機嫌を悪くして毒づいたり店のウインドウを叩い…

美しい文章 11: 吉村昭『ふぉん・しいほるとの娘』

『ふぉん・しいほるとの娘(上)』吉村昭 新潮文庫 其扇(そのおおぎ)は、風呂敷包みを背負って道をたどった。引田屋に使いを走らせて男衆に荷物をはこんでもらうこともできたが、その日は風呂敷包みを背負って歩きたかった。家庭の事情で遊女になったが、…

妊娠した囚人に不妊手術、2010年まで (CA州)

2006年から2010年の間に カリフォルニア州の女性刑務所で州の委嘱医らにより、 少なくとも148例の卵管結紮による不妊手術が行われたことが CIRの調査によって明らかになった。 また1990年代後半にも100例以上が行われた可能性も。 元囚人やアドボケイトに…

「葬式」再掲

今日、「私らの子」が、 また一人亡くなった。 それで、 09年3月29日に書いた 以下のエントリーを再掲したくなった。 葬式(2009/3/29) 身近な子どもが、また1人亡くなった。 とても重度ではあるけれど元気な子だったのに……と 知らせを聞いて絶句する。 電話…

今週のミュウ 13

療育園との連絡ノートより 七夕会は、 前半の由来を聞いたりペープサートを見たりするところは とっても静か。穏やかに過ごされていました。 後半、 全員の願い事を読みあげてゆくと、 徐々にテンション ↑ UP。 「私のは?」「まだ?」と言わんばかりに 声…

医師や官僚への贈賄でグラクソ幹部から逮捕者(中国)

日本ではドル箱降圧剤、バルサルタンの論文不正を巡って 昨日、京都府立医科大がデータ操作を認める調査報告を出し、 今朝の新聞一面を飾っていましたが、 製薬会社の社員(中には株式を保有している社員も)が 自社の薬の効果や安全性を調べる臨床実験の報…

胚の細胞周期にかかる時間に特許とった大学とバイオ企業に非難ごうごう(米)

直前エントリーで紹介した記事を読んだ時に、 一緒に目についた5月の記事。 スタンフォード大学とバイオテク企業 Auxogynが IVFに使用されているヒト胚の細胞周期の最初の3段階にかかる時間のデータに 特許を申請し、米国特許局がこれを認めたことから、 新…

全ゲノム読解で病気チェックした赤ちゃん誕生(米)

フィラデルフィア在住の夫妻の元に5月18日に生まれたのは Connor Levy君。 夫妻(妻Marybeth Scheidts, 36歳、夫David Levy, 41歳)は 米国のクリニックの医師らが染色体に異常のない胚を選べるよう、 IVFで作って5日間培養した13個の胚のそれぞれから細胞を…

生きている兆候を知りつつ鎮静して、あわや臓器摘出:Burns事件

これまで重症意識障害からの“回復事例”についてはいろいろ拾ってきたし、 その中には“回復”というよりも“誤診”じゃないかと思われるような事例もあり、 また恐ろしいことに臓器提供が決まった後で“回復”したケースまであって 考えさせられてきたのですが、 …

2013年7月9日の補遺

今日のエントリーを書いた際にYahoo!ブログが拾って来てくれた、非産婦人科の医師の方のブログの一連の関連エントリーが非常に興味深かった。6月7日にHPVワクチンについての疑問を整理、その後の厚労省の動きにつれて適宜あれこれと調べれば調べるほど、疑問…

HPVワクチン論文の利益相反 (後)

前のエントリーの続きです。 ④ 今年2013年には既に41論文が出ており、 そのうち17論文がHPVワクチンの効果と安全性を謳うもので、 効果を疑問視しているものは2論文(打出先生がアブストラクトから推測)。 HPVワクチンへの不安は根拠のない作り話…

HPVワクチン論文の利益相反 (前)

週末、こちらのシンポジウムへ行ってきました ↓ http://homepage1.nifty.com/hkr/simin/index.htm <テーマⅠ 「子宮頸癌ワクチン」導入の裏側>の前半は 金沢大学付属病院講師で産婦人科医の打出喜義先生の講演。 講演のパワポはこちら。 http://homepage1.n…

2013年7月5日の補遺

NY州にスペシャル・ニーズの人の保護を担うジャスティス・センターがオープン。これはエントリーにしたい。医療を巡る代理決定の問題があるから、そうそう喜んでばかりいられる話題かどうか、ちゃんと読んでみないと分からないけど。来週の目標の一つ。 http…

シアトルでも、モンサントとゲイツ財団への抗議行動

先月、世界の400都市、50カ国で モンサントへの抗議行動が行われ、 米国シアトルでも2000人が集まった。 それらの人々は モンサントを支持するゲイツ財団にも批判を向けたことになる。 ゲイツ財団はモンサントの遺伝子組み換え(GM)作物によって 途上国の飢…

スーパーリッチの富がそのまま政治的影響力という世界に、新たなグローバル・ルールは必要か?

「スーパーリッチの勃興により新たなグローバル・ルールが必要になるか?」 と題した、富裕層による支配(plutocracy)に関するAtlantic誌の記事。 1月に始まった米国の第113回下院議会では、 535名の議員のうち、48%に当たる257人がミリオネア。 グローバ…

「認知症介護の質のスタンダードを発表―英国」を書きました

認知症介護の質のスタンダードを発表 英国では、2012年3月に制定された医療・社会ケア法(2012年)により、国立医療技術評価機構NICEに社会ケアが達成すべき質のスタンダード(クオリティ・スタンダードQS)を示す責任が新たに課せられた。NICEは今年4月から…

フランス大統領、安楽死(自殺幇助?)合法化法案提出を明言

フランスのオランド大統領が、1日、 今年中に議会に自発的安楽死合法化法案を提出する、と明言。 もともとオランド氏は 自殺幇助合法化を大統領選でも公約にしていた。 (これまでの経緯について関連エントリーは文末に) 2005年にできた現行法では 終末期の…

映画「くちづけ」のチラシに書いてあったこと

【3日追記】 昨日このエントリーを書いた時には 「涙活」を使ったプロモが、私が行った映画館単体の作戦だったのか、 それとも全国規模の作戦なのかということが判断できず、 以下のような書き方をしましたが、 その後のツイッターでのコメントなどからする…

2013年7月1日の補遺

BioEdgeにベルギーの安楽死関連が3タイトルあって、うち2つは安楽死が例外的なことではなくなり社会に定着していくと起こる問題だと思うのだけど、安楽死を引き受ける少数の医師に負担が集中する問題と、それらの医師が十分な報酬を得られていないと不満に…

臨床実験データ全公開を求める動き、研究者らから (後)

(前のエントリーからの続きです) Dr. Jeffersonは問題のカイザー研究に関わった研究者の追跡を試みるが、 もともと当初の実験データは見ておらずロッシュの分析に基づいた研究だったとか、 研究ファイルをなくしたという話しか出てこなかった。 Jefferson…

臨床実験データ全公開を求める動き、研究者らから (前)

一番最近では6月28日の NEJMの前・現編集長による医学研究腐敗の指摘から、日本の「iPS臨床承認」を考えてみたなど、 製薬会社の資金と影響力によって医療のエビデンスがゆがめられている問題については、 いくつもエントリーにしてきましたが、 29日のNYTに…

2013年6月29日の補遺

南アの元大統領マンデラ氏の終末期医療を巡って、家族は差し控えを望まないことを強調。どうも「無益な治療」論がちらついている気配。このニュース、拾ったのもThaddeue Popeだし。 http://medicalfutility.blogspot.jp/2013/06/mandela-v-mediclinic-heart…

英国医師会が「LCPには機械的適用の問題あり」

優れた終末期ケアの手順書として日本でも採用されているリヴァプール・ケア・パスウェイ(LCP)が 高齢者を機会的に消極的安楽死へと導くツールと化しているとして 英国でここ数年問題となり、ついには保健省が調査に乗り出した流れについては 以下のエント…

NEJMの前・現編集長による医学研究腐敗の指摘から、日本の「iPS臨床承認」を考えてみた

最近、気になっている本の一つがこれ。 『ビッグ・ファーマ―製薬会社の真実』 マーシャ・エンジェル著 栗原千絵子、斉尾武郎訳 篠原出版新社 2005 著者は、New England Journal of Medicineの前編集長。 アマゾンのこの本のページに 京都大学医学部付属病院…

向井承子『患者追放』にあった、医療の「届かなさ」

医療の中にある、いかんともしがたい「届かなさ」について 先週、あるところにちょっと書いてから、ずっとそのことについて というか、その「届かなさ」を超えるすべについて 考えるともなく考えていた。 そのことが、今朝のコメントを機に直前エントリーを…

医療の「届かなさ」に挑むことに要する勇気について

今朝、こちらのエントリーのコメント欄で、 患者が医療の「届かなさ」に挑むことに要する多大な勇気とエネルギーについて ちょっと触れたら、 25年もの時の向こうから、ある情景と そこにあったヒリヒリするような痛みの記憶が 思いがけない鮮烈さで蘇ってき…