2007-01-01から1年間の記事一覧

コスト

障害者は社会の負担になるから、 重症障害児を産む確率が高い人は自粛するのが 社会の成員たるものの「神聖な義務」だと主張した、 渡部昇一氏の「神聖な義務」に関する北村論文を読みながら思い出したこと。 シアトル子ども病院生命倫理カンファレンスで、 …

渡部先生は現役でご活躍でした

昨日 「そろそろご老体」などと無礼なことを書いた渡部昇一先生について、 ご指摘下さる方があったので、amazonを覗いてみたら、 今年だけでも3冊もの本を上梓しておられ、現役でばりばり活躍しておられました。 1980年に先生が「神聖な義務」を書かれ…

「神聖な義務」に考えること

日本でも1980年に渡部昇一氏がエッセイ「神聖な義務」の中で、 障害者・病者が生まれるのは社会の負担だから、 「劣悪遺伝子」を受け継いだ人は子どもを産むべきではない、 と主張し、論争になっていました。 同エッセイで具体的に例として挙げられた病…

障害女性と子宮:映画プロジェクト

Katie Thorpeのケースを受けて、 イギリスの障害のある芸術家グループが 「私と私の子宮(Me and My Womb)」というドキュメンタリー映画を準備中。 なるべく多様な障害像や年齢の女性を取り上げて、 Katieのケースが提示する問題をいろんな角度から検討し、 …

「ダウン症だから選別的中絶」のコワさ

以前のエントリーで紹介した、 選択しないことを選択してダウン症の子どもを産んだ夫婦のドキュメンタリー“Choosing Naia”に、 アメリカではお腹の子どもがダウン症だと知った夫婦の9割が妊娠中絶を選んでいる と書かれていたように記憶しているのですが、 …

「選別的中絶」というより「選別的子育て」

Lindemannのエッセイを受け、 同じくHastings CenterのブログBioethics Forumに、 Alice Dreger& Joseph A. Stramondoが“Selective Parenting”(10月23日)を書き、 Lindemannの主張は選別的堕胎(selective abortion) というよりも 選別的子育て(selecti…

ケア負担になう母親に中絶の選択権?

以前のエントリーで紹介したイタリアの双子の堕胎ミス事件について、 8月にHastings Center関連のブログに興味深いエッセイが発表されていました。 Hilde Lindemann, Shotgun Weddings 著者はまず、 選択的堕胎を認める社会は 障害者に対して「君たちはもう…

Ashley父は実の父親ではない?

かえすがえすも、 「お気に入り」に入れたままでプリントアウトしておかなかった おのれの愚かさが悔やまれてならないのですが、 いまさら言っても仕方がないことを、やっぱり気になるので書きます。 2ヶ月くらい前だったか、もう少し最近だったか、 「ナー…

Katieケースを巡る単純な疑問

前回のエントリーで、Gunther医師へのAshleyの親の弔辞を紹介しましたが、 実は、Ashleyの親のブログを久々に覗いてみようと思いついたのは、 英国のKatieのケースについて何かコメントしているのでは、と 考えたためでした。 そんなコメントは結局なかった…

Dr.GへAshley父の弔辞

Ashleyへの一連の医療処置を担当したGunther医師の自殺を受けて、 10月12日に両親のブログを確認した際にはなかったのですが、 どうやら私が覗いた直後にアップされたようで 12日付で以下のような弔辞が書かれていました。 We are deeply shocked and …

「家族と法」から考える 2

「家族と法」(二宮周平)の中に「親権とは何か」という項目があるのですが、 その中から。 一九八九年、国連で採択された子どもの権利条約において、子の権利主体性が確認された。子の権利を守るとはいっても、それは、子が未熟、未発達な存在だから保護す…

「家族と法」から考える 1

書店でタイトルを見た時にAlisonとKatieの顔が浮かんだので、 「家族と法---個人化と多様化の中で」(二宮周平 岩波新書)を買ってみました。 日本の話にはなりますが、家族の中での権利の衝突を考えてみる手がかりになるかと思って。 第5章の「人の世話を…

医療における子どもの権利にガイドライン(英)

9月27日のBBCニュースDoctors told take young seriously によると、 英国医事委員会が医療における子どもの権利に関する指針を出し、 医師の責任と役割を明確にしたとのこと。 3ヶ月かけて350人の子どもと600人の医師、親、各種団体に調査を行…

選ばないことを選んだ夫婦の記録

ちょっと前の本ですが、 ”Choosing Naia: A FAMILY’S JOUENEY” (Mitchell Zuckoff, Beacon Press 2002) 「いのち輝く日-ダウン症児ナーヤとその家族の旅路」 (大月書店 2004) ノンフィクションです。 お腹の子どもがダウン症だと知りながら 「選ばないこと…

間違って双子の健常な方を堕胎したから……

間違えて双子のうち障害がない方を堕胎してしまったから、残ったダウン症の胎児も堕胎した……という話が6月にイタリアで。 母親は38歳。妊娠18週目に双子のうちの一人がダウン症であると知らされ、その子について堕胎を希望。ところが医師が誤って障害が…

久々にKatieのケースについて

しばらく静かだった(私がヒットしていないだけかもしれませんが)Katie Thorpeの子宮摘出を巡る議論ですが、 10月30日付で脳性まひのDavid Reillyという人が書いたものがひっかかりました。 The Herald Why can’t you let Katie grow up? Reillyが呈し…

英国 重症障害新生児を巡る気になる動き

1月の“アシュリー療法”論争でも触れている人があったのですが、 去年から英国では、産婦人科医らが早産の重症障害新生児を bed blocker(ベッドふさぎ)と呼び、事実上「治療をせず安楽死させてはどうか」と提案しています。そういう赤ん坊がベッドをふさいで…

Watsonは人種差別主義者ではなく優生主義者

ワトソンの問題発言騒動を巡って、 「リベラルでも保守でもない、敢えて呼ぶなら尊厳派」を標榜する サイト Mercator.Net に Michael Cook という人が エッセイ There’s more to life than discovering DNA(10月19日)を書いています。 Watsonのこれま…

英医師会の後見法ガイダンス

イギリスでは2005年4月7日に新しい後見法であるMental Capacity Act 2005が成立、2007年4月の一部施行に続き、この10月1日に全面施行となっています。MCAについては、去年、名川先生のブログ記事Mental Capacity Act 2005 (2006年9月…

米では13歳に中絶を認める

前回のエントリーで13歳の少女に裁判所が中絶を命じたケースを紹介しましたが、アメリカ・フロリダ州では2005年に、裁判所が13歳の少女に中絶の意思決定を認めています。 9歳から州によって監護されている(custody)13歳の少女は、暮らしているグ…

裁判所が13歳に中絶を命令

「わたしのなかのあなた」の主人公アナは13歳でしたが、イタリアでは親の訴えを受けた裁判所が13歳の少女に中絶を命じています。 13歳の少女Valentinaが15歳の少年によって妊娠し、本人は生むことを希望。しかし、Valentinaの両親は、その子どもを産…

「わたしのなかのあなた」から 3

父親のブライアンの視点から描かれている部分に、私には非常に示唆に富んでいると思える一節がありました。 まだ親になる前、若かったころのブライアンとサラ夫婦が旅先で出会った占い師の言葉です。そのとき、占ってもらおうと言い張ったのはサラでした。 …

「わたしのなかのあなた」から 2

白血病の姉のドナーになるべくデザイナー・ベイビーとして生まれ、13年間、臓器のスペア庫として常に待機しては体の一部を姉に提供し続けてきたアナが、次はいよいよ腎臓提供を求められるという段階で、「もうイヤだ」と両親を訴えるという物語。 これから…

「わたしのなかのあなた」から 1

Katie Thorpeのケースが裁判に持ち込まれ、Katie本人の利益はcafcassという子どもの権利擁護のための組織によって代理されることになったようです。それにより、Ashleyのケースにおける決定プロセスの安易さが改めて浮き彫りにされるような気がします。 そん…

子のプライバシー、親の権利

Katieのケースは裁判所の判断を仰ぐことになったようですが、 18日のエントリー「なぜ小児科医は出てこないのだろう」で記事の存在を紹介したきりになっているので、遅ればせながら10月13日のthe Guardianの記事から、Alisonの発言を以下に。 もちろん…

Gunther自殺報道の怪

Ashleyに行われた医療処置に関する問題では、どうもメディアの報道に不可思議な点が目に付くのですが、 Gunther医師の自殺を巡っても、 ①なぜ10日間も報道されなかったのか。 Gunther医師が自殺したのは9月30日のこと。 ところがそれを地元の新聞 the S…

Watsonの差別発言から考えること

既にあちこちで取り上げられているようですが、 DNAの構造を解明したノーベル賞受賞者James Watsonの人種差別発言が問題になっているとか。 「アフリカ人はヨーロッパ人よりも知的レベルが低い」という意味の発言をし、 予定されていた講演の中止が相次ぐ…

VeriChipはジリジリと広がっていく?

マイクロチップを人体に埋め込んで アルツハイマー病患者の徘徊防止に使うシステムを開発・販売している会社VeriChipについて、 以前のエントリーで紹介しました。 他にも緊急時の医療情報アクセスや銀行口座と直結で簡単支払いにも使えると売り込んでいるも…

「尊厳」を巡る疑問

18日のTimesのKatie関連記事の中で、どうも、ひっかかること。 この中には、母親Alisonが娘の子宮摘出を望むのは、pain, discomfort and indignity of menstruationからKatieを守ってやるため、と書かれています。 Alisonが言っていたのは、「良く知らない…

次はデザイナー・ゲノムだと

何かとお騒がせのDNA研究者Craig Venterが、 研究室の化学物質から人工的に染色体を作った、 つまり世界初の新たな人造生命体が誕生したことを近く発表するとのこと。 報じているのは10月6日のthe Guardianの記事 I am creating artificial life, decl…