Ashley事件(11-13年)

カナダの法学者らが障害の社会モデルに基づき「成長抑制は不適切」

論文のアブストラクトは以下。 In this article, we consider the implications of growth attenuation should it ever arise in the Canadian context. While parental autonomy to make crucial health care decisions and exercise control over minors i…

木村晴美『ろう者が見る夢』と、人工内耳めぐる「リー・ラーソンの息子たち事件」 2

前のエントリーからの続きです。 『ろう者が見る夢』にも「インフォームド・コンセント」というタイトルで 人工内耳をめぐる親の選択に触れた章があって、 それによると、人工内耳装用者が増加していて、 あるろう学校の3歳児クラスでは、一人を除いて全員が…

木村晴美『ろう者が見る夢』と、人工内耳めぐる「リー・ラーソンの息子たち事件」 1

「ろう者が見る夢 続々 日本手話とろう文化」木村晴美 (生活書院 2012) 図書館で目についたので手に取ってめくってみたら 「あなたは夢の中で何語で話しているだろうか」で始まる文章が目について、 ろうの両親から生まれ育ったろう者の著者が 夢の中では…

NDRN報告書: 提言

NDRNの報告書の提言要旨を以下に。 (報告書関連エントリーは文末にリンク) 病院、医療機関に対して 倫理委員会と倫理相談だけでは患者の法的権利を守るには不十分。 特に障害者に成長抑制、不妊その他の医学的に不必要な医療が行われる場合には デュー・プ…

NDRNのCurt Decker、“アシュリー療法”、障害者の権利、医療と生命倫理について語る

今年5月に米国の障害者保護と人権擁護ネットNDRNが 障害者への“アシュリー療法”、強制不妊、一方的な治療停止と差し控えについて 強く非難する報告書を刊行しましたが、 07年のアシュリー事件で調査報告書を書いたDRW(NDRNのメンバー)のサイトに、 5月22日…

【拡散・協力希望】アシュリー療法/医療差別についてのインターネット投票

2007年にAshley療法に関する調査報告書を書いたWPASは その後、DRW(Disability Rights Washington)と名前を変えていますが、 最近、障害者の保護と権利擁護(P&A)全国組織NDRNと一緒になって A療法、強制不妊、治療の一方的な差し控えと中止を糾弾する報…

NDRN報告書:カルメンの強制不妊ケース

NDRN報告書のP. 21より、 知的障害者への強制不妊を人権擁護団体の介入が阻止したケースの概要を。 2008年の事件。 2008年に母親が産婦人科医を訪れ、 知的障害のある娘カルメン(22)は生理が重く、生理痛もひどく 頻繁に尿路感染を起こす、自分でケアでき…

NDRN報告書: A療法について 2

その後、報告書中盤で書かれているのは ① 障害当事者らによる専門家委員会について ② これら無用な医療介入による人権侵害に関する考察 ①NDRNとDRWとは、この報告書のために 2012年春に5つのそれぞれ別の専門家委員会を開催している。 開催地は4つの委員会が…

NDRN報告書: A療法について 1

NDRNの報告書の“アシュリー療法”に関する個所から。 アシュリー事件のケース・スタディとして 06年のGunther&Diekema論文から今年3月に出てきたTom とEricaのケースまでの流れに沿って、 両親と担当医らの正当化論、それからシアトルこども病院が立ちあげ…

NRDN報告書: WI州の障害者への医療切り捨て実態 2例

7月5日のエントリー NRDN報告書:概要で触れただけで終わった ウィスコンシン州の事例2つを、同報告書P.17から 概要を取りまとめて、以下に。 ① グループホームで暮らす13歳の子どもが 風邪の治療を中止されて死んだケース。 その男児には発達障害と身体障…

NDRN報告書:概要

障害児・者への“アシュリー療法”、強制不妊、治療の一方的停止と差し控えを中心に 医療における障害者の人権侵害を批判して 米国の障害者人権擁護ネットワークNDRNが5月に出した報告書については、 これまで以下の3つのエントリーを書いてきました。 障害者…

障害者の人権を侵害する医療への痛烈な批判: NDRNの報告書「まえがき」

“アシュリー療法”を巡るシアトルこども病院とWPASの合意の期限にあたる5月に WPAS(現DRW)が加盟する全国的障害者人権擁護ネットワーク National Disability Rights Networkが出した報告書について 6月20日の以下のエントリーで取り上げました。 障害者人権…

障害者人権擁護ネットから報告書「“A療法”・強制不妊・生命維持停止は人権侵害」

障害児・者への“アシュリー療法”、強制不妊、生命維持停止について 市民権、人権侵害である、と批判する大部の報告書が、 National Disability Rights Network から5月に出ていました。 タイトルは Devaluing People with Disabilities Medical Procedures t…

拙著「アシュリー事件」追加訂正ひとつ

去年の秋に上梓した拙著 「アシュリー事件:メディカル・コントロールと新・優生思想の時代」(生活書院)について 刊行後に気付いた訂正や追加説明は、トップページの書庫 「拙著『アシュリー事件』について」書庫を新設し、注のテキストデータをアップしま…

「“アシュリー療法”ついに一般化か」書きました

米国ワシントン州のシアトルこども病院が、親の要望により、重症障害のある当時6歳の女児アシュリーから子宮と乳房を摘出し、さらにホルモン大量療法によって身長の伸びを抑制したことで世界的な議論が起きた2007年の“アシュリー療法”論争とその続報について…

オーストラリアでアシュリー事件の賛否を問うアンケートが仕掛けられている?

オーストラリアで学生生活を送っておられる日本人の女性のブログに アシュリー事件に関するアンケートのお願いという記事が出ているのだけれど、 (お願い)“アシュリー事件”生命倫理に関するアンケート 南十字星の下で☆☆オーストラリア的生活☆☆ (2012年5月9…

豪の社会学者によるA療法批判

(たぶん)オーストラリアの学者さんたちの言論・ニュース・サイトで 人権問題を専門にする社会学者2人がAshley療法の新展開に批判の論考を書いている。 これまでの経緯を説明した後、 今回明らかになった新たな症例は12例とまだ少ないものの関心は広がって…

成長抑制をやったEricaの母親の意識について

今回のアシュリーの父親のインタビューで明らかになった 新たな“アシュリー療法”12ケースのうち、 Ericaのケースについては以下のエントリーに。 “Ashley療法”Ericaのケース(2012/3/28) このケースに関して私が一番引っかかりを覚えるのは、 重症障害がある…

“Ashley療法“ Ericaのケース

エリカ(仮名)14歳。 トムと同じく、赤ん坊の時に養子になった。 身長145センチ、体重33キロ。 成長抑制療法により 9歳のときの身長と体重からわずかに増えただけで維持されている。 家族は両親と兄弟姉妹が5人。 アシュリー事件以降、やろうとしたり実際に…

“Ashley療法” Tom のケース

トム(仮名)は赤ちゃんの時にベトナムから養子にもらわれてきた。 現在12歳。重い脳性マヒがある。 認知能力は生後2カ月程度で、生活は全介助。 8歳の誕生日を前に08年10月に始めた成長抑制療法を間もなく終える。 現在の体重は32キロ。身長は134センチ。 …

広がる“Ashley療法”、続報をとりあえずピックアップ

昨日のGuardianの関連報道については 以下のエントリーに。 論争から5年、アシュリー父ついに動く(2012/3/16) 「アシュリー療法」やった6ケースのうち、2人は養子(2012/3/16) 今朝の段階で、アラートが拾って来たものを、 とりあえず以下にピックアップして…

「アシュリー療法」やった6ケースのうち、2人は養子

前のエントリーからの続きです。 ‘Ashley treatment’ on the rise amid concerns from disability rights groups Ed Pilkington and Karen McVeihg in NY Guardian, March 15, 2012 この記事は、 父親が語った「すでに終了した6家族」のうち2人の母親に取材…

論争から5年、アシュリー父ついに動く

きた、きた、きた。やっぱり、きたっ! 11日の”怪現象”で何かデカいのが来るとは思ってたけど、 ガーディアンからアシュリー父のインタビューが出た!! The Ashley treatment: 'Her life is as good as we can possibly make it' Ed Pilkington, Guardian, …

久々の”怪現象”:やっぱりAshley事件はまだ終わっていないぞ

07年当初のアシュリー療法論争が終息した後にも 事件に何らかの展開がある前後になると、ネット上の たいていはテクノと科学系のサイトに07年当時の記事がコピペされる、という 怪現象が起こっていることについては、以下のエントリーなどで指摘しました。 “…

花を買うということ(「私は憎みます」を改題)

5年前にアシュリー事件と出会い、 アシュリーの写真を見た時、 最初に私が思ったのは、「あ、私はこの子を知っている。 この子の髪の匂いも、ひんやりした肌も、 布団にこもった甘ったるい体臭まで、私は知っている……」だった。 それから長い長い間、 頭か…

2011年のまとめ:Ashley事件

Ashley事件に関するこれまでのリサーチを取りまとめて 「アシュリー事件:メディカル・コントロールと新・優生思想の時代」という本を上梓しました。 Ashley事件には、2011年の後半は情報がまったく引っかかってきませんでしたが、 それが実際に何の動きも起…

SNSで「成長抑制を考えてみようかな」「いいんじゃない」

子育てをテーマにしたSNSと思われる babycenter. というサイトで 20日午前9時半現在、「2時間前」に立ち上げられたスレッドが成長抑制療法を扱っている。 タイトルは 「成長抑制療法についてどう思いますか?」 立ち上げた人は障害のある子どもの親。 現段階…

HCRの成長抑制論文にBill Peace, Clair Royらが反論の書簡

イエ~イ!! やってくれました!! 2007年から「アシュリーは私だ」と言い続けている障害当事者のBill Peaceと 一貫してブログで成長抑制療法を批判し続けてきた重症児の母Claire Roy、 Armand H. Matheny Antommaria, Chris Feudtner, Anna Stubblefieldの…

エントリーにしたばかりのDiekema「害原則」に新ヴァージョン登場

つい昨日のエントリーに登場したばかりのDiekemaの「害原則」ですが、 なんと、出たばかりの the Journal of Clinical Ethics誌の夏号に、 Diekemaが最新ヴァージョンの「最善の利益論より害原則」論文を発表しているとか。 これまた今朝のエントリーでとり…

Alicia Ouelletteの新刊「生命倫理と障害:障害者に配慮ある生命倫理を目指して」

前の4つのエントリーで読んできた論文の著者、 Alicia Quellette がこうした論文による考察をさらに進めて、 生命倫理学と障害者コミュニティの歩み寄りを模索・提言する著書を上梓しています。 Bioethics and Disability: Toward a Disability-Conscious Bi…