「アシュリー療法」やった6ケースのうち、2人は養子

前のエントリーからの続きです。

‘Ashley treatment’ on the rise amid concerns from disability rights groups
Ed Pilkington and Karen McVeihg in NY
Guardian, March 15, 2012


この記事は、
父親が語った「すでに終了した6家族」のうち2人の母親に取材しているが
驚くことに、両方とも養子。


恐らくはA療法を受けた世界で初めての男児とされるのは、12歳のTom(仮名)。
7歳でやった、というから07年の論争直後からということになる。

ベトナムから赤ん坊の時に養子にもらわれ、ヨーロッパ在住。
重症脳性マヒで、てんかん発作があり、
座ることも話すことも歩くことも食べることもできない。

母は公式な許可みたいなものがあったかどうか知らないと言い、
「主治医に聞いたところでは、まだ公式なプロトコルはないから、
ケースごとのアセスメントになるという話でした」


もう一人は米国中西部の北寄りに住む14歳のErica(仮名)。やはり養子。

10歳時に成長抑制療法を始めたというから、
こちらも07年の論争から間もなくに始めたことになる。

担当したのはミネソタ大学の医師ら。
成長抑制と子宮摘出が行われた。
母は「批判する障害者は自分たちまでやられると誤解している。
対象が1%程度の重症児だということが分かっていない」。

この5年間に成長抑制が行われたケースは100例を超え、
関心を持っている家族は何千とあると、この記事では推測。

一方、the National Disability Rights Networkは、
4月に報告書を出し、連邦議会や州政府や個々の病院に向けて、
障害児への成長抑制療法を禁じる法律を作れと呼びかける予定とのこと。

こちらの記事は最後のあたりで
「WPASの報告書の終わりで、(アシュリーへの)治療を行った病院は
裁判所の許可なしにはやらないと約束している」と書いているが、
その「約束」がこの5月をもって一旦期限切れになることには触れていない。


合意期限については、こちらに書いている通り ↓
シアトルこども病院は、5年の合意期限が切れるのを待っている?(2010/11/8)

WPAS調査報告書の最後にある合意事項の6「期間」の箇所に書かれているのは以下。

This Agreement will commence on May 1, 2007, and continue for an initial term of five years. Thereafter, this Agreement will automatically renew on its anniversary date for additional terms of one year unless after the expiration of the initial term, either party gives at least 60 days prior written notice of termination.


5月1日で当初の5年間の合意期限が切れた後には、
自動的に毎年5月1日に1年間の更新となるが、
シアトルこども病院かWPAS(現在はDRW)のいずれかが最初の期限後に、
合意終了を少なくとも60日前に通知した場合にはこの限りではない。

たぶん、これをやってくると私はずっと前から睨んでいた。

アシュリー事件を単なる倫理論争と考える人は大きな間違いを犯している。
なぜ、この事件にはこんなにも不可解なことが多々起こってきたのか、
なぜメディアが、この事件に限って、こんなにも機能できないのか、
なぜネットのあちこちで、こんな怪現象までが起きるのか、

今回も、このインタビューが流れる数日前に、例の怪現象が起きていた。
そのことの重大さを考えてみるべきだと思う。

アシュリー事件は倫理論争であるというだけではなく、政治的な事件であり、
単なる重症児をめぐる医療や介護の問題をはるかに超えて、
この事件には、もはや国家もメディアも機能しなくなった
今の世の中の「大きな絵」がそっくりそのまま映し出されている。






なお、TomとEricaのケースについて
ガーディアンが今日、改めて詳細を掲載するとか。