Ashley事件(11-13年)

Ouellette論文(09) 4: 「所有しデザインする親」から「子の権利を信託された親」へ

(前のエントリーから続く) 昨今は日本で大人気のMichael Sandel教授も この論文でとりあげられた養女の目の整形手術について論じているらしく Ouelletteもサンデルを援用していますが、 子ども自身のニーズとは無関係に、親自身の目的によって 子どもの身…

Ouellette論文(09) 3: 法の「非服従原則」

(前のエントリーから続く) Ouelletteによると、 法における「非服従の原則」とは、 ある人の自己決定の権利は 他者の生命や身体を自分の目的に服従させる権利までを含むものではない、ということ。 クルーザン判決においても 意思決定能力の有無を問わず患…

Ouellette論文(09) 2: Diekemaの「害原則」

(前のエントリーから続く) なお、当ブログ内には Quellette とする記述がなお多く残っておりますが、 これらは Ouellette の間違いの訂正がいまだ追いついていないものです。 この論文でとりあげられる4つのケースのうち、 最後のAshleyケースについてはと…

Ouellette論文(09)「子どもの身体に及ぶ親の権限を造り替える」 1: 概要

Alicia Ouelletteという人は、Ashley事件で08年に あのDiekema医師に反論の隙を与えない、実に見事な批判論文を書いた法学者です。 (Quelletteとしているエントリーが他にも沢山ありますが、Ouelletteの間違いです) また、去年4月28日にMaryland大学法学部…

小児科医療の「リスクvs利益」検討における「手術リスク」:Diekema医師の公式見解

Ashley事件におけるDiekemaらの正当化の中で私がずっと不思議だったことの一つに、 開腹手術のリスクが一切言われないことがありました。 これもまた偶然拾った“お宝”なのですが、 外科手術のリスクについて Diekema医師が法廷での証言で語っている資料を見…

子ども病院弁護士が「治療で儲かる病院には利益の相反があり裁判所に命令求められない」と大タワケ

シアトルこども病院が去年11月にHastings Center Reportに発表した 成長抑制ワーキング・グループの論文については 以下のエントリー他、いくつも書いていますが、 成長抑制WGの論文を読む 1(2011/1/27) その論文の内容について 同レポートの3月―4月号に掲…

A事件は「ネオリベ型の力の行使で、医療により不具にしたケース」

いただきものの情報で、4月27日に、 ニューヨーク市立大学のGraduate Center主催のクィア関連のセミナーで NY大学の博士号候補者 Lezlie Fryeさんが Ashley事件についてプレゼンを行うとのこと。 QUNY, The LGBTQ Student Organization of the CUNY Graduate…

どぇっ、07年に自殺したAshleyの主治医が生き返ったぞ!

Ashleyの主治医で、 06年にDiekemaと共著でAshleyの症例について論文を書き、 その後07年の9月30日午後9時30分以来ずっと死んでいるはずのGunther医師が (詳細は「Gunther医師の死」の書庫に) なんと生き返って、 「今月」また、あの同じ小児科学会誌に、…

A事件繋がりのRebecca DresserがMaraachli事件で「コスト懸念で類似の訴訟はこれから増える」

呼吸器取り外しが命じられたカナダから 米国のプロ・ライフ団体の支援により特別機でセントルイスの病院に転院がかなった Joseph Maraachli君(1歳1カ月)の続報があり(事件詳細は文末にリンク)、 セントルイスの病院はJoseph君に気管切開を行ったうえで …

米小児科学会関連雑誌に成長抑制WGの論文巡るコメンタリー

米国小児科学会の雑誌に 例のシアトルこども病院が組織したWGのHCR論文に関するコメンタリーが出ている。 無料で読める最初の20%だけからは、著者のスタンスは不明。 In 2006, Ashley, a 6-year-old child with severe developmental disabilities, receive…

「ハイリスクの親」を特定することから始まる児童虐待防止プログラム:Norman Fostが語る「メディカル・コントロールの時代」:YouTube(2分半)

Norman Fost, MD, UW Health Child Protection Clinic びっくりするなぁ、もう。 障害児に対する嫌悪感・差別意識を露骨にむき出しにして恥じない、 Ashley事件では親の決定権がすべてという論陣を張り続けている あの Norman Fost が、Wisconsin大学の児童…

「国際人権と障害者権利条約」講演

某MLに長野英子さんが流してくださった 権利主張センター中野での池原毅和弁護士の講演。 国際人権と障害者権利条約 2009年9月15日 自由権と社会権について。 人権と尊厳について。 尊厳とオートノミ―について。 平等概念の変化について。 障害理解と平等に…

スコットランド国立劇場の“Girl X”、Facebookで“A療法”論争

24日にスコットランドでAshley事件を材にとった演劇のエントリーで紹介した国立劇場のブログが、 この作品 Girl X について続報エントリーを書いている。 Girl X blog – part 2 National Theatre of Scotland, January 31, 2011 また、“Girl X”のFacebookの…

成長抑制WGの論文を読む 4

著者らは冒頭部分でWGメンバー内の重症障害についての意見概要をまとめてみせる。 メンバーの重症障害についての共通認識は、 ① 社会が重症児・者を価値の低い存在とみなしていること。 ② 医療・社会サービスの改善に投資することは優先事項である。 ③ 発達…

成長抑制WGの論文を読む 3

一般化の動きとシアトル子ども病院の切り離しが図られている――? 07年5月の成長抑制シンポジウムを、この論文は Benjamin WilfondとPaul Steven Millerとが開催したものだ、と整理する。 シアトルこども病院とワシントン大学は、それぞれの所属先として言及…

成長抑制WGの論文を読む 2

この論文は シアトルこども病院は裁判所の命令を取らないかぎり成長抑制はやらないとWPASと合意したが その他の病院はこの合意に縛られるわけではなく、そのような医師や倫理委が 「親たちの成長抑制の要望を受けガイダンスを熱心(eager)に求めている」と…

成長抑制WGの論文を読む 1

シアトルこども病院が組織した成長抑制WGの論文については 去年の11月、12月と既に非常に多くのエントリーを書いています。 その中から、論文そのものに対する疑問や、本文の内容について書いた主なものとしては まだ論文を読む前のものとして 成長抑制WGの…

スコットランドでAshley事件に材をとった演劇

スコットランドの国立劇場が春に“Girl X”というタイトルで Ashley事件を題材にした演劇を上演する。 どういう立場の人か確認していないのだけど(脚本家?) 国立スコットランド劇場のブログ担当者のRobert Softley氏が 2007年の論争時にこれで演劇をとのア…

重症児の親Erikaさんの成長抑制批判

“Ashley療法”および成長抑制療法の一般化について Ashley父やDiekemaやFostらは「親の愛」vs「政治利用のため邪魔立てする障害者運動」という 対立の構図で議論を単純化し、世論を誘導しようとしているけれど、実際には 重症児の親がすべて「愛情から成長抑…

Ashley事件4周年 2: 思い出話・もの思い

毎年1月5日には周年記事を書いてきました。 Ashley事件4周年を迎えた今年は、07年の思い出話をひとつ――。 成長抑制の一般化が狙われる……と私が直感したのは07年5月16日。 シアトルこども病院とワシントン大学での成長抑制シンポを Webcastを通じてリアル…

Ashley事件4周年 1: 07年のEP批判声明を再読

逐次エントリーに取りまとめてきたように、去年、2010年は 成長抑制療法の一般化に向けてDiekemaやFostらが周到に張り巡らせてきた仕掛けが 一気に表面化した1年間となりました。 それらの動きを追いかけながら、 07年の論争当時に読んだ時にはさほど印象に…