ステレオタイプという壁

重症のマヒあれば免疫学者も民間療法を講釈されるステレオタイプ

世界的な免疫学の権威で東大名誉教授、 脳梗塞で重度の障害を負い、 2006年の診療報酬改定でのリハビリ日数制限に対して激しい抗議を行って、 その後も弱者切り捨ての医療と福祉に怒りの声を上げ続けている 多田富雄氏の闘病記「寡黙なる巨人」を読んでいた…

「ロレンツォのオイル」のモデル死亡

ALD(副腎白質ジストロフィー)の息子Lorenzoを治すために 文献をあたり治療薬となるオイルの発見をした両親の壮絶な努力を描いた映画 「ロレンツォのオイル」(1992年)のモデルとなったLorenzo Odone 氏が 30歳の誕生日の翌日に亡くなったとのこと。 死因…

認知症患者の殺人事件で「予防拘禁を」(豪)

1ヶ月前にCanberraのナーシング・ホームで アルコール性認知症の患者が他の入所者を殴り殺すという事件があり、 高等裁判所が犯人の男性には罪状認否の能力がないと判断。 この事件を受けて、 地域への危険となるが犯罪を起こしたとしても責任を問えない人た…

性差ステレオタイプで女児の自閉症は見過ごされている?

自閉症は女児よりも男児の方で4倍も発症率が高いとされていますが、 実際には男女間で表れ方に違いがあり、女児の場合は 通常自閉症の特徴とされる行動の繰り返しよりも 人間関係のこだわりとして現われることが多いために 内気だとか消極的だといった女の子…

「息子には納税者になって欲しい」というダウン症協会幹部?

前のエントリーで読んだ6本のPalin関連記事の中で Fox ニュース(電子版)が掲載していたAP通信の記事が なんだか気持ちに不快な引っかかりを残した。 Foxと言えば共和党寄りというのは周知だから、 記事タイトルが「Palin障害児の親の希望をかきたてる」と…

Palinの”約束”に障害児家族の反応さまざま

当ブログで何度か紹介した元WP記者Patricia E. Bauerさんの障害関連ブログが Palin氏と息子のTrig君、ダウン症を巡る報道を毎日追いかけているので、 彼女の拾ってくれる記事をつまみ食いさせてもらっているのですが、 先週の共和党大会でPalin氏が障害児の…

やっぱり出た「Palinは障害のある息子より仕事を優先」という批判

下記9月5日付のSeattle Times の記事を書いているのは Palin氏がアラスカ知事になる前に市長を務めたWasillaの住民で 氏と同じく福音主義のクリスチャン、またダウン症の息子があるという女性。 メディアはPalinを取り上げて大騒ぎしていて まるで福音主義…

ダウン症人形の是非

父が思いがけない急展開で人工呼吸器装着となったため、ここ数日 自分の頭と心の整理の必要からコメント不可にて個人的な体験を書かせていただいておりましたが、 父は一応の落ち着きを見ました。 ご心配いただいた方々、ありがとうございました。 ダウン症…

五輪本部が障害者差別表現で謝罪

北京オリンピック・パラリンピックのボランティア向けガイドブックが 障害者に関する表現で批判を浴びていた問題で、 本部が6月1日付で謝罪声明を発表。 「(ボランティアのマニュアルで)障害者の説明で間違いがあった」 some mistakes were made in desc…

五輪ガイド、英語訳のみ一部削除

北京オリンピック・パラリンピックのボランティア向けガイドブックに関して 障害者に関する形容がステレオタイプに満ちて差別的であるとの批判が起きていた問題で、 障害のある選手の説明に「不適切な言葉」があったとして 英語訳のガイドブックの一部が削除…

五輪のボランティア・ガイドに非難集中 障害者形容で

北京オリンピック・パラリンピックの公式ボランティア・ガイドが 障害者を説明する文言で批判を浴びています。 ボランティアが障害者に対して非礼な態度を取らないように、 障害者への理解をもってもらおうとの気持ちからだというのは明らかなのですが、 ガ…

歯科のネット抑制について

昨日のエントリーで 歯科治療のネット抑制で幼い子が亡くなったケースの裁判について紹介しましたが、 障害のある人の歯科治療でもネットで抑制される場合が沢山あり、 異常や苦痛を自分で訴えることのできない子どもや障害児・者にとって、 あのネットは慎…

「障害」は「病気」ではないということ

この1年余りAshley事件を調べてきて、 また、ここしばらく尊厳死や無益な治療を巡ってわずかに読みかじる中で、 とても強く思うのは、 生命倫理の議論はもっと言葉を厳密に使うべきではないのか、ということ。 その中の1つとして、 「障害」は「病気」では…

THニストから出ていた「精神年齢」批判

当ブログでは Ashleyの認知レベルを「生後3ヶ月(なぜか時に6ヶ月)」とするDiekema医師の 根拠のない「判定」に疑問を呈し、 表出能力が限られている重症児においては 表現しにくいことがすなわち「分かっていない」ことの証明ではないと 当初から一貫し…

「発達年齢」よりも「生活年齢」を

発達障害に携わっている療育関係者は「発達年齢」をよく口にする。 発達年齢とは何であろうか。 限定された領域、生活とはまったくかけ離れた場所、状況、 ほんのわずかな時間で子どもの発達すべてを 理解した気になってはいないであろうか。 …中略… 「発達…

もしもAshley父が「親の負担軽減」を言ってたら?

Diekema医師は 「子どもの利益と介護者である親の利益は分かちがたい」と主張しています。 しかし父親は 親の介護負担軽減が目的だとの批判に対して 「そうではない、あくまで本人のQOLのためだ」と何度も繰り返していました。 「絶対に親の介護負担軽減のた…

Katie事件に見る「障害児の母親」ステレオタイプ

英国のKatie Thorpe事件を振り返って ああ、あそこにも「障害児の母親」を巡るステレオタイプがあったなと思うのは 同じことを要求し主張したAshleyの父親に対しては 端的に今回の決定を巡っての批判がされたのに比べて、 Katieの母親Alisonに対する批判には…

「障害児の母親」というステレオタイプも

北海道で知的障害のある中学生がずいぶん前から行方不明になっていて ついに公開捜索に踏み切られたという以下のニュースを読んでいたところ、 <公開捜索>知的障害の中3生、施設から行方不明に 北海道 毎日新聞 3月3日 ネットではいつものことなのかもし…

日本のAshley報道で起こったこと

市場テロでの無責任な報道から 事実と確認されたわけでもない物語が作られて一人歩きしている件で、 それでも次から次へと流れてくる刺激的なニュースに取り紛れて この事件も既に忘れられ始めているのが現実なのだと痛感するにつけ、 実は世の中にはそうい…

Caplan 施設ケアの改善を

前回のエントリーで紹介したMedill Reportの記事では、 脳性まひ協会や昨年5月のWUのシンポでも発言していた障害者団体のArcの Ashleyケースについての見解のほか 当初から批判していた倫理学者のArt Caplanの言葉などが紹介されています。 その中でCaplan…

共感スーツ

昨日に引き続き、CNNのビデオで見つけた 面白い実験(試み?)について。 ビデオのタイトルは Sensitivity Suit(1月4日)。 Sensitivityという言葉をいろいろ考えてみたのですが、 今のところ私には適当な訳語が見つからず、 ここでは「誰かの身になって…

再び static encephalopathy について

以前のエントリーで紹介した Katieを巡るBBCのニュース映像(10月7日)の中で、 非常に気になったこと。 このニュースではAshleyのケースについても触れられているのですが、 Ashleyの写真にかぶせたナレーションが 彼女には「珍しい脳障害(rare brain dis…

Singerへの、ある母親の反論

Peter Singerが“アシュリー療法”についてニューヨークタイムズに論評を寄せた翌日、インターネットには早くも反響が出ていました。そのうちの1つは、自閉症の子どもを持つ母親が自閉症関連サイトに投稿したもの。 Peter Singer and Precious Ashley by Kris…

アシュリーの眼差し

両親のブログに紹介されているアシュリー。 アシュリーの、この眼差しをよーく見て、考えてほしい。 この子が「どうせ中身は赤ん坊」といわれ、「生涯、どうせ誰とも意味のある関わりなど持てない」といわれ、「犬や猫ほどの知的レベルにも達しない」といわ…

「わかる」の証明不能は「わからない」ではない

「アシュリーには家族が認識できていると両親は思うが、確信は持てない」ということについて、考えてみたいのですが、 DiekemaやFost、Dvorsky、Hughesを初めとしSingerも含めて、「知的機能に障害がある」ということに何らかの偏見と予見がある人たちは、上…

P・Singerの「知的障害者」、中身は?

Peter Singerが“アシュリー療法”論争に出てきたから興味を持ったというだけで、 私はSingerについて云々できるほどの何も知ってはいないのですが、 だから、これは本当に素朴な疑問に過ぎないのですが、 Singerの「実践の倫理(新版)」を読んで、どうしても…

「認知症患者」は、みんな「末期」なのか?

先日、ある本を読んでいて、びっくりした箇所。 認知症患者の心の状態を考えれば、道徳観や倫理観をもって何かに従事するのが不可能なのは明らかだ。彼らは世界とのつながりが断たれている。人間であるための条件が、基本的な知的能力テストに合格することだ…

「グロテスク」論は成り立たないが……

知的レベルが低い人が成熟した肉体をもっていたら、 そのアンバランスが「グロテスク」であるとか「フリーク」であるとか、 「シボレーのエンジンを積んだキャデラックみたいなもの」 「気持ちが悪い」と言って、 アシュリーに行われた成長抑制を擁護した人…

Anne McDonald さんの記事

Seattle Post-Intelligencer 誌に6月15日付で、The other story from a 'Pillow Angel':Been there. Done that. Preferred to growという驚くべき体験談と論評が掲載されました。書いたのはAnne McDonaldというオーストラリア人女性。 彼女はアシュリーと…