認知症患者の殺人事件で「予防拘禁を」(豪)

1ヶ月前にCanberraのナーシング・ホームで
アルコール性認知症の患者が他の入所者を殴り殺すという事件があり、
高等裁判所が犯人の男性には罪状認否の能力がないと判断。

この事件を受けて、
地域への危険となるが犯罪を起こしたとしても責任を問えない人たちには予防拘禁が必要だとの
声が上がっている。

Patient unfit to plead: coroner
The Canberra Times, September 18, 2008


Ashley事件射水市民病院の呼吸器外し事件のように、
事件のディテールに目を向けると意外な側面が見えてきて、
それによって事件の意味がまるきり異なってくることがありますが、

この殺人事件にも興味深いディテールがあります。

日ごろかっとなっては他の入所者(特に女性)を殴ったり
粗暴な言動でスタッフにも怖がられていたのは今回殺された被害者の方で、
加害者はむしろ穏やかで誰からも好かれていたということ。

事件前日には被害者が加害者につきまとって強引に部屋に入ろうとするなど、
トラブルがあったとか、
また事件発生当時、被害者はいつものように暴れたので薬で沈静されていたとか。

認知症患者が同じ入所者を撲殺」という単純な事件の捉え方をすると
認知症で人格のすさんだ患者がその症状ゆえに起こした殺人事件」だと受け止めがちですが、
事実関係からは、そうばかり言えないかも。

認知症患者を巡るステレオタイプや排除意識が短絡的にこういう事件と繋がると、
予防拘禁という発想になるのかもしれないけど、

じゃぁ翻って、
予防拘禁の対象者をどうやって線引きするのだろう……と考えたら、
やっぱりそこには滑り坂が潜んでいるのでは、と思う。


ちなみに日本では池田小学校事件を機に医療観察法を制定・施行。

医療観察法の行方
伊藤哲寛(精神科医
医療観察法.NET,  2007年10月