THニストから出ていた「精神年齢」批判

当ブログでは
Ashleyの認知レベルを「生後3ヶ月(なぜか時に6ヶ月)」とするDiekema医師の
根拠のない「判定」に疑問を呈し、
表出能力が限られている重症児においては
表現しにくいことがすなわち「分かっていない」ことの証明ではないと
当初から一貫して主張してきました。
(詳細は「ステレオタイプの壁」の書庫のエントリーを。)

実はこの点に関しては、
「生後3ヶ月のマインド」という表現そのものが端的に事実として間違い
と指摘したエッセイが2007年1月7日の段階でありました。

Ashley X – Avoiding Oversimplification
By Anne Corwin
Existence is Wonderful, January 7, 2007

(Existence is WonderfulはCorwinのブログ。
 ここでの出典は、転載先IEETのサイトです)

例えば、Ashleyは「生後3ヶ月のマインド」の持ち主であり、
今後も常にそうであろうと主張することは端的に事実として間違っています。
彼女のマインドは生後3ヶ月のマインドではなく、
発達障害のある9歳のマインドなのです。
30歳になれば、その時の障害の重さに関りなく、30歳のマインドの持ち主でしょう。
平均的な30歳のマインドではないかもしれないけれども、
それでもやはり30歳のマインドです。
このような年齢比喩を用いることは(これは比喩以外の何でもない)物事を曖昧にし、
人々が細部に目を向けることを阻んでしまいます。

Ashleyがどのようにこの世の中を体験しているかは誰にも分かりませんが、
まだ3ヶ月しか生きていない赤ん坊と同じように世の中を体験しているということはないでしょう。
Ashleyが脳のスキャンを受けたとか、
もしかしたら意思疎通が可能だという前提で試してみた
(座るより横になるほうが好きなようだと両親が気づいている他には)
という文書も目にしたことはありません。
彼女の「メンタル年齢」がどのように導き出されたものかという証言も
目にしていません。

続いて
当ブログやAnne McDonaldさんの主張と同じ、
表出・表現できないからといって認知していないと決め付けるのは科学的でない
との指摘が行われた後で、

医師にも間違いはありえます。怠慢もありえます。
複数の医師と倫理委の存在でその可能性を最小化することもできますが、
重い身体障害のある人のメンタルな機能のアセスメントの難しさは
どんなに強調してもしすぎることはありません。
Ashleyのメンタル年齢のアセスメントでは、
この困難さはどれほど考慮されたのでしょうか。
それとも彼女の治療内容を導き出すには、このようなカテゴリーに分類する必要がある
という考えに基づいてアセスメントが行われただけなのでしょうか。

名川先生も去年の論争初期に同じ指摘をされていましたが、
これほど明快にAshleyのメンタルレベルの矛盾を突いた文章は
その他には見当たりません。

何よりも興味深いのは
この文章を書いたのが女性トランスヒューマニストだということ。

Corwinも世界トランスヒューマニスト協会の理事であり、
Hughes やDvorskyが中心人物であるInstitute for Ethics and Emerging Technologiesのお仲間。

じつはあのGeorge Dvorskyに
大人の体に赤ん坊が宿っているのはグロテスク」だとの
Ashley父のブログに引用された考えを撤回させたのがこのエッセイなのです。

彼女のエッセイは他の点でも誰よりも鋭い指摘を行っています。
ずっと紹介したいと思いつつ、他の話題の取り紛れてきたのですが、
両親のインタビューを機に次のエントリーで。