2008-05-01から1ヶ月間の記事一覧

最相葉月の「いのち」で落ちたウロコ

もともとモノを知らない私にとっては、 最相葉月の「いのち 生命科学に言葉はあるか」では眼から落ちたウロコが多かったので、 自分のメモとして、落ちたウロコを以下に拾っておこう……というエントリーです。 ・ クローン羊のドリーは2003年に進行性の肺炎に…

Norman Fostの論文

なぜかNorman Fostには著書がないのですが、 論文の中にはamazon.comで電子版として購入できるものがあります。 amazonの概要から分かる範囲で以下に、 ①Organs from anencephalic infants: an idea whose time has not yet come: An article from: The Hast…

最相葉月の「いのち」から考えるFost

(このエントリーは前回の続きになっています。) 最相葉月の「いのち 生命倫理に言葉があるか」には 98年11月5日の国際生命倫理サミットでJulian Savulescuが物議を醸した翌6日、 世界で初めてヒトの受精卵からES細胞を取り出し増殖に成功したとの 大ニュー…

最相葉月の「いのち」に、あのSavulescu

最相葉月の「いのち 生命科学に言葉はあるか」(文春新書)を読んで、 ものすごく密度の濃い本で面白かったし勉強になったし、 考えたことも言いたいこともいっぱいあるのだけれど、 ありすぎて、すぐには整理がつかないところもあるので そちらは置いておく…

「高齢者は不幸」もステレオタイプ

シカゴ大学の社会学の研究者が 1972年から2004年までの間に18歳から88歳までの28000人を調査したところ、 歳をとるほど自分の人生はだんだんと好いものに感じられるようになるという結果が出た。 (同じ人をずっとフォローしたのではなくて…

「奇跡なんて起きないんだよ」と障害女性の辛口コラム

BBCの障害者問題サイトOuch! に Disability Bitchというペンネームの障害女性が書いている辛口コラムがあって、5月1日の記事で 最新テクノロジーが「障害を治す(cure)」と喧伝される現状に鋭いツッコミを入れています。 まず彼女が冒頭で言い放つのは 「…

「どろどろ」と「ぎりぎり」にこそ意味がある

もう何年も前のことなのだけど、 重症児やダウン症児、自閉症児の母親が6人ほど集まった時に、 たまたま「選別的中絶」の話になり、 あれやこれや勝手なことを言い合っているうちに、ふと思いついて 自分でも答えが出せないまま転がし続けている質問を投げ…

ヒト受精・胚法に関する英国医師会見解

英国医師会(BMA)サイトにヒト受精・胚法案についての見解が4月8日付でアップされており、 その原文はこちら。 まず、 法が大きな枠組みを決め、個別の解釈・適用についてはヒト受精・胚機構が判断を担うという 過去20年間の生殖補助医療とヒト胚の研究…

英国ヒト受精・胚法関連ニュース 2

The Timesは 議員らからヒト受精・胚法案については3時間の審議を4回では不足だとして、 もっと時間をかけることを求める声が出ていることを報じ、 MPs demand more time for fertilization and embryology debate The Times, May 13, 2008 The Guardianに…

アラスカ州知事、ダウン症男児を出産

ママさんホッケーの選手からアラスカの州知事(共和党)に転身するや、 就任1年で議会の両院議員の後押しを取り付けて石油会社と真っ向対決、 石油会社への増税を実現するという快挙を成し遂げた Sarah Palin氏(44歳)が 4月18日に夫妻の5人目の子ど…

英国ヒト受精・胚法関連ニュース

英国議会で議論されているヒト受精・胚法改正については 両党とも党の縛りを解いて議員個人にそれぞれの良心に従って投票することを認めていますが、 その投票が近づいてきたことから英国メディアには この問題に関する12日付ニュースが多数出ています。 T…

「生きるに値しない生命の抹殺」

生きるに値しない生命──。 目にするだけでも、こちらの体を一瞬ひるませてしまう酷薄な文字列というものがあって、 これもそんなインパクトの強いフレーズですが、 さらにそこに「抹殺」という強烈な単語までくっついて「生きるに値しない生命の抹殺」という…

歯科のネット抑制について

昨日のエントリーで 歯科治療のネット抑制で幼い子が亡くなったケースの裁判について紹介しましたが、 障害のある人の歯科治療でもネットで抑制される場合が沢山あり、 異常や苦痛を自分で訴えることのできない子どもや障害児・者にとって、 あのネットは慎…

BBC「すべての番組に字幕」目標達成

1999年に設定した目標だったとのことですが、 BBCが主要7チャンネルの番組のすべてに聴覚障害者向けの字幕をつけるとの目標を達成。 BBC hits ‘all shows subtitled’ target The Guardian, May 7, 2008 聴覚障害については疎くて、全番組に字幕なんて考えた…

歯科治療による幼児死亡で裁判

昨日の朝日新聞には、 親から引き離した幼児を歯科医師がネットで治療台に抑制し、 アレルギーがある子どもの鼻呼吸を確認もせずに局部麻酔を行って治療して、 麻酔によるアナフィラキシーショック(窒息死の可能性も)で死なせたとの 福岡で現在進行中の訴…

射水事件の元外科部長、殺人容疑で書類送検へ

射水市民病院の呼吸器外し事件で以下のような進展があった模様。 射水市民病院の延命中止、元外科部長を殺人容疑で書類送検へ (読売新聞 5月10日) 事件の事実関係を知れば、 この事件をもって延命治療の是非を問う議論が加速化すること自体に、むしろ …

米てんかん協会のサイトをハッカーが攻撃

通常のゼニ儲け目的のハッキングではなく、 沢山の写真やリンクが連続してフラッシュするというもので、 てんかん協会のサイトにアクセスした人の中には それによって、ひどい偏頭痛を起こしたり発作を起こしかけた人も。 Hackers attack epilepsy forum USA…

医学進歩しても24週未満未熟児は救命できない?

医学は進歩しても24週未満の未熟児が助かる確率はきわめて低いままである ……との調査結果が英国で今日発表されるとのこと。 1994年から1999年の5年間と、 2000年から2005年の5年間に生まれた未熟児の救命率を比較して、 いずれの期間で…

「デザイナー・ベイビー作ろうよ」と倫理学者

W・Postにこのエッセイを書いたのは Dartmouth大学の生命倫理学教授 Ronald M. Green。 Building Baby From the Genes Up The Washington Post, April 13, 2008 「赤ちゃん製作は遺伝子から」とでも訳したいタイトルの この文章の冒頭、Greenが引っぱってく…

今年の子ども病院カンファは遺伝子診断

今年のシアトル子ども病院の生命倫理カンファレンスが7月25、26の両日に決まったようです。 テーマは「未来を予測する:子どもの遺伝子診断と家族」。 Predicting Our Future: Genetic Testing in Children and Their Families July 25, 26, 2008 At Be…

裁判所のセーフガード機能、実は危ういのでは?

イリノイ州で知的障害女性に対する不妊手術の要望が却下された件で出した意見書において、 裁判所は意思決定を行うことのできない人の基本的人権を守るために慎重な判断を求めており 不妊手術の検討にはセーフガードを充分に実施する責任と義務が裁判所にあ…

鶏インフルの際に助けてもらえない人のリスト(米)

鳥インフルエンザなど深刻な感染症が広範に起こった場合に 医療者向け「救命治療を行わずに死ぬに任せる患者」のリストが 専門家集団によって作成されたとのこと。 リストアップされたのは、 ・ 85歳以上の高齢者 ・ 重症の外傷患者。場合によって車の事故や…

「人体の不思議展」中止要望書への緊急署名

2月に死体の展覧会というエントリーで アメリカの展覧会の話を取り上げた時に、 日本の人体の不思議展が全く同じものであると教えていただき、 なぜ問題にならないのか不思議に思っていましたが、 以下のように「人体の不思議展」に疑問を持つ会ができて活動…

子どもの終末期に関する単純な疑問

先週小児の延命治療停止(日本) (2008/4/28)で書いたこと (心肺停止が差し迫っている小児の延命治療が医師と親の相談で中止されているという話) についてあれこれ考えていたら、 ずっと前にインターネットで見つけて「お気に入り」に入れておいたのに こ…

ILの裁判からAshley事件を振り返る

自分で意思決定できない人の不妊手術に関するイリノイ州の上訴裁判所の意見書の中から 特にAshley事件にも当てはめて考えられる点について考えてみました。 Ashley事件ではもちろん 子宮摘出について裁判所の判断を仰がなかったことそのものが違法だったわけ…

ILの裁判から後見制度とお金の素朴な疑問

イリノイ州のK.E.Jの不妊手術の裁判で裁判官が出した意見書を読んでいて、 自分で意思決定できない人の卵管結紮の妥当性や然るべき手続きという本題とは違うところで 素朴な疑問を抱いた点があるので。 不妊手術を求めた叔母側は一連の裁判にかかる弁護士費…

IL不妊手術却下の上訴裁判所判決文

4月19日のエントリーで紹介した話題ですが、 法廷後見人の叔母(伯母かも)が知的障害のある女性K.E.J.の不妊手術の求めたのに対して、 イリノイ州の上訴裁判所が認められないとする決定を行いました。 その際に出された裁判官の意見書が同裁判所のサイト…