薬が病気を広げる社会

これまた少し前の記事になりますが、
製薬会社が薬を作ったり宣伝することで
医師によっては存在そのものを疑う病気が社会的認知を受け、
プロザックのように「薬が病気を作っている」状況があるのではないか……
とNYTimesが疑問視しています。

Drug Approved. Is Disease Real?
The NY Times, January 14, 2008

糖尿病の痛み止めとして2005年から使用されてきた薬Lyricaが
去年新たに繊維筋痛症の薬として認可されて
テレビコマーシャルの影響もあって消費量が急増していることを巡り、
(Pfizerの売り上げは去年から50%もアップ)

繊維筋痛症そのものの存在を疑問視する医師らを中心に
プロザックうつ病をそこらじゅうにある病気にしてしまったのと同じことが起こるのではないかと
懸念が広がっている、というニュース。

「プロザックはロボトミーとそう違わない」との指摘を思い出させられるのは、
Lyricaが脳と痛みの知覚に作用する薬とされていながら
どうして効くのかは不明だという点。

「おや?」と思うのは、
2004年に糖尿病の痛み止めとしてFDAにLiricaが認可申請されたときには
治験でのイマイチの効果に対して副作用が大きすぎるとして
検査官らから認可の見送りが勧告されたにもかかわらず、
FDA高官が患者の苦しみの大きさを理由に強引に認可に持っていった、と。

(生殖補助医療と臓器移植の専門医ばかりが
 やたら患者の苦しみに共感的であることと同じ?)

Lyricaの売れ行き好調で
今年中には他の2社からも類似薬が発売される予定。

さらに「え?」と思ってしまうのは、
繊維筋痛症の辛さを訴えて対処を求める患者のアドボカシー団体があるのは
現実に苦しんでいる人がいる以上あたりまえのこととしても、
その活動資金が製薬会社からも出ていること。
(これ、私が世間知らずなだけで、
 当たり前のことなのでしょうか?)


現に苦しんでいる患者さんたちを助けるために
病気が正しく認知されて治療法が模索されることは大切だとは思うのです。

ただ、まだ病気としての認知すら曖昧な段階だというのに、
副作用があるのが分かっている一方で、
作用のメカニズムも分かっていない効果の曖昧な薬が
やすやすと認可されてプロザックのようにあっという間に広がるのは
薬で何でもコントロールするのが当たり前の文化を助長することであり、

本当は巨大な利権が原動力になっているかもしれない
こうした1つ1つの動きが
総体として社会の中にもたらす影響が、
様々な新興テクノロジーで人間の身体に手を加えることに抵抗感をなくし、
身体の尊厳を見失い、
それによって命の尊厳すら見失うことなのだとしたら……?

日本の薬害肝炎の背景を考えてみても
いや~な気配を感じるニュースです。


           ――――

インターネットで薬を買う人が急増していることに
偽薬、違法な売買もあって危険だと懸念の声は
BBCから。



BBCには最近、
知的障害者への過剰投与に警告」とのニュースもあったのですが、
読もうと思ってマークしていたはずの記事を見失ってしまい、現在捜索中。
本当はこの記事を一番読みたかったのに……。